アメリカで働くには? 留学すれば働けるの? 厳しい現実とプロセスとは

アメリカで働くビジネスマン

アメリカで働くには留学すればよいのか

皇室の人が民間人と結婚してアメリカで暮らし、働くということが大きなニュースになっています。

アメリカで働きたい、暮らしたい、そのために留学したい、という相談はけっこうあります。

能力さえあれば簡単に働けると思っている人も多いのです。

アメリカは日本と就職事情がまったく違います(日本が世界の中で一番特殊なのですが)。

普通、大学を卒業するまでに就職先が決まっていることはまずありません。

卒業式の3日くらい前まで勉強が大変で就職活動をする暇がないからです。卒業して、しばらくしてから(たいてい3か月や半年はゴロゴロしています)、そろそろと就職活動を始めます。

アメリカ人が考える「出世」のありかた

大卒であれば、まさにペーペーなので、たいした仕事には就けませんが、それでも仕事をして数年すると出世したいと思うようになってきます。

たとえばUCLAを卒業してペーペーのエンジニアとして働き出し、30歳くらいになってマネジャーになりたいと思ったら、あらためて大学院でMBAを取得して、マネジャー職を探すことになります。

本来、アメリカの会社は、社長募集、課長募集、マネジャー募集、ペーペー募集、といったかたちで人を募集し、採用します。

必要な時期に必要な人を採用するので、日本のように4月に一斉入社なんてことはありません。

頂点にのぼると社長稼業をするわけです。

日本で憎まれたゴーンさんなどはその例です。

あちこちの会社で社長をする、敵対する会社の社長になるなんてこともあります。

アメリカで留学生が働くためのプロセス

大学でよい成績を修める

日本人がアメリカで就職したいと考えた場合、まず大学でよい成績を残すことが大切です(アメリカは就職希望のレジメに必ず成績を書かなければなりません)。

プラクティカルトレーニングに申請・就職活動

次に卒業して、F-1という学生ビザのままで、1年間のプラクティカルトレーニングに申請します。

これは有給・無給にかかわらず1年間インターンとして残ってよいというものです。

インターンをしていなくても残ることは可能なので、実質この期間に就職活動をします。

就労ビザを申請

運よく就職が決まった場合、まずその就職先の会社が弁護士を用意して、H-1ビザという就労ビザを申請します。

弁護士費用がけっこうかかります。

会社側がそれほどまでして、その人物を就職させたい、ということになりますから、それなりの人物にならなければなりません。

たまたま日本語を必要とする仕事などであればよいのですが、そうそう日本語を必要とする会社もたくさんありません。

またこのH-1というビザは、大学で専攻した学科に関係した仕事というのが条件です。

したがって音楽を専攻した人は音楽関係の仕事に就かない限り、H-1ビザの申請はできません。

何がなんでもアメリカに残りたいとなると、ビジネスやコンピュータサイエンスなどを専攻すれば、どんな会社でも可能性があるということになります。

アメリカで働くためのビザは簡単に取得できない

このH-1ビザは年間、大卒で6万5千、大学院卒で2万発行されますが、ここ数年は抽選というかたちをとっています。

まず抽選して数合わせをしてから審査するということです。

もちろん、審査の結果ビザがおりないということもあり得ます。

アメリカで就職するために留学するという方法は、一種の賭けですのであまり奨められませんし、もちろん、学生ビザを申請するときに「働きたいから」なんて言ったら学生ビザもおろしてもらえません。

学生ビザはあくまで勉学を目的とする人のためにのみ発行されるものです。

また、このビザの発行は領事さんの権限ですので、領事にハンコを押してもらわなければなりません。

まとめ|アメリカは「何でもあり」だけど……

このところ、皇室の女性が民間人と結婚してニューヨークに住むことについて、週刊誌からいろいろと問い合わせがあります。

果たしてこの婚約者のビザは何かというものです。

アメリカもハーバードなど有名なビジネススクールや、弁護士養成のロースクールなどは、プロ養成所で、在学中からあちこちの企業から声がかかり、また、みんな就職します(アメリカの大学・大学院でも特殊な例です)。

婚約者はすでにニューヨークのローファームに勤めているそうですが、それがプラクティカルトレーニングなのかH-1ビザなのかはわかりません。

まだBar Exam(アメリカの弁護士資格試験)の結果が出ていないのでH-1ビザを申請しているとは思えませんが(何しろ、抽選もあるわけで大変むずかしいのですから)、わかりません。

また、皇室の人は、民間人になって渡米して、博物館で働くことが決まっているということですが、プラクティカルトレーニングでもH-1ビザでも、その配偶者が働くことはできません。

また、H-1ビザの場合、日本に一度帰国して領事からスタンプを押してもらわなければなりません(カナダに出ても可能ですが)。

領事はあくまでその国の外にいるわけですから、アメリカ国内で領事からスタンプはもらえません。

このような一般の人にはとてもむずかしい手続きもなく、皇室のフィアンセで元プリンセスだからという理由ですべてゴーサインが出されたとしたら、何か割り切れないものがあります。

そもそも、この婚約者のロースクールへの入学方法が普通ではあり得ない方法だったので、まあアメリカは何でもありなのですが、それにしても、そういったグレーなところが、みんながどこか、諸手を挙げて結婚を祝福できない理由の1つと思われます。

次はロースクールのお話を書きます。

 

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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