アメリカにおけるヘイトの現状。留学への影響は?

コロナウィルスがきっかけ?

アメリカでは最近、アジア人へのヘイトクライムが頻発しているというニュースがあります。

これは、トランプ前大統領が、「チャイニーズウィルス」とか「武漢ウィルス」など、コロナ感染症は中国の産物だということを暗ににおわせる言葉をたくさん使ったことから始まります。

アメリカ人にとっては、中国人も日本人も韓国人も見分けがつきません。

ちょっと前に、アメリカの学校の先生が、「目尻がつり上がっていたら中国人、下がっていたら日本人」と生徒に話したといって、またまた人種差別だと問題視されていました。

大学キャンパスにおけるヘイトの存在

アメリカでは、大学のキャンパス内で、アジア人に対する差別といったようなことはまず起きません。

教育レベルや文化度が上がるほど、差別はしてはいけないのではなくて、初めからするもんじゃないという考えが深く、また、肌の色にかかわらず勉強できる人はたくさんいるのですから。

キャンパスでは優秀な人やスポーツに強い人が注目の的で、人種は何でもいいのです。

外に対しては「同じキャンパスの仲間」という意識が強く、○○人より、××大学の仲間であることのほうが大切になります。

治安の悪そうなエリアでは、アジア人へのヘイトだけでなく、泥棒、すり、恐喝、何でもありですが、マスコミは悲劇の主人公をつくるのが好きですから、ヘイトのことばかりでけっこう騒ぎます。

またその部分だけを日本のマスコミが取り上げるので、ニュースに接する人は「何やらアメリカでは日本人が中国人と間違われて、突然襲われるかもしれない」という印象をもってしまいます。

ヘイトクライムに巻き込まれないために

当研究所からの留学生のご両親にもそういう心配をされて、ボストンのオフィスに問い合わせる方がいます。

初めはボストンのスタッフは驚いたようです。

学校のキャンパスではそんな話はありませんし、ボストンでも、街に人が少しずつ戻ってきて、ワクチン摂取も進んで、ちょっと春が巡ってきたかな、という楽しい気分だったからです。

スタッフの1人は白人で、どう答えていいかわからない、自分の周りでは「ない」のですが、ただそれだけの答えでは満足してもらえないと思ったようです。

またもう1人は当研究所の卒業生で、アメリカ人と結婚していて、いわゆるハーフの息子が2人います。

家族であらためて話し合ったようですが、夫も子どもたちも、「いろいろな人間がいるし、襲われたというのも、根本原因を探せば、違った理由かもしれない」という意見で、次のような話になりました。

つまり、悪い時間帯(深夜)に、悪い場所(地域)で、悪い人とつるんでいれば、悪いことに巻き込まれる可能性が高く、よい時間帯に(日中)、よい場所(治安のよいコミュニティ)で、よい人(善良な人々)とつるんでいれば、悪いことに巻き込まれる可能性は極めて低い、ということです。

フードで顔を隠せ!?

同じ頃、シカゴの日本領事館から、在米の日本人に宛てて、次のような注意のメールが届きました(抜粋)。

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ヘイトクライム等の被害に遭わないためには、周囲の状況に応じ、以下の対策を取ることが有効な予防策となり得ます。
○フード、帽子やマスク等で顔を隠し、一見してアジア系市民であることを周囲に悟られないようにする。
○複数名の者が理由もなく近づいてきたら、目線を合わせないようにしてその場から立ち去る。
○見知らぬ者から注意を引くような言動をされても、無視をして相手にしない。
○意味がわかる言葉で話しかけられても、理解ができないふりをする。
○車両から声かけや嫌がらせを受けた場合は、車両と反対方向に立ち去る。
○身の危険を感じたら、大声で周囲に助けを求める。
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こちらが犯罪者でもないのに、どうしてフードを目深にかぶって歩かなければならないのでしょう。

ちょっと考えられないアドバイスです。

これって日本人の低姿勢のあらわれ?

自分自身の内なる差別意識を見直してみよう

差別意識はだれでももっています。

そもそも日本の「偏差値」だって、「上級国民」だってそのあらわれです。

生まれたときから、親や学校、友だちや社会から影響を受けて、いろいろな差別意識が刷り込まれていきます。

刷り込まれることが少ないと差別意識も低いのです。

ナイジェリアの作家でアメリカで活躍している人が、アメリカに留学してきて初めて「黒人」というのを知った、認識した、ということを言っています。

アフリカでは、みんなアフリカ人ですから、アメリカでいう黒人は存在しないのです。

とても私の印象に残る言葉でした。

差別を怖れず、また危ないところに近寄らない行動をし、こういうときに自分の中にある差別意識についてあらためて考えてみたいものだと思います。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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