成績が悪いと奨学金もストップ! アメリカの大学のシビアな現実

アメリカの大学で殺人事件が!?

アメリカの推理小説を読んでいると、とてもまじめで勉強熱心だった学生が殺されたという話が出てきました。

刑事がクラスメートやルームメートにいろいろ問い合わせて回るのですが、だれもが、とてもまじめな子で、本当によく勉強していた。

いつも図書館で勉強していた、成績のことをとても気にしていた、奨学金のことを気にしていた、と答えるのでした。

アメリカでは、成績が悪くなると奨学金の支給が止まってしまいます。

ということは大学をやめることになってしまうので、人生の一大事です。

被害者の検死をする医師が主人公なのですが、彼女は高校を飛び級で卒業し、大学は3年で修了し、メディカルスクール(医科大学院)に入学しているという経歴の持ち主です。

この医師の妹は大学で勉強せず、6年かかってやっと卒業し、結婚したものの別居して実家に戻って、何をするか考えています。

助産婦になりたいと思うのですが、アメリカの助産婦のコースは大学院です。

彼女は助産婦の助手の仕事を探しているのですが、面接してもなかなかうまくいきません。

彼女は大学の成績が悪いはずですから、大学院には進学できないのです。

大学の成績が人生を左右する

アメリカでは、大学で勉強してよい成績を残すことが、それからの人生を生きていくのにとても大きなカギになります。

映画などで、成績の悪い学生が教授のところに行って、成績を変えてもらうためにくどくど言い訳をするシーンを見かけます。

成績が悪いと奨学金もストップするし、就職にも差しつかえるし、メディカルスクールやロースクール(法科大学院)といった専門コースや大学院に進学することもできません。

大学での授業時間はだいたい1日3時間(3科目)ですが、宿題が出ますし、1学期の全期間の予習計画(シラバス)が配布されますので、学生は、授業が終わったらすぐに宿題をして、復習をして、予習をします。

これに、だいたい5、6時間かかります。中間テスト・期末テストが8週間ごとにまわってきます。

期末テストと同じ時期にペーパーと呼ばれるレポート(10ページくらいのもの)を提出し、かつプレゼンテーションを行う場合も多々あります。

こういう科目を1学期に5科目とりますから、毎日たいへんです。

授業が始まって10日めくらいまでには科目を落とすことができますから、どんどん落として、1学期に2、3科目ずつ取得することになると、卒業までに6年くらいかかります。

アメリカのどの大学も卒業の確率を発表していますが、原則「6年以内に卒業する確率」を発表しています。

4年以内ではありません。

早く卒業すれば学費も節約できる

さて、小説の妹は大学を卒業するまで6年、姉は3年です。お姉さんのほうは、1学期に6科目とってサマースクール(夏期集中講義)でも単位を稼いだものと思われます。

最近は、アメリカの大学の学費があまりに高いため、なるべく3年で卒業しようというのがけっこう流行しています。

アルバイトをする時間はあまりありません。

また、寮生活ですのでアルバイトをする場所もありません。

せいぜい夏休みくらいです。

したがってアメリカ人の学生は親に援助してもらうか、返済が必要な奨学金(要はローン)や、返済しなくてもよい奨学金などをあわせてやりくりしています。

当然早く卒業したほうが、費用の大きな節約になります。

自分で考えるアメリカ、みんなと一緒の日本

3年でもいい、6年でもいいということは、卒業までのスケジュールを自分で考えてマネジメントしなければならないということです。

日本のように、入学したら大学が就活の世話から卒業まで面倒を見てくれるなんてことはありません。

入学も9月と1月にでき、入学式もありません。

別の大学から単位をもってくることも、途中で専攻を変えることもできます。

専攻を何べんも変えたので卒業に時間がかかったというのもよくある話です。

アメリカにはスクールカタログ(全部オンラインで読めます)というものがあって、卒業までの単位や奨学金支給が止まる成績、退学になる成績、専攻科目及び必要単位など、細かく書いてあります。

学生はそれを見ながらアドバイザーと相談して自分の専攻や卒業までのスケジュールなどを組み立てます。

みんなと一緒、ということはありません。

つねに自分で考えて実行していかなければなりませんし、ディスカッションでもプレゼンテーションでも、自分の考えや意見をはっきり言わなければなりません。

日本は、あまりに「みんなと一緒」が行き過ぎてはいないでしょうか。

自分で決める・行動する・責任をとるということが曖昧になっていて、日本の世の中がよい方向に行っていないように思います。

「アメリカ留学」といえば「TOEFL®テストで高得点をとる」なんていう単純な話ではありません。

それは日本の受験の考えかたです。

入学してからどのようにして自分を確立して卒業までこぎつけるか。

その経験はたいへん苦しいもので、かつ人生を自分らしく生きていくのにとても役に立つものです。

 

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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