受験と就活を抜本的に変えないと、日本のキャリア改革はムリ!

労働市場改革とは何か?

日本の政府が三位一体の労働市場改革というのを打ち出しています。

リスキリング(学び直し)支援とジョブ型人事制度の普及、成長分野への労働移動を促進するため、政府がいろいろな支援をして、社会を変えようということらしいです。

日本の企業も、もはや終身雇用を保証できないので、この考えに賛成で、すでにいろいろな研修をやってきたが何も変わらないので、政府が本腰を入れて音頭をとってやるということですが、今日付の日経新聞では、それに疑問を呈しています。

自分のキャリアに満足していない日本人

リクルート社の今年初めの調査によると、自分のキャリアに満足していない人が36.1%、キャリア自律できていると思う人は18.3%、できていないと思う人は41.8%ということです。

キャリア自律の課題は「何をしたらいいかわからない」「自分の強みや市場価値がわからない」「行動に移せない」というのがトップ3だそうです。

国家資格として登録されているキャリア・コンサルタントが7万人もいるそうで、こういう人に相談するのが一つの手だということが書いてありましたけど、もっと抜本的なことを変えないとムリだと思いますよ。

日米のキャリア観の違い

日本人のほとんどはサラリーマンになることをめざして教育されていて、そのために受験があり就活があって、たった一度のチャンスですべてが決まることになっていて、就職してからは会社にお任せなので、ちょっとでもお給料が高い、安定性が高い、有名、大きい、などなどで会社を選んでいるわけです。

いつもアメリカの話ですが、アメリカでは大学を卒業して、就職して、30歳くらいになって課長になりたいと思ったら、また大学院に行ってMBAを取得します。

個人が時間をかけて、キャリアを上げたり学位を上げたりして、自分を高く売るように努力するのです。

また、長く同じところに勤めるのも、とても努力が要ります。

公務員などは35年勤めると最後の年収の90%の年金をもらえるようですが、すぐクビになったり降格になったりする世界ですから、それこそオンラインで新たな勉強をしたり、ハードな研修をこなしたり、法律をよく勉強したり、相当の忍耐が要ります。

リスキリングではITの進化に間に合わない

日本ではIT技術者が不足で、中年になって学び直しをしたり、大学で急に理系を増やしたりしていますが、教育でも仕事でも、自分で考えて自分で行動して人生の充実感は自分で得ていくもの、という考えを、どれほど教え、説明しているのでしょうか。

世界はどこでも、そんなことは当たり前のことですが、日本は自分の人生は、偏差値の高い学校を出て、よい企業に入れば、必ずや平穏に導いてくれるものだと、社会全体が小さい子どもから中年にまで、信じさせていませんか。

年金をもらう歳になって、やっと何か違ったかなと思うのかもしれませんが、いまだよい年金をもらっている人たちもいて、何の疑問も抱かないようです。

はっきり言って学び直しなんてやっている間に次の技術が発達して、ついていけませんよ。

生成AIといかに向き合うか?

自分で考え創造する、それが生きるうえで最も大切なことで、そのための基礎を学校で学ぶわけですが、まあ、そんな教育は日本では行われていません。

学校の先生そのものが終身雇用で、リスキリングや研修をそんなにしない人たちですから、文科省で決められている学習指導要領をちゃんとなぞるのに精いっぱいです。

まあそのうち学校の先生も、教える仕事の大部分はAIにとって代わられるので、子どもたちの精神面や生活面をもっと見てあげられるカウンセラーにならなければならず、そのためには、本人もつねに学び、考え、創造する人でなければなりません。

生成AIの成長はすさまじく、10年で変化したことが、これからは2年で変化するようになると思います。

あと2年もすれば、生成AIに、いま1,000万円のお金があるので、これを1年で1億円に増やすにはどのような商材を買ってどのようなツールを使って販売すればいいかと相談すると、〇〇を買って××(たとえばAmazon)を使って、こういう宣伝文句で、売値はこれだけで、会計処理や在庫処理はこのようにして、と全部プランを出してくれるようになりそうだ、とMITの人たちは言っていますよ。

そもそも、受験勉強のように決まったものを学び暗記するより、新しいビジネスを起こして、お金をちゃんと儲けるようにするほうが、ずっとむずかしいのです。

でも、そのビジネスの方法もAIが答えてくれるようになるとすると、私たちはどうするの?

もっと日本人の抜本的生きかたを考えなおさなければならないのではないかと思いますが、新聞記者の人たちもいろいろ言っているけど、彼らもやっぱり終身雇用だもんね。

いつも思いますが、どうする日本。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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