決める前によく考えてほしい。カリフォルニアのコミュニティ・カレッジへの留学

人気上昇中のOrange Coast College

最近、またコミュニティ・カレッジの相談が増えてうんざりしています。

日本の留学エージェントは、どこもかしこもカリフォルニアにあるコミュニティ・カレッジを斡旋するエージェントと契約していて、東京にある大半の学習塾も、地方にある小さな留学エージェントも、みんな同じところに留学希望者の情報を送って、受け手のエージェントがみんなまとめて、同じコミュニティ・カレッジに入学手配をして、入学許可証を送ってきます。

一時はSanta Monica Collegeが有名でたくさんの日本人がいましたが、最近はOrange Coast Collegeが人気で、日本人が200人はいるそうです。

その上College近くのアパートに日本人が100人くらい住んでいるという話です。

Santa Monica Collegeは、いろいろな施設を使うのに別の費用が発生して、学生から苦情が出たため、いまはOrange Coast Collegeに人気が移っているようです。

コミカレ留学が人気なのは日本だけ?

このような留学は、留学生本人ではなく、あくまでエージェントの都合ですべてが決められ、たくさんの留学生がこれに乗せられ、海を渡っていきます。

中国や韓国の留学エージェントはコミュニティ・カレッジなんか紹介しません。

バイデン大統領夫人がコミュニティ・カレッジで教えていることで称賛されていますが、それはファーストレディたるものが、能力が低く貧しい学生たちのために教壇に立っているということで称賛されているのです。

日本人は、とくに都会の人たちは、地元の公立小学校や中学校の評判がよくないので子どもを私立に入学させるなんてことをしているのに、アメリカ留学になると、まったく、そのことが頭から抜けているようです。

コミュニティ・カレッジが人気の理由

コミュニティ・カレッジの売りは、まず第1番目に、学費が安いということです。

カリフォルニアあたりは、1年間の学費が平均で7,000ドルくらいです。

2番目は、ホームステイで安心ということです。

3番目は、日本人は英語力が不足しているので、能力の低いアメリカ人が集まっているところなら何とかやっていけるかも、という暗黙の諒解です。

コミカレ留学は安くない

まずお金のことでいえば、アメリカは生活費がとても高くつきます。

コミュニティ・カレッジには基本的に寮がありません(そもそもアメリカには寮のない四年制大学はまずありません)。

ということは、住居や交通手段(車を買うなど)や、キャンパスと住居の往復の間にさまざまなお金をつかうということです。

授業が2:00に終わったらスタバに行くわけです。

ホームステイ先の食事がまずかったり自分で料理するのが大変だったりすると、つい新しいラーメン屋に行くのです。

長期のホームステイは非現実的

2番目の、ホームステイが安心というのも日本人独特の考えかたです。

アメリカの大学は寮生活がまず基本で、大きな敷地に図書館、教室などすべてのものが揃っていて、全員そこで学生生活をするため、看護師が24時間いたり、キャンパスポリスがいたりして、アメリカ人の親は、そういった寮生活を含めたキャンパスライフのすべての面を考慮して、自分の子どもを託すのです。

女性の多くが働く時代に、他人の子どもを何年も預かる家庭なんて、いまどき滅多に探せません。

日本の昔の下宿と同じく、部屋が空いているのでお金になるから貸すという発想です。

それもAirbnbが出てきて、家庭にとってはそのほうが簡単でお金になるので、ますますホームステイ先を探すのがむずかしくなっています。

また、住宅街にある家に3:00に帰っても、車がなければどこにも行けません。

帰るのだって、1時間に2本しかないバスに乗って、という有様です。

日本のようにちょっと出ればコンビニがあり、バスや電車にすぐ乗れて、どこにでも行けるというのと、住宅事情や交通事情がまったく違うのです。

したがって、ホームステイを数か月もすると、つくづく不便でイヤになって、前からいる日本人が住んでいるCollege近くのアパートに移り住むことになります。

英語にハンデがあるからこそ大切な寮生活

3番目は、まったくバカげた考えです。

そもそも、英語力が不足で、何がなんだかわからない、だまされてもわからない留学生にとっては、そのような外国人学生のチンプンカンプンな英語を快く聞いて理解してくれて、一緒にお茶を飲んだりご飯を食べたりしてくれて、宿題を手伝ってくれたり、いろいろな英語の言い回しを教えてくれる、そういったことができるアメリカ人が周りいなければなりません。

もちろん、寮があってルームメイトがアメリカ人というのはとても大切です。

隣の隣の部屋の子が同じクラスをとっている、前の部屋の子がスポーツクラブに誘ってくれる、クラスで隣の席に座った子がランチを一緒に食べてくれる。

そういう子たちは24時間同じキャンパスにいて、能力的にも宿題を手伝ってくれるレベル(別にハーバードでなくていいんです)があり、オロオロしている外国人学生に手を差し伸べる精神的な余裕があり、時間的にも経済的にも他人のために使うことができる余裕がある人たちでなければなりません。

何より大切なのは、18歳の若者が第1歩を踏み出す外国生活であることです。

一生付き合えるいい友人に恵まれるチャンスでもあります。

はじめの1歩の環境がどれだけ大切か、本人も親もエージェントもわかっているのでしょうか。

コミュニティ・カレッジの悪口を言っているのではありません。

ハラハラ心配して大金をつかう留学に、どうしてこんな根本的なことが理解できないのか、本当に悲しいのです。

(参考)Orange Coast Collegeの1年度の費用(2023年度)
授業料 11,090ドル
寮・食費 13,000ドル
教材費 1,400ドル
医療保険 1,980ドル
合計 27,470ドル

https://orangecoastcollege.edu/より

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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