生きる意味を模索する。発達障害の子の成長と未来

発達障害と知能指数

うちの孫たちが、アメリカにあるSalve Regina Universityという、うちの息子(孫たちの父親)の母校を訪ねました。

Admissions Officeのスタッフが対応してくれて、とても楽しい時間を過ごしたようです。

「孫たちを入学させてほしいと言っておくといい」という私の忠告に従って、嫁もいろいろ話をしたようです。6歳と9歳の孫です。

6歳の女の子は、入学に問題なしでしたが(もちろん、願書も出していないので話だけのことです)、9歳の男の子のほうはやんわり断られました。

この子は、自閉症の上に、知能指数が低いのです。大学が言うには、「発達障害はその症状に応じていろいろなヘルプができるので受け入れるが、知能指数が低いのは、ヘルプをしても学業についていけないので、むずかしい」とのことです。

まぁ、当たり前の話ですね。

大学院で学ぶSpecial Educationという分野

そもそもは、孫の言葉が遅いとか、変わった行動をとるということに親たちが疑問を抱いたのがきっかけで、いろいろなところ(日本で有名な自閉症の先生とか)に相談しました。

小学校に入るときには、「発達障害で知能指数は境界線ギリギリで、普通のクラスでも支援学級でもどちらでも選べる」と言われたのですが、支援学級が送り迎えのバスを出してくれることが決め手で、支援学級に入学しました。

孫が発達障害とはっきりわかったことで私は、すぐ嫁をアメリカに送り出し、Saint Michael's Collegeの大学院でSpecial Educationの勉強をさせることにしました。

いろいろな障害をもつ子どもたちについての勉強で、大学院レベルの分野です(アメリカは大学院からしか学べない専門分野がたくさんあります)。

アメリカのインクルーシブ教育

半年ほど遅れて孫たちも渡米しました。

嫁の大学区域にあるHiawatha Elementary Schoolという小学校に連絡して、「英語は話せない、発達障害だけど」と伝えましたが、No Problemの連続で、簡単に入学させてくれました。

アメリカはInclusiveといって、障害のある子もみんな同じクラスに入れるのが原則です。

入学後、きちんとした診断が必要と言われて、夏休みに帰国した折、青山のバイリンガル専門の診療所で診断を受けました。

ここは、アメリカの小学校が探してくれて、指定してきました。

親も本人も各々、1日かけての詳しい診断で、初めて、「自閉症で知能指数が○○(日本での判断より低いものでした)である」というきちんとしたレポートをもらいました。

できること/できないことが明確に

その診断をもとに、小学校ではいろいろなサポートをしてくれたのですが、こういうことは、大きくなるにつれ、はっきりと何が問題なのか、現実を突きつけてくるのですね。

どうやら孫は、時間の経過の概念がわからないようです。

つまり昨日と今日と明日がわからない、ということがわかってきました。

また、英語も日本語もペラペラしゃべるのですが、必要がなくなったらすぐ忘れてしまう。

おそらく、なぜ必要なのかがわからないのだと思います。

嫁は、ひらがな・カタカナ・漢字をずっと教えているのですが、教えているときはちゃんと書きとりをしていても、すぐ忘れてしまうのです。

書きとりをして字を覚えるということが、どういうことなのか、理解できないようなのです。

What、When、Where、Who、Why、Howという、いわゆる「5W1H」も、もう1つ理解できません。

絵本が好きでよく読むのですが、字を読んでいるのではなく、すぐ覚えて、ペラペラ読むのです。

でも、どうやら、その絵本を手に取ることがなくなったら、みんな忘れてしまうようだということが、この頃わかってきました。

ChatGPTで、こういう子どもを治す方法はないのか念のため聞いてみたら、まだない、という答えでした。

生きる意味を問い直すきっかけに

嫁の大学院生活も終わり、もうすぐ孫たちも帰国して、女の子は小学校1年生に入学し、男の子は支援学級に戻ります。

いろいろな意味でアメリカのほうが、男の子にとって、教育的にもいいし、支援を受けるのもむずかしくないし、生きていくのも、ひょっとしたら生きやすいのかも、と思うところです。

このような子を受け入れるボーディングスクール(寮制の学校)もそれなりにありますから、嫁はこれから、帰国前にいくつか訪ねてみる予定ですが、はてさてどうしたものか。

そもそも日本には、うちの孫が受けたような診療所はほとんどありません。

発達障害や、知能指数が低い場合、早期発見・早期訓練が必要なのですが、日本ではなかなかむずかしいのが現状です。

本当は、息子の母校のことやAdmissions Officeの対応について書くつもりが、孫の話に集中してしまいました。

嫁は、こういう子どもに恵まれたおかげで、その分野を研究したり、人間のいろいろな生きかたを模索して、新しい道を切り開くという、生きる使命が見つかりました。

おばあさんの私も、人間の生きる意味についてまたまた、より深く考える機会をもらったわけです。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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