目が離せないアメリカ大統領選。カマラ・ハリス氏の巻き返しなるか?

カマラ・ハリス氏とは何者か?

アメリカでは相変わらずドラスティックなことが起きています。

ついにバイデン大統領が次の大統領選への立候補をとりやめ、このままですと副大統領のカマラ・ハリス氏が民主党の次期大統領候補になりそうです。

ジャマイカ系の父親とインド系の母親から生まれた女性ローイヤーなんて、本当にアメリカならではの登場ですよ。

お父さんもお母さんも学者で教育レベルの高い家庭に育ったはずですが、アメリカならではの黒人としての人種差別に遭っていたようです。

カリフォルニアで公立小学校に白人と黒人を共学させるという時代に育っています。

キング牧師のワシントン大行進の有名な演説“I have a dream.”が1963年の8月で、公民権法が制定されて人種差別に終わりを告げたのが1964年の7月です。

その年の10月に生まれたカマラ・ハリス氏の小学生時代は、法律が変わっても200年も続いたアメリカの人種差別が、まだまだ過渡期にあったときです。

名門「黒人大学」からロースクールへ

のちにお母さんの仕事の都合でモントリオールで高校時代を過ごしたようですから、アメリカよりモントリオールでは、差別意識が少なかったのかな、と思ったのですが、彼女は、大学はワシントンDCにある名門黒人大学ハワード大学に進学しています。

顔を見ても黒人というよりインド人の顔をしていますし、両親が離婚してインド人のお母さんに育てられている彼女が、なぜハワード大学に。

しかも、お父さんだっていわゆるアメリカの黒人ではなくジャマイカの人です。

それでもアメリカの優秀な黒人が行くハワード大学に進学した彼女の気持ちは、日本人の私には計り知れないものです。

ハワード大学は1867年に創立された黒人のための私立大学です。

ハーバード大学などアイビーリーグでは、その当時、白人男性のみに入学が許された大学でした。

ハワード大学は最初から男女共学で、優秀な黒人のための大学として設立され、いまでも学生の約80%は黒人です。

このような黒人のための大学は、ほかにも、おもに南部にあります(文末のリスト参照)。

カマラ・ハリスさんはその後、カリフォルニア大学のHastings College of the Law(The University of California College of the Law, San Francisco)で勉強し、司法試験にパスして検察局で働き検事になり、カリフォルニア司法長官になりました。

優秀で強い人ですね。黒人・アジア系の人たちが彼女を応援することになるのでしょうか。

ドナルド・トランプ氏の学歴

かたや、裕福ではない白人男性が応援する、本人は超裕福白人のトランプ氏ですが、彼は、生まれ育ったニューヨークのミリタリー・アカデミーを卒業後、やはりニューヨークのフォーダム大学に入学しています。

フォーダム大学って、どこかで聞いたことありませんか? そうです、あの有名な小室さんが入学した大学です。

彼はフォーダム大学のロースクールに、ちょっと普通ではない方法で入学し、ともかくローイヤーになりました。

トランプ氏はフォーダム大学に2年間通った後、アイビーリーグのペンシルバニア大学の不動産専攻に編入して卒業しています。

トランプさんのお父さんはドイツ系、お母さんはスコットランド系で、お母さんそのものが1930年に移民してきて、お父さんのお父さんがドイツからの移民です。

何か、とても対照的な二人ですよね。

アメリカの新たな「分断」

いま、アメリカは貧富の差で分断されていると言われています。

それも持たざる白人男性を中心とした不満が浮き彫りになっています。

ほんのちょっと前まで、貧乏な黒人とお金持ちの白人という分断だったのに。

いつの間に、いろいろな恩恵を受ける黒人・女性・性的マイノリティと、見捨てられた持たざる白人男性の分断になっています。

でもトランプ家はビジネスマン一家で、大金持ち。トランプさんを応援するイーロン・マスク氏も大金持ち。

カマラさんは、まぁちょっとお金持ち程度でビジネスマンではありません。

バイデンさんとトランプさんの老白人同士の対決はなくなり、突如、また、アメリカ独特の人種が表に出てきました。

アメリカの黒人問題は、本当に根深いものがあって、私たちはとてもどうこう言える立場にありません。

ヨーロッパでは、黒人を奴隷にしていたということはほとんどなく、アメリカほど極端に黒人と白人の対立はありません。

イギリスは奴隷を売っていた国で、国内ではあまり奴隷を使っていたわけではないのです。

アメリカは奴隷を買った国です。

世界はもうSNSで人があらゆることを勝手に言うようになって、錯乱状態に近いことになりつつあります。

そして、アメリカならではの移民の子で、ルーツの違う2人のアメリカ人の大統領候補。

しかも男と女。今回はアジア系まで含まれています。

目が離せませんね。

【参考】アメリカにある黒人のための大学(Historically Black Colleges and Universities)
Alabama A&M University
Alabama State University
Albany State University
Alcorn State University
Allen University
American Baptist College
Arkansas at Pine Bluff, University of
Arkansas Baptist College
Benedict College
Bennett College
Bethune-Cookman University
Bishop State Community College
Bluefield State University
Bowie State University
Central State University
Cheyney University of Pennsylvania
Claflin University
Clark Atlanta University
Clinton College
Coahoma Community College
Coppin State University
Delaware State University
Denmark Technical College
Dillard University 
District of Columbia, University of the
Edward Waters University
Elizabeth City State University
Fayetteville State University
Fisk University
Florida A&M University
Florida Memorial University
Fort Valley State University
Gadsden State Community College
Grambling State University
Hampton University
Harris-Stowe State University
Hinds Community College 
Howard University
Huston-Tillotson University
Interdenominational Theological Center
J. F. Drake State Technical College
Jackson State University
Jarvis Christian University
Johnson C. Smith University
Kentucky State University
Lane College
Langston University
Lawson State Community College
LeMoyne-Owen College
Lincoln University
Livingstone College
Maryland Eastern Shore, University of
Meharry Medical College
Miles College
Mississippi Valley State University
Morehouse College
Morehouse School of Medicine
Morgan State University
Morris Brown College
Morris College
Norfolk State University
North Carolina A&T State University
North Carolina Central University
Oakwood University
Paine College
Paul Quinn College
Philander Smith College
Prairie View A&M University
Rust College
Savannah State University
Selma University
Shaw University
Shelton State Community College 
Shorter College 
Simmons College of Kentucky 
South Carolina State University
Southern University at New Orleans
Southern University at Shreveport
Southern University and A&M College
Southwestern Christian College
Spelman College
St. Augustine's University
St. Philip's College
Stillman College
Talladega College
Tennessee State University
Texas College
Texas Southern University
Tougaloo College
H. Councill Trenholm State Community College
Tuskegee University
Virgin Islands, University of the
Virginia State University
Virginia Union University
Virginia University of Lynchburg
Voorhees University
West Virginia State University
Wilberforce University
Wiley University
Winston-Salem State University
Xavier University of Louisiana

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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