受験シーズンにあらためて考えたい。アメリカの大学の受験対策とは?

テストよりも重要な「成績」

アメリカの大学や大学院に留学するのに、TOEFL®テストのスコアではなくて、日本の高校・大学の成績が一番重要ということが、少しずつ理解されるようになってきました。

TOEFL®テストやIELTS™のスコアはあくまで英語を母語としない人の英語能力を問うているわけで、学力全体を示すものではありません。

成績が5段階で1や2でも入学できるコミュニティ・カレッジなどでは、IELTS™のスコアくらいしか見るものがありませんが、ちゃんとした四年制大学では、学力や人間性を非常に重視していて、成績やエッセーや推薦状などを検討して、Admissions Officeで最終的な合否判断をします。

それらの要素の中でも、大学なら高校3年間の成績、編入なら高校3年間と大学の成績、大学院なら大学4年間の成績を最も重視します。

英語ができても成績が悪ければ留学先は限られる

日本でも推薦入試やAO入試といった入試形態がどんどん増えてきて、高校の成績が大切という認識が少しは広がってきたせいもあって、高校の成績をよくするという考えかたが少しずつ浸透しつつあります。

それでもなお、入試といえば一発テストという概念が強くあって、高校の成績はあまり気にしません。

まして大学の成績なんて気にしない、という傾向が強いので、英語力だけ上げて成績を無視する人が多いのです。

とくに留学生向けの英語塾などに行くと、英語力を上げるのに一本槍で、学校の成績を無視するので、結局、成績がどんなに悪くてもいいコミュニティ・カレッジに入学するという結果を招いてしまいます。

学校のレベル=偏差値は関係あるのか?

そこでよく質問されるのが、偏差値の高い高校でがんばるより、偏差値の低い高校で勉強したほうが、よい成績をとりやすいのではないか。

アメリカの大学への留学を考えるなら、わざわざ偏差値の高い高校に行く必要はないのではないか、というものです。

こういう考えはアメリカ人にはまずありません。

そこまで作戦を立てて大学入学を考えることはしません。

多くのアメリカ人は地元の高校に通っています。

そこでよくできれば、地元のトップの大学に行きますし、超よくできれば、ハーバード大学などにトライしますが、高校1年生からそこまで考えてはいませんし、そんな小手先の方法を弄してまでトップ大学に入ろうとは思いません。

トップ大学に入学するとそのレベルなりに大変な勉強をしなければなりません。

大学選びは入学「後」のことを考えて

ハーバード大学でGPA2.5程度の成績ですと、ちょっと変な奴と思われてしまいます。

ディスカッションでそれなりの意見を言わなければ、やっぱり変な奴と思われますし、70点ギリギリになると大学から呼び出されて厳しく教授から問いただされるし、3.3以上のGPAをキープしないと奨学金も止まって、約80,000ドルという大金を大学に支払わなければならなくなります。

アメリカでは大学入学もそれなりに大変ですが、入学後はもっともっと大変なのです。

アメリカの大学の入試に小細工は効かない

日本の大学を卒業してアメリカの大学院に進学する予定で東大を受験するのだが、もし入学できなかったら、いっそレベルの低い大学に行ってよい成績をとったほうがいいのか、という質問もあります。

日本の偏差値の低い大学を出ても成績がオールAで、英語力もめちゃめちゃある、ということなら、アメリカのアイビーリーグを狙っても可能性があります。

しかしながら、そんな目先の小細工をすることに何の意味があるのでしょうか。

自分の能力に合った大学に入学して、精一杯がんばるというのが本来の学生の姿です。

10代にもかかわらずいろいろな小細工をしようというのは、周りの大人の指導のせいもあると思います。

偏差値ばかりを基準にして受験させようとするわけです。早稲田の理工を狙っていて、無理だと思ったら、同じ早稲田大学の社会学部だって受けたりするのですよ。

それを平気で塾の先生が勧めたり、高校の先生も成績表を出してくれたりするのです。理系・文系に分けて何の意味があるんでしょう。

こんな本音と建て前の違う指導をしているから、10代の若者がどんどん目先のことしか考えられなくなり、いろいろと小細工をすることになるのです。

とても悲しいことです。

人間を小さく小さくしてしまいます。

日本は人口減だけでなく、チャレンジ精神や大志を抱く若者をも減らしているのです。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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