3,000万円の借金をしてロースクールを卒業。最初の仕事は自分の破産申請?

1年8万ドル。ロースクールの驚愕の学費

当研究所ではアメリカ人の大学生をインターンで採用していますが、初めてインターンで迎えた学生が母国に戻りロースクールを終えて、アメリカのローファームの日本勤務になり、日本に戻ってきました。

日本語を勉強するアメリカ人学生たちに日本に来るチャンスをあげたいと思って始めたことですが、コロナ感染症でしばらく途絶えていて、この夏から再開しています。

初めてやってきたL君は、日本の大学に1年間留学する前に3か月、当研究所でインターンをしました。

その後、日本の大学を経て、アメリカの母校に戻り、ロースクールに入学しました。

University of ChicagoやUC Berkeleyなどのロースクールからも入学許可を得たのですが、最終的にはNew York Universityに入学しました。

大学での成績は、GPA4.0、すなわちオールAです。

ロースクールの学費は1年に80,000ドル。3年間で彼は25万ドルの借金をしたそうです。

これは、国から借りることができるもので、利子は4%です。

ロースクールの学生は、弁護士になって最初の仕事が自分の破産申請だという笑い話がありますが、ともかく、3年間に大変なお金がかかります。

今回、仕事が決まって日本に来たことで、お金を返す目処も自分の生活の目処も立ってホッとしたと言っていました。

20代にして自分の才覚で借金をしてロースクールに行くのは、能力だけでなく勇気も要ることだと、彼の話を聞いて今回しみじみ思いました。

LLMからJDへの編入というナゾ

7月にBar Exam(※)を受けて、その結果が10月末に発表されるので、彼は、まだ正式な弁護士ではありませんが、まず、合格していると本人も思っていますし、会社も信じています。

初めての受験です。だいたい80%がパスする試験です。

奇しくも、日本で話題の、皇室の女性と結婚した人が3回目として受けている試験と同じ試験です。

たまたま、その人の大学が法学部でないのにLLM(※)に入学してJD(※)に編入したという話が出たら、アメリカ人の彼が、何でもありのアメリカでもそんな話は初めて聞いたと、大変驚いていました。

またニューヨークで日本のロイヤルファミリーの話は聞いたことがあるが、その人の勤めているローファームは小さいところで、あまり噂は聞いたことがないとのこと。

キャリアに対する考えかた。日米の違い

彼が当研究所で働いていたときに、よく一緒に食事をしたスタッフの1人はアメリカの大学院へ進学し、現在コロラド大学のアドミッションズ・オフィスに仕事を得たことのこと。

もう1人はカンザスの大学で博士号をとり、日本の地方の大学の先生になったことなど、いろいろな話をしました。

そして、彼が通っていた日本の大学の同級生はどうしているか、ということに話が及ぶと、みんなサラリーマンになって働いていて、将来のことはそんなに考えていなくて、転職なども考えていない、という話でした。

日本の学生が一斉に就活するのを、何かもったいない。つまり、人生に1度しかチャンスがないなんて思うことがもったいない。そのように彼は思っているようです。

彼は5年くらい日本にいるつもりで、将来的には、アメリカの企業の中の弁護士になりたいそうです。

日本語でいうと会社の中の法務部というところですね。

いまのローファームの仕事の1つに、日本の企業がアメリカで上場するのを手伝うというのがあって、へぇーそんな企業がたくさん出てくれば、日本も捨てたものではないな、という話をしました。

彼とランチをした同じ日の新聞に、日本の大学の学長たちが、どのような教育を大学ですべきか、とうとうと述べていました。

自分で考えるとか、創造力豊かな、とかいう話です。

でも、だれも、あの一斉の就活の方式をやめろ、とは言いません。

本当に不思議なことだし、日本の将来を考えてももったいないことです。

※Bar Exam:州ごとに実施される司法試験。年に2回行われる。

※LLM:Master of Lawsの略で、1年間のロースクール課程。おもに海外の大学の法学部を出た人が学ぶ。ニューヨーク州とカリフォルニア州では、LLMを修了すれば州のBar Exam受験資格を得られる。アメリカのロースクールに在学する日本人留学生のほとんどが、このLLMの課程で学んでいる。出願にあたって、日本の大学の法学部を出ていなければ、司法研修所の修了証書が求められる。

※JD:Juris Doctorの略で、3年間のロースクール課程。修了すると、各州のBar Exam受験資格を得られる。出願にあたってはLSAT(エルサット)というきわめて難しいテストのスコア提出が求められる。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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