アメリカの小学校に見るインクルーシブ教育と多様性

小学3年生がプレゼン!

私の孫がアメリカの小学校で「自分の家族について」というテーマでプレゼンテーションをしました。

その写真が送られてきたのですが、あまりにおもしろいので紹介したいと思います。

3年生のクラスの子どもたちは寝そべったり座ったり立ったり、好き勝手な格好で聞いていて、質問タイムでは、手がバンバンあがっています。

日本ではまったく考えられない光景で、当研究所のスタッフの子どもが通う日本の小学校では(彼女の夫はアメリカ人で、子どもはいわゆるハーフですが)、手のあげかたの角度まで注意されるそうです(要はまっすぐシャンとあげろということらしいですが)。

「みんなが違うこと」を認めるのがインクルーシブの理念

さて、孫は自閉症ですが、アメリカの学校は、発達障害児も心身障害児も「インクルーシブ」といって同じ学校・学級で学びます。

孫が入学する予定の小学校に、当研究所のボストンオフィスから電話を入れて、「英語はまったく話せない、自閉症だ」と伝えましたが、No problem.という返事でした。

アメリカは、自閉症のみならず、DVの家庭や、シングルファミリー、移民、難民などさまざまなバックグラウンドの人がいて、みんなまとめて面倒みないとやってられないようです。

まぁ、「みんな違う」ということですよね。

移民の国アメリカの教育のありかた

もともと移民の国アメリカでは、昨日、入国してきた者でも大学教育までチャンスを与えるという国で、教育が国家にとって一番大切だと考えられています。

高校まで義務教育で(実際は年齢で州ごとに違いますが)、無料で受けられます。

日本のように小学校からキチンと漢字や掛け算を教えるような教育ではないので、日本人からするとけっこうゆるくて、あまり大した勉強をさせていないようにも見えます。

そもそも「受験」という発想がないので塾もありませんし、高校でも、大学受験準備なんていうのもありません。

ましてや中学受験なんて、まずまずないので、教育のペースはゆっくりです。

ところが、飛び級制度というものがあって、よくできる子どもたちはどんどん上がって16歳で大学に入ることも可能です。

ペースはゆっくりでもチャンスは豊富

一方で、アメリカは博士課程になると、年間90,000人もの博士が生まれています。

日本は15,000人ほどです。

日本の企業で博士号を持って働いている人は25,000人くらいですが、アメリカには21万人もいます。

そうった人たちがコロナワクチンも作ったわけです。

アメリカでは大人(18歳以上)になってようやく勉学に目覚めたとしても、何度もステップアップする方法があります。

また、日本のように大学生が一斉に就職活動するなんてあり得ません。

卒業までこぎつけるのに大変な勉強をしなければならず、卒業式の後、やっと一息ついて、しばらくしてから就活をするのが普通です。

なかなか変革できない日本の教育

日本の企業の生産性が上がらないのは、同じ企業で定年まで働くことが、いまだに理想とされる雇用形態に大きな原因があります。

また、同じことをキチンとみんなで一緒にするという教育を受け、企業で働く、という方法が、もはや工業社会でなくなった現在の世界のありかたに合いません。

まぁ、みんな本当のところはわかっているので、「個性豊かな教育」とか何とか言っていますが、まったく変化できないのです。

上の写真が示すように、小学校のクラスのありかたからして、まったく違うので、変化させるのがむずかしいのでしょう。

どっちが本当にいいのかは、もっと100年先にならないとわからないのかもしれませんが、ズルズルとあらゆる面で下がり続けている日本を見れば、アメリカのこのメチャクチャに見えるやりかたに、軍配が上がっているのではないでしょうか。

毎日、起立、礼、と規則正しく、また、服装から髪型までうるさく言う日本の教育。

偏差値を限りなく気にする日本の教育に、みなさん、行き詰まりを感じませんか。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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