アメリカの大学に留学して日本の医学部へ。学士編入という裏ワザ

留学生はアメリカのメディカルスクールに入れない?

日本の大学には、学士編入という制度があります。

当研究所から留学して、アメリカの大学を卒業して帰国してから、日本の大学の学士編入試験を受ける人がいます。

それも医学部です。

アメリカのメディカルスクール(医科大学院)は、大学を卒業してから改めて受験して入学するものですが、基本的に外国人学生は入学させません。

アメリカ国民にお役に立つ人を養成するという考えなのかもしれませんが、国籍や永住権をもっていないと、まず入学できません(アメリカは何でもありの国ですので、絶対ということはありませんが)。

留学して学士編入をめざす理由

したがって日本人学生がアメリカの大学を卒業して、医師になりたいと思ったら、帰国して、学士編入をめざすことになります。

わざわざアメリカの大学に行って、また帰国して受験するとはどういう考えかと思いますが、日本でまったく医学部に行く気のなかった人が、大学卒業の頃に気が変わることがあるのです。

たいていは、親が医師という人です。開業医ですと、お祖父さんの代からという家もよくあります。

そういう環境の中で育ったのですが、医学部に行きたくない、かといって日本の普通の大学の経済学部なんかに行ってサラリーマンになってもどこか物足りない、ということでアメリカの大学に進学します。

本当に医者という家業がイヤだと思っている人もいます。

勉強があまりできなくて、医学部を受ける自信がないという場合もあります。

親に医学部、医学部と言われて、若さゆえの反発というのがきっかけかもしれません。

アメリカでは美術も音楽もスポーツビジネスも何でもできますし、演劇とコンピュータサイエンスを同時に勉強することもできます。

アメリカでいろいろなものにチャレンジして、自分の行く道を考えようというわけです。

親の思惑vs子の希望

幸いにして親が医師であれば、勤務医でも、一般から比べれば収入も高いので、留学する費用をまかなうことも可能です。

ただ親としても、何か資格なり技術なりを身につけてもらいたいと思っています。

アメリカに行けば英語力は身につくし、何か自分に合ったものを習得してくれるだろうと期待をします。

日本の大学を卒業して一斉に就活をして企業に入社する、という道はあまり好みません。

当研究所にカウンセリングに来て、親子でケンカになることもあります。

親のどちらかが反対でどちらかが賛成、という場合もあります。

兄弟姉妹が多くてだれかが医学部に行っていたりすでに医師になっていたりすると、まぁ1人くらい変わっていてもいいか、とあきらめの気持ちをもつ親もいます。

私はいつも、「そんなに決めつけなくても、またどこかで医師になりたいと思ったら、学士編入といって、普通の医学部受験より受験科目もずっと少ない制度があるので、それを考えればいいわよ」と励まします。

日本では、どうしても同じときに同じことをしなければもうダメ! みたいな考えになりがちですが、世の中はよく見てみれば、いろいろあるのです。

そんなこんなで留学して、あっという間に4年間が経ち、卒業して帰国して、やっぱり医師になろうかな、と思う人がちらほらいるのです。

やっぱり家業ですからね。

留学して日本の医学部に進むメリット

学士編入の試験科目は、英語+生命科学だけとか、これにプラスして物理化学や数学くらいです(大学によっては論文や面接もあります)。

入試の日程もバラバラですから、公立・国立も何校も受けることが可能で、そのための予備校まであります。

英語はもうそんなに勉強する必要もないので、何か、うまくいきそうと思えてきます。

高校生のときにあまり勉強が得意でなかった人も、アメリカで勉強して(勉強しないと退学になってしまいますから)、それも英語でしなければならないわけですから、とても緊張した日々を過ごすことになります。

その経験から、勉強することに自信もついています。

学士編入では、たいてい2年生から入学します。

そこから5年間行かなければなりません。

ちょっと遠回りで費用もかかりますが、かなり立派な医師が誕生します。

何年かしてアメリカの医師免許も取得するかもしれません。

それこそ世界の緊急医療現場に駆けつける医師になるかもしれません。

WHOなどで活躍する医師になるかもしれません。

学士編入をせずに、アメリカの大学院でHospital Administrationという分野を勉強する人もいます。

アメリカでは、入院設備のある病院は原則として、医師は医療以外にはかかわらず、このHospital Administrationで修士号をとった人が病院経営に携わります。

日本は医師が病院経営もしますが、これからAIの時代になり医療のありかたも大きく変わっていきますから、このHospital Administrationを勉強して、家族・親族の病院経営のスペシャリストとして活躍するのも1つの生きかたです。

どんなことも何か手があるので、あきらめないことです。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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