古い価値観から抜け出せない日本。どう生きるかはあなた次第
人生100年時代のライフスタイル
人生100年時代と言われています。では、どのようなライフスタイルを考えればいいのでしょうか。
ついこの間まであった工業時代のライフスタイルは、学校を卒業して就職し、結婚し、夫は会社や工場へ、妻は家庭へという性別分担があり、家を買い子どもをもち、定年を迎えて老後を年金で暮らし、死を迎える、というものでした。
これには、圧倒的多くの人に就職先があり、その企業が終身雇用と年金を保証する仕組みが必要でした。
また社会が、家庭と家族とはこうあるべきだという1つの型をつくっていて、みんなそれを信じていました。
アメリカでは第二次世界大戦後から70年代半ばくらいまでこの構造が続きました。
製造業が最も華やかなりしときで、ブルーカラーの人たちも、十分な収入と年金を得て、家庭を築いたものです。
アメリカの製造業は日本に取って代わられ、日本の工業時代は90年代くらいまで続いたでしょうか。
その後、製造業は中国をはじめ発展途上国に移り、サービス業や情報業にビジネスは取って代わられました。
また、個人の考えかたも、性別にかかわらず働いたり、結婚もしなくなったり、子どもをもたなくなったりと、工業時代のライフスタイルから大きく変わってきました。
アメリカでは70年代には、もう「フォーディズム(※)」と呼ばれるこのライフスタイルは終わりを遂げ、新しい時代に突入したのです。
(※)フォーディズム:第二次世界大戦から1970年代にかけての経済体制。大量生産と消費拡大を基盤とする。
いまや日本はトヨタ頼み?
日本でも、製造業がだんだん力を失い、人は100歳まで生き、年金も不足という時代になっても、相変わらず工業時代の考えから完全に抜け出せていません。
終身雇用が不安定になっている。正規社員と非正規社員ができ、働く側の立場や権利が曖昧になっている。
男女の差どころかいまやLGBTQも含めて、性別は関係なく働き生きる。
結婚はしない人が増え晩婚化が定着している。
すごいスピードで人口減少が始まっていて子どもを産む人はますます少ない。
夫婦と子どもの家庭より、おひとり様の家庭が増えている。
年金ではとても安定した老後は暮らせない。
寿命が延びてどうやって安心して死を迎えればいいのかわからない。
製造業はどんどん海外に行き、サービス産業が花ざかりと思いきや、いまやもうIT産業でなければ生き延びられそうにない、にもかかわらず、製造業を中心にした国家のありかたからいまだに抜け出せないでいます。
極端にいえば、日本はトヨタ頼みの国ではないですか。
そのトヨタも、いまや我が社の社員の半分は途中入社です、と盛んに社長が言っています。
もう終身雇用の時代は終わったと言いたいんじゃないですかね。
ガソリン、ハイブリッド、電気、水素、自動運転、等々、車の技術の変化の激しさ。
ベテランの技術者もなかなかむずかしいですよ。
受験と一斉入社という元凶
こんなに社会の構成や働きかたが変わって人々の生きかたも変わってきているのに、相変わらず、工業時代をそのまま引きずっているものが日本にはあります。
受験と4月の一斉入社です。
この2つが、いまだに日本が工業時代から脱皮できていない大きな原因となっています。
本当は、就職の機会は何度もあるのに、大学3年生の就活ですべて人生が決まると思わされている学生。
そのために小学校から子どもを塾に通わせる親。
そして、小学受験・中学受験・大学受験に失敗することは許されないという価値観を子どもたちに植えつける塾。
そして勝ち組と負け組に分けられる子どもと若者たち。
それをずっと引きずる人もたくさんいます。
本当は勝ち組ではないのにそう思い込んでいる人も、どこかでどんでん返しを食らいますよ。
なんでも多くのサラリーマンの男性は、死ぬとき「こんなはずじゃなかった」と言って死ぬってどこかで聞きましたが、この頃聞こえてくるのは、退職金や年金が思うほどなかった。
90歳までどうやって生きればいいのか、という話ばかり。
自分のライフスタイルは自分がつくる時代
工業時代のライフスタイルから完全に脱皮できない日本は、なんとなく右肩下がりで世界からずるずると取り残されそう。
いまは、家族の一員ではなく個人の時代。
自分で自分のライフスタイルをつくらなければならない時代なのに、そういう教育ができていません。
いつまで働くか、どんなかたちで働くか、どこの場所で働くかも、自分で考えなければなりません。
周りはどんどん変わっているのに、相変わらず偏差値の高い学校に入って有名大企業に入社すれば大丈夫という価値観が変わらないのはなぜ?
とうとうメタバースなんてものもできました。
そのうちAIが人間の仕事は全部やってくれるので、人間はもう遊んでいていい時代がやってくるらしい。
イスラエルの哲学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏が言っているように、AIを操る一握りの人間と、あとは全部ただの人っていう話だけれど、ただの人はメタバースの中のアバターとして一生遊んでいればいいらしい。
おまけにアバターはまったく死なないという。ああ怖い。みんなどうする?
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。