あなたの隠れたアートのセンス。海外で開花させよう!

スティーブ・ジョブズを魅了した日本のアート

アメリカの偉大なIT創業者、スティーブ・ジョブズ氏がいかに日本の文化や美術を愛していて、それを製品に生かしてきたか、という内容の番組を見ました。

彼の日本好きは知っていましたが、具体的なことは初めて知りました。

新版画や陶器を愛していたとのことです。

新版画ができる複雑な工程や、日本の陶器のもつ柔らかい丸みなど、日本のシンプルかつ美しいものに惹かれていたとか。

また彼は、何かを製作するのに、アーティストが強い発言力をもつことを重視していたそうです。

消えゆく日本の伝統技術

日本の美術や、美的感覚というものはとてもすばらしく、世界で十分通用するものだと私はつねづね考えています。

しかし、日本は世界で通用する家電製品や車など、工業製品は輸出してきましたが、アートに関することは、世界に通用しているものが少ないのです。

宝飾品やバッグなどは、ティファニーやブルガリ、カルチェやエルメスにその場を奪われています。

銀座に行くと、もうメインストリートは世界のブランドで埋め尽くされています。

美的センスや技術などでは、日本のものは決して世界に劣らないはずですが、広報・宣伝が下手というか、ブランドづくりが下手というか。何なんでしょう。

しかもいろいろな分野で跡を継ぐ人がいないと言われていて、日本の伝統技術が消えゆく運命にあります。

私の知人で、水引の古くて大きな会社をしていた人がいました。

何とか水引を別のかたちで残すことができないかさまざまなことをしていましたが、ついに力尽きました。

製品として残すことにもうまくいかないし、銀行も手を引くし、また職人さんを育成することもむずかしいのです。

日本では芸術家が生まれにくい?

私の夫の二番目のお兄さんは、一番上のお兄さんが東大に入学したおかげで、嫌いな受験勉強を強いられ挫折しました。

しかしこの人が、自分でいろいろなものをつくるのを見ていると、きっと大工さんになったら名大工さんになっただろうと思うのです。

手先が器用でものをつくる創造力もすばらしい。

彼は生きる方向を、親や社会のおかげで間違えたのです。

周りにそんなことたくさんありませんか?

日本で美術や音楽を勉強するとなると、そんなもので食べられないと言われますし、日本の芸大に入学するには、小さいときからそれひとすじに練習を重ねておかなければなりません。

眠っている才能や興味を、25歳で気づいてやってみる、なんてことはなかなか許されません。

ITの仕事もAIに奪われる

世の中が大きく変わるので、「リカレント教育」といって、新しい分野を学ぼうと言っていますが、それはほとんどIT関係です。

決して一から彫刻をやってみようということになりません。

IT関係は学んでも学んでも進化が激しく、コンピュータ技術のほうがどんどん進みます。

ChatGPTや生成AIのおかげでアメリカではすでにプログラマーは必要なくなってきていますが、日本では、いまになってリカレント教育でプログラミングを学ぼうとしているのです。

日本の義務教育は中学までです。

いまはほとんど高校まで義務教育というイメージですが、不登校の高校生が12万人近くいると言われています。

勉強できない子もできる子もいます。

先生たちは、不登校でも勉強できる子には、その実力で入学できる大学への受験を奨めます。

英語ができれば、英語の配点の高い大学を受ければいいわけです。

IT技術者が30万人も不足なんて言われていますが、そもそも高校で理系・文系と分けられてしまっていて、理系の大学や学部が少ない中で、どうするわけ?

文系と理系の融合とかデータサイエンスの学科を新しくつくったとか、努力はされているのでしょうが、おそらくやってもやっても技術革新のスピードのほうが早く来るはずです。

4年間習っても、もうその技術はAIがやってくれるのでいらない、なんてことになっても不思議はないのです。

アメリカの大学でアートにチャレンジ

いつもアメリカの宣伝をするわけではありませんが、スティーブ・ジョブズ氏は大学でアートを専攻しています。

アメリカではアート専攻でもコンピュータの授業をとれます。

音楽を専攻しても、大学院でAIやロボットの分野に進めます。

大学の願書には、「自分が何をやりたいかまだわからない」という項目にチェックを入れることができます。

どの大学にも、あらゆる芸術分野の授業が用意されています。

大学で自分を試す、いい機会です。

ビジネス専攻で卒業しても、いくつかアートの授業をとっておけば、そのアートのセンスやひらめき、みたいなものを、20年後に生かせるかもしれません。

日本は早くに理系・文系に分けることをやめるべきです。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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