入学審査官が大学にいなくても大丈夫? 最新のアメリカ「大学受験」事情

世界中を飛び回るアメリカの大学スタッフたち

カンザス州のある州立大学が、私に大学のTシャツを送ってきてくれました。

私のサイズに合う、大きなTシャツです。

それがアメリカからではなくカンボジアから送られてきたのです。

どうやらその大学のAdmissions Officeのディレクターがカンボジアに住んでいるとのことで、御礼のメールを送ったらちゃんと返事がありましたが、よく考えるとEメールなんて世界のどこに送っているのかわかりませんよね。

うちのスタッフに聞いたら、アメリカの学校の事務スタッフは、キャンパスから離れたところに住んでいる人がけっこういるそうです。

アメリカの大学の願書はオンラインが主流

そもそもAdmissions Officeのスタッフは1年の3分の1くらいを学校回りに費やしています。

大きな大学ではInternational Students専門のスタッフがいて、1年のうち半年くらいは世界を飛び回っているのです。

Eメールもどこからでも送れるし、Zoomもできるので、どこでだって面接も会議もできます。

キャンパスにいる必要もなく、キャンパス近くに住む必要もないのです。

アメリカの大学の願書は、とうの昔にオンラインになっています。

とくにCommon Applicationという願書は、1つの願書で何校にも出せるので、使い勝手がいいのです。

大学は1通のApplicationにつきいくらかを支払っていると聞いています。

Common Applicationは留学生も使えるので、当研究所では重宝しています。

これを使うのに費用はかかりません。

出願料(Application Fee)は必要な大学とそうでない大学があり、50〜100ドルくらいで、もちろん学部別というのはありません。

成績表もスキャンしてオンラインで提出

願書以外に、成績表や推薦状なども送らなければなりませんので、当研究所ではFedExという国際宅急便を使っています。

これは費用が高いのです。

ただ、郵便だと、必ず着いたという保証がないので、宅急便にします。

アメリカでは書類の紛失は多々あることなので、念には念を入れておかなければなりません。

いくらこちらが念を入れても、Admissions Officeのスタッフがそもそもキャンパスにいないので、成績表をスキャンしてデータで送ってくれと大学から言われることもしばしばです。

アメリカでは、成績表をオンラインで提出するのが当たり前です。

やはりエージェントがあって、各高等学校がそこと契約を結んで生徒の成績表をオンラインでキープします。

それで願書の提出先が決まると、自動的にそのエージェントから大学に成績表が送られます。

本来なら、学校印とか校長のサインなどが必要なわけですが、そのエージェントと学校が契約しているので、本物と認識されるわけです。

高校側もいちいちサインして封筒に入れて大学側へ送る手間も省けるし、郵便代もかなり節約できます。

まぁ何といっても手間が省けるというのが一番でしょう。

きっとほかにもいろいろ生産性を上げるための工夫ができていると思いますが、これからAIがどんどん活躍するので、また違う方法が考えられていくと思います。

どこまでアナログ? 日本の大学受験

これに比べて日本の受験はあまりにも昔のままです。

共通テストなど、毎年ニュースになる大イベントです。

まぁはっきり言って、塾が儲けているシステムです。

受験料が有名私立大学の大きな収入になっているというのも何か変な話です。

しかも学部ごとに支払うので、有名大学などは1人の学生から3倍くらいの受験料を儲けるわけです。

法学部も社会学部も経済学部も受けるというやりかたで、何かがしたいというのではなくて、その大学に入学できればいいという発想です。

願書締切も郵便局の消印の日を認めるということですが、郵便局も、年賀状が減っていく中、この願書の郵送料が1つの大きな収入になっているのかもしれません。

大学受験のために、あっちでもこっちでも人の手とお金がかかっています。

人手が足りないと騒いでいますが、すべて何十年前とまったく変わっていないのです。

とても不思議です。

日本は先進国の中でも生産性が低いので有名ですが、教育の分野はとくに遅れているのではないでしょうか。

対面とオンラインを組み合わせて大学院留学を実現

アメリカの大学ではオンライン授業もごく普通に行われています。

オンラインよりも、実際に教室で授業を受けている学生のほうが成績がいいなど、いろいろな調査結果が発表されていますが、それでもオンライン化の動きは止まりません。

大学院への留学となると、1年行って、残りの1年は日本でオンラインで勉強するということも可能です。

AIの発達がすごい勢いで続きます。

なくなる仕事がとても多くなると思われます。

アメリカの大学、とくに大学院では、新しい仕事に就くための勉強をオンラインでできるように、どんな分野を開発して、どのように教えて、いかに世界中の学生を集めるか、そういうことを彼らは着々と考えています。

さて、どうなる日本の教育!


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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