アメリカの大学をめざすなら、日本の受験と同じ感覚ではダメ

留学するならTOEFL®テスト?

アメリカの大学へ進学するときに、日本の大学進学とまったく同じ考えかたで判断し実行する人が多くいます。

そういう人が必ず気にするのが、TOEFL®スコアと大学のレベルです。

いまは、TOEFL®テストの受けかたがあまりに他の試験の方法と違う(PCに向かって各々違う問題を受ける)ため、受験する人が減り、「欧米に留学する日本人が減ったのはあのTOEFL®テストの新しい方法のせいだ」と言う大学の先生がいるくらい人気が落ちてきています。

いまはIELTS™でもかまわないし、Duolingoという(私はよく知らないのですが)テストでも大丈夫です。

日本の中高生はおおむね英検を受けているので、IELTS™が日本人学生にとっては一番受けやすいテストだと思います(IELTS™の受験窓口が英検協会ですから)。

大学のレベルより学業成績のほうが重要

また大学のレベルは、アメリカ人はほとんど気にしていません。

Amazonに就職するのにコロンビア大学でないといけないなんてことはありません。

アメリカ人は履歴書に大学の成績を必ず書きます。いくらレベルが高いといわれる大学に行っていても、学業成績が悪いと、企業からよい評価を受けられません。

会社のほうも、同じ時期に一斉に入社試験をするなんてことはありません。

必要な時期に必要な人数を入社させます。

Amazonなどは、ついこの間まで毎週200人採用していました。

最近はリストラの話ばかりが出ています。

入社したからといって個人の能力が合わなかったり、会社の状況が変わるとリストラされるのです。

また、出世するには、いつかは大学院に行ってMBAを取得したり、Amazonが必要とする分野の修士号や博士号を取得しなければなりません。

日本のように、一斉に受験して一斉に入社して、みんなでがんばって、よいものをたくさん、間違いなく正確に作る、という仕事の形態は工業社会のものです。

日本はあるとき、たまたま大量のものを正確に作って世界でトップクラスの国家になりましたが、そのような日本人が得意としてきたものは、いまやAIにとって代わられようとしています。

そう遠くない将来、ほとんどAIがやってしまうでしょう。

東芝をはじめ、名だたる企業が世界のトップ50の企業からどんどん脱落して、いまやトヨタくらいしか残っていません。

まぁ、こんなことは日本の役人も教育関係者も各企業もわかっていることでしょうが、変えられないんですよね。

アメリカの大学に合格したのに学費が支払えない

お金をたくさん使ってTOEFL®テストの塾などに行って、ランクを気にして、いくつものアメリカの大学に願書を出して、いくつかに合格できたけれど、お金が高すぎて留学できない、という相談もよく来ます。

アメリカの大学の学費も高いですからね。

こういう人は、名前のある大きな州立大学が好きです。

州立大学でも各州のトップの大学となると、よほど日本の高校の成績がよくないとTOEFL®スコアが高いくらいではそうそう入学できません。

まぁ、州立でも二番手くらいなら日本人のターゲットに入ってきます。

それでも州の名前は堂々と付いているし、ランキングの何番目かには入っているとかで、こういう大学にどんどん願書を出すのです。

州立大学はあまり外国人学生に奨学金を出してくれません。

よくて5,000ドルくらいがほとんどです。

学費・寮費・食費の合計で年間60,000ドルくらいの州立大学はたくさんありますから、5,000ドルの奨学金をもらっても55,000ドルです。

大学に支払う以外に、飛行機の費用、教科書、保険、おこづかいなど10,000ドルくらいは考えておかないといけません。

合計65,000ドルです。1ドル=130円としたら845万円です。

4年間で3,500万円くらいかかります。

はじめからわかっていたのに、合格したけど払えないってどういうことかと思いますが、まぁ、日本の受験感覚でどんどん出願しているようです。

英語の勉強をしている学校では、やはりTOEFL®スコアを基準に大学リストを出すようです。

入学許可を得るために全力を尽くすのです。

成績と奨学金の関係

アメリカ人は、大学に入学してから相当な勉強をしなければなりません。

アルバイトなんかできませんので、ローンも組みます。

成績が悪くなると奨学金が出なくなるので必死です。

いいお給料を得る仕事に就くためには、いい成績を残さなければなりません。

レベルの高い大学に出願しまくって入学許可が下りてから考える、なんてことは滅多にしません。

レベルのことは気にしませんが、学費やローンや奨学金のことはとても気にします。

ハーバードから入学許可が下りたけれど、考えていたよりも奨学金が少ないという理由で他の大学に行く人もいます。

2023年9月からの留学に向けて

さて、合格したけどお金が払えないとか、どこも合格しなかったとかいった相談の多い時期です。

みんな「入学する」ことばかり考えて行動してきた結果です。

当研究所では、2023年度からアメリカに留学する人たちの合否結果がそろそろ出そろってきています。

当研究所で半年から1年かけて準備してきて、結果が出てくるのがいまごろです。

その学生が入学後、なんとか授業についていき、よい友だちができ、よい成績が残せるか、費用的にやっていけるかどうか、といった点を重要視して大学を選んだり、いろいろな勉強をしています。

やみくもに願書を出すわけではありません。

アメリカ人の考えかたや仕事の選びかた、生きかたなども教えています。

多くの人がたくさんの奨学金を得て、複数の大学から入学許可を得ています。

日本の教育システムから抜け出して自分ひとりで勝負するときが迫っています。

楽しみです。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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