女性の留学 -第1回- 留学とは何か

女性の留学

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留学とは何でしょうか。その一つの答えがこのコラムにはあると思います。留学は日本人にとって、かつてはエリート中のエリートを育て、外国の先進文化をとり入れるための国家的な事業でした。

しかし、近年のように、その意思さえあればほとんど誰でも大学で学べる時代が到来すると、留学についての意識も変化してきました。

おおまかにいって、やはり本人に意思さえあれば留学は可能です。これは、今の日本ではほぼ定着した留学観といっていいでしょう。日本の大学で学ぶことと、外国、とくにアメリカの大学で学ぶことが同レベルの選択肢として並ぶようになりました。

教育上の観点からみれば、これは歓迎すべきことなのですが、ポイントをはずすととんでもない選択をしてしまうことになります。

一つには、日本では進路指導の際、偏差値が有無をいわせぬ基準となるため、アメリカの大学も同じようなものだろうという先入観から、英語力をはかるTOEFL®という共通テストの成績で留学先の大学を選ぼうとしてしまうこと。

また、もう一つには、これはもうお話になりませんけれど、たとえば日本の受験地獄を避けてアメリカでのびのび学びたいだとか、日本で大学受験に失敗したから一年くらい留学でもしてみようというような逃避的な姿勢で行う留学。

最近では安易な「語学留学」や「短期留学」が横行し、アメリカで学ぶということが一種のファッション性を帯びてきている一面さえ見られますよね。

現代では、あらゆる手段で情報伝達が迅速におこなわれていますから、日本の大学でも、内容的にいってアメリカに渡らなければ学べないという学問や技能は、ほとんどありません。

英語そのものを学ぼうという場合でさえ、アメリカの英語学校と日本の英語学校とでは、内容的にまったく同じレベルなのです。

同じレベルでもアメリカで生活すれば、日常困らないだけの会話力はつくはずだからそれだけでもアメリカの英語学校のほうが得だなんて考えるのは、まさに浅知恵というもの。

その程度の会話力では大学の先生の話も理解出来ないし、教科書も読みこなせない。もちろん会社の仕事では全く役に立ちません。そんな点に留学のメリットはないのです。

ではどんなメリットがあるのかということは個人個人の人生で千差万別。その共通項をまとめるとどうなるか、何が見えるのかを本コラムでは追及していくことにしています。

勘違いしてもらっては困るのは、このように私が留学の意義を説いているからといって、それがすなわち日本の教育程度を低く評価するものではないということです。

大事なことは、教育には一人一人にふさわしい道があるということです。この点が最も肝心なのです。

それだけに、留学を希望する人は、一人一人、各人の学力、経歴、個性や気質、体力、健康状態、家族や家の事情など、あらゆる要素を考慮し、留学の時期、方法を含め、慎重に学校選ぴを進めなければなりません。

学校を選ぶということは自分の生き方つまり将来の自分を選ぶということです。すなわち人生を選ぶということです。

いま日本では「留学ブーム」といわれるほど留学が注目されていて、注目されること自体はおおいにけっこうですけれど、留学が、すなわち教育が「ブーム」であっていいはずはありません。

もちろん国際化社会の中でライフスタイルが変化しつつあるという大きな流れの中で、留学がより多くの人たちに注目されはじめているのは当然の傾向であって、これは流行り廃れの問題ではありません。

さてこのようなわれわれ日本人にとって、留学とは何でしょうか。私たち日本の女性にとって、留学とは何でしょうか。

今回は、留学の細かいノウハウや事務的な段取りを伝えるよりも、まずは絶対に勘違いしてはならない留学についての基礎的な知識を伝え、そしてもっと担本的な次元で留学の本質に迫ってみたいと考えました。

留学が人生に大きくかかわるものであるがゆえ、留学とは何かというこの問は、私自身の人生に向けられました。

まるでお姫様みたいに過保護に育てられた田舎の一人娘が留学を決意し、留学し、帰国して「栄陽子留学研究所」を設立した物語。

そして沢山の人の留学をお手伝いしながら、色々なケースを見て、その間、結婚や子育てなどもこなし、とうとう留学研究所のスタッフに夫をも巻きこんで、今は、もっともっと多くの人に留学についての理解を広げたいと必死になっている、そんな私の半生。

コラム書いていると、ずっと留学について語りながら、それと同時に私の半生記が出来上がりつつあります。

しかし、ここには栄陽子という一個人にとって留学とは何であったかということが書かれているのではありません。

留学とは何かを理解するためのヒントが書かれています。そしてその答えは、あなた自身が出さねばなりません。これは留学に固有の流儀なのです。

そしてこのコラムの連載の中で、あなた自身の答えが見いだせるはずです。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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