栄陽子 留学講演会レポート【前編】

なぜ今、アメリカの大学で学位を取るべきなのか? 激動の時代を生き抜くグローバル人材の本質

日本の教育の枠を飛び出し、自立したグローバル人材になるための本質について。

今の日本に閉塞感を感じている若者や、我が子の将来を真剣に案じている保護者の方に、まず知ってほしいこと。

それは、語学留学のような「数ヶ月行って英語を喋れるようになりました」というレベルの経験では、これからの激動の時代を生き抜くことはできないということです。

私たちが推奨しているのは、アメリカの大学に4年間 ― あるいは大学院 ― に身を置き、現地の人々と対等に競い合いながら学位を取得する「正規留学」です。 

アメリカの大学での日々は、単に英語を学ぶ場所ではありません。自分の意見を持ち、それを論理的に相手に伝え、多様な価値観の中でサバイバルしていく「本当の生き抜く力」を養う場所なのです。

日本のレールから一歩踏み出し、世界を舞台に自分の足で立つための第一歩、それが正規留学の本質です。

4年制大学(ユニバーシティ)とコミュニティカレッジの大きな違い

アメリカにある2つの高等教育機関の仕組みと、それぞれの役割を正しく理解すること。

アメリカの高等教育を理解する上で、まず外せないのが、「ユニバーシティ(4年制大学)」と「コミュニティカレッジ(2年制大学)」の違いです。

ユニバーシティは、学問の研究や専門知識の深い探求を行う総合大学であり、卒業すれば学士号(Bachelor's Degree)が取得できます。

これに対してコミュニティカレッジは、地域住民への教育機会の提供や、職業訓練、そして4年制大学へ編入するための基礎課程を学ぶ場所です。

どちらが良い・悪いではなく、自分の目的や現在の学力、そして予算に合わせてこれらを戦略的に組み合わせることが重要です。

コミュニティカレッジで最初の2年間の費用を抑え、後半の2年で名門4年制大学へ編入するというルートも、アメリカでは非常に一般的で賢い選択肢とされています。

留学生を待ち受ける、入学後のリアルなスケジュール

アメリカの2期制(セメスター)の仕組みと、日本人が直面する最初の壁について。

アメリカの大学は、日本のような4月入学ではなく、基本的には「9月(秋セメスター)」から新しい学年がスタートします。また、もう一つの大きな入学時期として「1月(春セメスター)」が用意されています。

日本の高校を3月に卒業した学生の場合、半年間の準備期間を経て9月に入学するのが王道ですが、1月入学を目指すケースもあります。 

しかし、現地に一歩足を踏み入れた瞬間から、日本の生ぬるいスピード感は一切通用しなくなります。オリエンテーションが始まったかと思えば、翌週からは膨大なリーディングアサインメント(読書課題)が容赦なく課される毎日の始まりです。

この「セメスター制」の怒涛のスピード感にどれだけ早く身体を慣らせるかが、最初の数ヶ月を乗り切る最大の鍵となります。

最初の4ヶ月を生き抜くために!「シラバス」の読み込みと試験のサバイバル術

成績を大きく左右する「シラバス」の重要性と、過酷な試験期間のサバイバル術について。

アメリカの大学生活において、自分の命の次に重要な(!)書類、それが「シラバス(講義要綱)」です。

最初の授業で教授から配られるこのシラバスには、その学期で行われるすべての授業スケジュール、提出すべき課題の締め切り、そして「何をどう採点するか」という評価基準が1%刻みで細かく書かれています。

アメリカの学生は、このシラバスを穴が開くほど読み込み、自分のスケジュール帳に全ての締め切りを書き写すことから始めます。

なぜなら、アメリカの大学では「中間試験(ミッドターム)」や「期末試験(ファイナル)」の点数だけでは絶対に良い成績は取れないからです。日々の宿題、クラスでの発言、小テストの積み重ねがすべて評価されます。

試験期間になれば、図書館は24時間眠らない戦場と化します。そこで限界まで自分を追い込み、課題をクリアしていくタフさが求められます。

早く卒業するには? サマースクールと日本からの単位互換を利用!

夏休みに他の大学で取った単位を自分の大学に移行できる、アメリカ特有の「サマースクール」の仕組みを解説。

また、日本の短大や4年制大学、さらには放送大学から単位を移行させて、留学費用を賢く節約しながら「早く卒業する」ための具体的なルールを紹介。

日本人がアメリカ大学の「一般教養」を受けると圧倒的に有利?!

1月から5月までの「春セメスター」が始まると、また心機一転、まったく新しい5科目の授業が始まります。この時期から新しく入学してくる学生もたくさんいます。

ここで、日本人が取るともの凄く有利な科目を教えましょう。

アメリカの大学の1、2年生が受ける一般教養(リベラルアーツ・エデュケーション)の科目は、主に次のようなものがあります。

  • Mathematics(数学)
  • Music(音楽)
  • Art(芸術)
  • Psychology(心理学)
  • Chemistry(化学)
  • Public Health(公衆衛生学)

この中でも、日本人が受けると圧倒的に有利なのが "Mathematics(数学)" です。

アメリカの大学の一般教養で習う数学、たとえば "College Algebra(大学代数学)" などのレベルは、実は日本の中学校の終わりから高校1年生くらいの内容なのです。

因数分解とか、そんなところです。

だから、私たち日本の学生が向こうで数学の授業を受けると、英語のハンデなんて関係なく、最初から最後まで満点に近い成績(A)が簡単に取れます!

ただ、ここで一つ注意が必要。アメリカの数学の試験は、日本みたいに「計算の答えが合っていれば丸」という単純なものじゃありません。「なぜその答えになるのか、途中の証明プロセスを英語で論理的に説明しなさい」という問題が出るのです。

いくら数学が得意でも、その説明を白紙で出したら点数はもらえません。だけど、教科書に書いてある証明の英語フレーズをそのまま2〜3行覚えて、試験でパッと書けるようにしておけば、誰でも確実に一番良い成績が取れます。

これは、留学生がGPA(評定平均)をグッと引き上げるための強力な味方になります。

夏休みをフル活用!「サマースクール」で早く卒業する仕組み

アメリカの大学は、5月の半ばに「春セメスター」が終わると、そこから8月の終わりまで、まるまる3ヶ月半という途方もなく長い夏休みに入ります。

この長い夏休み、ただ日本に帰って遊んでいるのはもったいない。 そこでぜひ活用してほしいのが、「サマースクール(夏季集中講座)」です。

これは、夏休みの期間中(主に6月〜7月)に、5週間から8週間ほどの短いサイクルで授業をギュッと凝縮して行う仕組み。

通常は4ヶ月かけて学ぶ内容を毎日2〜3時間かけて一気にやるからハードだけど、ここで1〜2科目をクリアすれば、それだけで「3〜6単位」を上乗せできます。

しかも面白いことに、自分が通っている大学以外のサマースクールに参加して単位を取っても、自分の大学の単位として認めてもらえる(トランスファーできる)。

たとえば、自分が田舎の小さな大学に通っていても、夏休みだけはボストンのハーバード大学や、ニューヨークのコロンビア大学がやっているサマースクールに行って、憧れのキャンパスで授業を受けるなんてことも普通にできる。

そこで取った単位を持ち帰れば、卒業に必要な単位がどんどん貯まって、結果的に「半年から1年早く卒業する」ことが可能になります。

日本の短大・4年制大学・放送大学から単位を移行する裏ワザ

さらに、留学費用を賢くセーブしながら早く卒業するための、もう一つの大きな武器が「単位互換(トランスファー・クレジット)」です。

もしみなさんが、日本の短期大学や4年制大学に少しでも通っていた、あるいは卒業している場合、日本で取った単位をアメリカの大学の単位として認めてもらうことができます。

「日本の大学の一般教養で取った『哲学』や『体育』の単位を、こちらの大学の卒業単位に組み込んでください」と申請するのです。これが認められると、アメリカでゼロから120単位を取り直す必要がなくなります。

日本の大学で取った単位の量によっては、アメリカに行ってからわずか1年半や2年で、現地の4年制大学を卒業してしまうことだって可能です。

「じゃあ、大学に行っていない高卒の人は使えないの?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。

日本にいる間に「放送大学」などを利用して、いくつかの科目の単位をあらかじめ取っておく。そして成績証明書をアメリカの大学に提出して単位を移行させる、という非常に賢い方法もあります。

このように、アメリカの大学は「どこで学んだか」ではなく、「何をどれだけマスターしたか(単位)」をとても柔軟に見てくれます。サマースクールや日本の単位移行を上上手く組み合わせることで、時間と留学費用を劇的に節約しながら、早く卒業のゴールへたどり着くことができるのです。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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