世界情勢が不安定ないまだからこそ。若者よ、海外に出て行こう

減り続けるアメリカへの留学

アメリカに留学している日本人の数について、ある放送局から問い合わせがありました。

そもそもマスコミは最近留学に何の興味も示していませんので、へぇーと思って、久しぶりにIIEという留学生のことを調査している機関が発表している数字を見て、あらためて驚きました。

日本人留学生が減っているとは思っていたものの、2020〜2021年は11,785人です。

これは大学1年生・2年生・3年生・4年生および大学院生を含む数で、単純に6で割ったら1学年1,900人くらいになります。

2020年の数ですから、2021年のコロナ感染者だらけの中では、もっと減っているはずです。

日本がアメリカへの渡航を、最大危険レベルに引き上げたのはいつでしたか。

もっともコロナに関係なく、日本人留学生の数は減り続けているのです。

ピークは1997年で、47,073人と出ています。その後、ずっと減り続けているのです。

日本が貧乏になったのが原因?

原因は何でしょうか。

最近、急に言われだした「日本は貧乏になった」というのと関係があるように思います。

アメリカの学費は毎年上がり続けていて、今年はついにハーバード大学が75,000ドル、UCLAが58,000ドルです。

これでは、日本で2,000万円の年収をもらっている人でも子どもを留学させられません。

税金や保険、介護保険などさまざまな名目で国や地方自治体にお金を徴収されますから、実質のお金は3分の2から半分くらいになってしまいます。

それにそもそも、2,000万円もらっている人がたくさんいるわけではありません(当研究所では、放送大学の単位活用や奨学金の獲得などいろいろな方法を駆使して留学を実現させていますが)。

人と違う道を進めない日本人

日本の受験熱も相変わらずです。

塾の広告では、東大や慶應の合格者の顔と名前が載っていて、まるで人生、これで勝ったといわんばかりです。

実際にこれで勝った、あとは楽勝と思う若者も多いのです。

また大学も、「就職に強い」などといった広告文句を大きく出しています。

就職のために大学に行くという目標設定がされているのです。

かくして日本の若者には、高校3年生なら受験を、大学3年生なら就職を、ということで、それ以外の道はないのです。

みんな同じほうを向いて生きるのが当然で、違う方向を考えるなんてことは、とんでもなく無謀ですし、自分で歩む道を考えなさいなんて親からも言われません。

あっても、理系か文系か、国立か私立か、地元か東京か、といった程度でしょう。

安全・安心な日本から出たくない

60年代・70年代にあった「何でも見てやろう」みたいな風潮は若者にはありません。

そういえばヒッチハイクなんて言葉も聞かれなくなりました。

60年代から70年代初めまで1ドル360円でしたが、若者は世界に向かってもっと元気だったように思います。

日本の国は安全・安心で清潔。食べものは高いものから安いものまで、世界のものが食べられて、コンビニは超便利。

外国に行くと怖い、危険、まずい、不潔。

日本でいい大学に行っていい会社に入るのが最も安全・安心という風潮が蔓延しています。

さてさて、ここでロシアがついに戦争を起こしてしまいました。

日本の若者はウクライナという国を知らなかったんじゃないかしら。

ソビエト連邦の仲間だったこともあります。

地理や歴史の授業でかすかに覚えているかもしれません。

ヨーロッパは自国の鼻の先で起こっている戦争にもう大パニックです。

第三次世界大戦が起こるかも、と思っている人もいるようです。

ロシアが原子力発電所を占拠することで、核弾頭を使わなくても原子力発電所に一発ミサイルを撃ち込めばおしまい、ということが知れ渡りました。

日本にどれだけ原子力発電所がありますか? 日本が安心安全の国だなんて思わないほうがいいのです。

一寸先はどこでも闇です。

通貨より価値の高いローレックス

昔から世界に根を張っている華僑の人たちは子どもを3人もって、動産・不動産・海外教育を1人ずつに分けたそうです。

不動産を継ぐ、動産は金、宝石類等です。

世界のほとんどの国は、何時間か行けば国境になって自国のお金が使えなくなるのです。

昔、香港では「最後に船に乗るにはローレックス」と言われていました。

国を脱出するとき、ローレックスが自国の通貨より価値があるのです(いまの香港の若い人たちに言うと笑いますが・・・)。

ローレックスがいまだ高い時計で、金の価値が上がってルーブルの価値がなくなりつつあるというのは、このことの象徴で、100年たっても同じなのです。

そして、子どもを1人海外の大学に行かせる。そこで生の情報を得たい。

友人・知人をつくってずっと情報源にしたい。いざというときに頼れる外国人が必要。

世界中どこに行ってもチャイナタウンがありますが、この華僑の人たちの長い長い知恵はいまでも十分、有効です。

日本の若者よ、海外をめざしましょう。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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