変わりつつある大学受験。日本の大学の未来はどうなる?

卒業がやさしく、入学もやさしい日本の大学

日本の大学受験において、一般入試ではなく推薦入試やAO入試で入学する学生が50%を超えて、(9月〜12月に実施・合否が出る)年内入試が主流になりつつあるという新聞記事がありました。

また、この推薦入試などで入学した学生は、一般受験の学生より学力不足の者が多く、入学後に補習を受けているそうです。

人口が減るにつれ、教育産業もさまざまな見直しが行われるものと思います。

入学もやさしく卒業もやさしい、となってしまうと、日本はますます世界から取り残された国になってしまいます。

大学生への教育。日米の違い

そもそも日本の大学では、大学の先生が教えることについて、きちんとした訓練を受けていません。

アメリカの大学では大学院生がTeaching Assistant(TA)やResearch Assistant(RA)をしますので、リサーチの仕方や、大学生への授業、ディスカッションのさせかたなど、いろいろ学ぶのが普通です。

日本では、リサーチは研究室で先生と一緒にするのでしょうが、大学生に教えることはできません。

アメリカの大学では、学生から先生への評価制度もあり、そもそも大学の先生の立場は不安定です。

かなり長い間勤めて、学生や大学からもよい評価を受け、テニュアという資格を勝ち取ります。これで突然、クビになるのはなくなるのです。

アメリカの入試システム。私立大学の場合

入学の方法はじつにさまざまで、私立はそれこそ各大学独自の方法を取り入れて、書類審査をします。

Admissions Officeという入学審査をする事務所には、小規模な大学でも10人ほどのスタッフがいます。

教えたり、他のことをすることはありません。学生獲得の専門部署です。

その大学にとってよいと思われる学生をどれほどうまく入学させられるか、というのが彼らの仕事の中心です。

そういう意味では広報・営業も兼ねています。日本にはこういう部門がないように思いますが……。

Admissions OfficeがあってのAO入試ですが、日本のAO入試はアメリカの大学とどこか異なるようです。

アメリカの入試システム。州立大学の場合

アメリカの州立大学は、各州独自で、いろいろな方法をとって入学制度を設けています。何年かに一遍は見直しもします。

カリフォルニア州のASSIST制度は有名ですが、たとえばウィスコンシン州になるとUniversity of Wisconsin, Madisonというのが州内の高校でトップクラスの生徒が入学する大学です。

ほかにもUniversity of Wisconsin, Green BayやUniversity of Wisconsin, La Crosse、University of Wisconsin, Milwaukeeなどいくつもあって、そのどこかの大学に入学して、1年か2年後にUniversity of Wisconsin, Madisonに編入することも、書類審査で簡単にできます。

また、各大学を卒業して、よい成績であればMadisonの大学院に入学できますし、トップクラスの成績であれば学費免除でTAやRAになることができます。

最近では、アイダホ州やミネソタ州の州立大学が、州内の高校と連携して成績優秀者をピックアップし、大学側からこっちの大学に来ないか、と誘いをかける方式を取り入れています。

大学に出願するか、学部を受験するか

またアメリカにはCommon Applicationというものがあって、オンラインで1つの願書に記入すれば、1,000校以上の大学に、この願書で出すことができます。

そもそも学部ごとに願書を出したり受験料を支払うなんていうのはアメリカでは論外です。

1つの大学に、学部ごとに2つも3つもの願書を出す日本って、とてもおかしいのですよ。

世の中、理系・文系に分けて解決するようなことはもうないのです。工業生産時代ではないのですから。

3つの大学に2つずつ願書を出して20万円近くお金を支払うなんて、よく日本の親は何も言わないと思いますよ。

アメリカでは、各大学への出願料は、1校せいぜい50ドルで、5校出しても30,000円程度です。

出願料が免除される仕組みもいっぱい考えられています。

大学が教育の終着駅ではない

2030年までに、いまある仕事の半分はなくなるとか、いまの小さな子どもが働くようになる頃は、60%はいままで人類が考えたことがなかった仕事に就くとか、いろいろ言われています。

そのため欧米では大学や大学院で新しいことを学べる方法がどんどん準備されていて、大学を出れば教育が終わりなんてことはあり得ない世界が近づきつつあるのです。

先日、アルカイダのトップが殺されたように、ドローンで音もなく空から近づいてピンポイントで敵を殺すなんて、本当に驚きです。

今回のウクライナの戦争のことで、軍事技術がますますIT企業の手に委ねられ、超未来の世界があっという間にやってきそうです。

日本はどんどん立ち遅れていきそうですよ。

同じように受験をして、同じように就職して、それが人生の目的のように思わされている若者がいまもどんどんつくられているのです。こわいこわい。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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