緊迫が続くパレスチナ情勢。声を上げるアメリカの学生たち
ハーバード大の学生デモ
ハーバード大学などの学生が、反イスラエルのデモを行い、ガザを守れと叫んでいます。
他の大学キャンパスでも同じことが起きています。
反対に、権力と財力をもった大人たちが、そんなことをする者は、自分たちの会社には入社させないとか、ロースクールを出てもどこのローファームにも入れないとかと怒って、デモに参加した学生たちの名前を調べたり公表したりもしました。
大学への大口寄付者からは、大学は何をやっている、今後は寄付をしない、早く声明を出せと脅しもありました。
慌てて声明を出した学長もいます。もちろん、反ユダヤでも反パレスチナでもないという声明ですが。
ある程度の年齢の人たちは、この学生の騒動を見て、9.11を忘れたか、と思ったでしょう。
もっと年齢の高い人たちは、ホロコーストを忘れたか、と思ったことでしょう。
フリースピーチの精神
欧米の人たちにとって、ナチスの犯したホロコーストという罪はいまだに心に刺さっていて、おいそれとユダヤ人を批判するのはある種のタブーでもあります。
それを天下のハーバードの学生がやるか、若いやつらは何を考えている、とまぁ、どこの国でも必ずある、若い人たちと権力側に座っている人たちとのせめぎあいです。
権力側にいる人たちは、就職させない、なんて、ちょっと大人気ないことを言うのですから、アメリカはいつも言いたい放題の国です。
これだけみんなが言いたい放題言っているのに、それでも国が回って国民が食べていけて、おまけに相変わらず、膨大な数の移民(2022年は100万人)・難民を受け入れていて、もうダメだ、と言いながらも、なんとか食べさせ、一歩ずつアメリカ人として暮らしていけるようにするのですから、本当に懐の大きな国です。
アメリカにいるユダヤ人
いまだに終わりそうにない、イスラエルとハマスの争いですが、イスラエルは人口が約950万人で、兵士の補充が大変です。各国からユダヤ人の若者が祖国のためにやってきているようですが、それでもいずれ兵士が足りなくなる可能性があります。
アメリカにはユダヤ人が750万人もいます。
日本にいるアメリカ駐日大使も、いまやけっこうテレビで見るブリケン国務長官もユダヤ人です。
アメリカの政治であれ経済であれ、権力側にいる人たちの中にはユダヤ人がそれなりに多いのです。
こんなことハマスの人たちは知っているはずなのに、いざ攻撃したらアメリカをバックにつけるイスラエルがどんなことをしてくるかわかっているはずなのに、どうして、あんな攻撃をしたのでしょう。
たいして国際情勢を深く知るわけでもない私には、イランが、アメリカに意地悪をするために仕組んだように思えてしまいます。
若者たちが元気だった時代
私がアメリカにいた1970年には、イランの学生がたくさん留学してきていました。
パーレビ国王の独裁で苦しんでいる人たちもたくさんいたのでしょうが、私の目に入ってきたのは、華やかで陽気で、キラキラしたイランの若者たちでした。
そして大学ではベトナム戦争反対の運動が盛んでした。
あのときもアメリカの若者は権力に立ち向かっていたのです。
いまでいうLGBTQのデモもやっていました。もう50年以上前ですよ。
留学生たちは希望に燃えて、勉強し、青春真っ只中でした。
ベトナムからの留学生もいました。
親と連絡がとれなくなってしまい、みんながカンパをしたのを覚えています。
いつしかベトナム戦争も終わりベトナムもそれなりに豊かな国になりつつありますが、日本ではベトナム人の技能実習生の問題が起こっています。
イランはいつの間にか革命が起こり、とても暗い国になってしまいました。
そういえば1960年代から1970年代にかけては、日本の若い人も元気でしたね。
学生運動も盛んだったし、ベ平連というのもありましたね。
その後、日本はバブルで有頂天になって、バブルの後、ちょっと冴えない国になって、それで学生も元気ないのかしら。
移民とアメリカンドリーム
アメリカには毎日、移民が押し寄せています。
メキシコ側から来るので、当然、中南米の人がたくさんいるのですが、驚くなかれ、中国人もロシア人もウクライナ人もいるのですよ。
みんな飛行機でメキシコまでやってきて、国境を越えようというのです。
言いたいことが言えるアメリカ、がんばればまだアメリカンドリームが手に入るアメリカ。
そのうちイスラエルの人もガザの人も、どこからともなくやってくるかも。
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著者情報:栄 陽子プロフィール
栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家
1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。
『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。