アメリカでは当たり前なのに、日本で「飛び入学」が普及しないのはなぜ?

できる子は嫌われる?

最近の日本経済新聞の記事によると、大学への「飛び入学」が日本で制度化されたのは1997年で、もう25年経ちますが、いままで受け入れたのは8大学のみ。

2022年度は全国で7人だけだそうです。

そういえば、初めて千葉大学へ飛び入学した人が、いまはトラックの運転手さんをやっているという記事が前にありました。

大学院に進んで研究職に就いていましたが、とても得られるお金が少なく、家族ももてないとか。

いまは、ちゃんと稼いで生活できているということです。

別の記事で、小学生のよくできる子どもが、できるがゆえに学校の先生から嫌われて、とうとう小学校に籍を置いたまま、塾と家庭で勉学を続けているという話がありました。

あまりに異常な社会ですよ、日本は。

文部科学省や学校教育に携わる人々が、こういう異常さに気づかず、大学院に行ったら仕事上不利になるとか、みんな平等にとか、飛び級するよりも勉強する時間をかけて偏差値のより高い大学へ行くほうがいいとか思っているとしたら、もうこの国の未来はありません。

個性を伸ばして、なんて話はウソ。平等もウソ。

すべて本音と建て前が違いすぎます。

高認をパスしてアメリカの大学に飛び入学

アメリカでは飛び入学なんて当たり前。

よりできるから、成長が早いから、人生すべてうまくいくなんてだれも思っていませんよ。

「みんな違うからいいじゃないか」というのが彼らの考えかたです。

どこの学校にも、小学校から大学まで、飛び級した生徒・学生が数人はいるものです。

日本人が飛び入学しようと思ったら、まず学校で反対される可能性が大きいのです。

ましてアメリカの大学に行くのに飛び入学なんて考えられません。

当研究所では、毎年、ほんの数人ですが飛び入学でアメリカの大学に入学する人がいます。

日本の高認(高等学校卒業程度認定試験)を受けるのです。

当研究所には、帰国子女などで日本の学校に合わないという相談がよくあります。

高校生の場合、義務教育でもないので居場所がありません。

16・17歳でブラブラしているわけにもいかず、せいぜい通信教育を受けるくらいです。

毎日、大きな子が家にいるとお母さんも困ってしまいます。

3食食べさせなければならないし、日本の大きくないマンションでは、なかなかむずかしい。

そこで私が思いついたのが、高認を受けてアメリカの大学に行くという方法です。

高認は日本の中学校を終えたくらいの能力で十分パスすることができます。

みんな試験というと何か腰が引けてしまいますが、そんなことはありません。

本当に簡単に合格できるのです。

高認をパスしても日本の大学は受験できない?

この高認ですが、とてもいい制度だと思うのですが、ここにまた、大きな落とし穴があるのです。

日本独特の考えが象徴されたようなルールです。

高認は16歳から受けていいのですが、合格しても18歳にならないと日本の大学を受験してはいけないというものです。

笑っちゃいませんか?

飛び級を前提としたものでなく、あくまで高校を終えた能力のある者を認める、という主旨だからでしょうか。

合格したんだから、どう使おうといいではありませんか。

アメリカにもある。高認と同様の試験

もちろん、アメリカの大学はそんなことは言いません。

アメリカにもGEDという高認と同じ仕組みのものがあります。

文部科学省は合格証書と成績表は発行してくれますので、それに英訳をつけて願書と一緒に出します。

アメリカの大学から「これは何か」と言ってきますので、説明をします。

もちろん、18歳でないと日本の大学は受けられない、なんて話はしません。

きっとアメリカ人は理解できないと思います。

日本の変な平等主義の恥をさらすようなものです。

いままで、この方法でたくさん願書を出していますが、拒否されたことはありません。

どうして、こんな違いが出るのでしょうか。

18歳でアメリカの大学3年生に!

もっとおもしろい話があります。日本の放送大学のことです。

文部科学省がやっているものなのに、あまり日本では知られていません。

この放送大学で取得した単位をアメリカの大学に持って行けるという話は何度も書いています。

30単位ほど取得するのに20万円くらいしかかかりません。

今年、ある学生が、勉学したい分野がアメリカの大学院にしかないとわかり、当研究所でいろいろアドバイスした結果、高認を受けて、高校を退学し、放送大学でなるべく早く単位を取得してアメリカの大学に編入しようということになりました。

1年半で何とか移行できる上限の60単位をめざします。

おそらく彼女は18歳で、アメリカの大学に3年生として編入できるはずです。

大学で2年、大学院で1年半から2年の留学で、彼女のめざすものは一応完結でき、親も3年半ないし4年の留学費用で済むのです。

こういう合理的な考えをもつ人がもっと出てこないと、本当に日本はガラパゴスになりますよ。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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