第四次産業革命が突きつける日本の教育の限界

3Dプリンタで車を製造

3Dプリンタの話をしばらく聞かないと思ったら、何とボストン郊外にでっかい工場があるというではありませんか。

そこでは、製造ラインの一方から鉄鋼を入れると、出口から車のボディができあがって出てくるということです。

3Dプリンタで家も作れるという話がありましたが、本当にどんどんそれに近づいてきているのですね。

昔は、1つの自動車工場が車全体を作っていたのですが、どんどん下請けができて、海外に部品工場ができるようになって、それがコロナで流通が止まって部品が届かなくて、車だけでなくトイレまで設置できないなんて話もありました。

でも、もうすぐそんな話もなくなる可能性があるわけです。

この工場の3Dプリンタは、車のボディだけでなく医療用のインプラントから家電製品の部品まで、ソフトウェアをちょっと変えれば、何でも作れるそうです。

アメリカのベンチャーキャピタルも競って投資をしていて、こういう工場がどんどんできつつあるそうです。

そうなると、いろいろな部品を生産する工場を東南アジアやインドに作っても、全部淘汰されてしまう可能性があるわけですよね。

運ぶ必要もないから船やトラックの需要もグンと減るわけです。航空貨物も。

生成AIの衝撃

おまけに、いま流行りのChatGPTですよ。

若き社長が日本を訪れましたね。

すでに日本では100万人が利用しているということですが、もっともっと増えるでしょう。

Googleのトップがその昔、必ずGoogleの検索エンジンを超えるものが出てくると言っていましたが、まさに出てきてしまったわけです。

ChatGPTだけでなく、他でもどんどん同じようなものを作り始めていて、いまや、大規模言語モデルLLMと呼ばれるAI言語システムを開発しているところは10を超えたということです。

イーロン・マスク氏も乗り出しましたね。

ChatGPTに頼めば、プログラムも作ってくれる、論文も書いてくれる、何でもしてくれるので、プログラマーなんていう仕事もアメリカではどんどんなくなっているのです。

代わりに生成AIを訓練して、回答するコンテンツの質を改善させる仕事が注目を浴びています。

要は中身の問題なので、コンピュータ・サイエンスの人ではなく、歴史でも人類学でも言語学でもあらゆる分野の専門家が、どんどん生成AIを改良するということで、プロンプト(指示)エンジニアリングと呼ばれているそうです。

年収がとても高く、30万ドルはもらえるそうですよ。

もちろん、年齢に関係なく。

この3Dプリンタと生成AIによって、すでに第四次産業革命が起こっているのです。

ものすごい速さで、世界は変わることになります。

どうする? 日本の教育

さて、日本はどうする……。

ついこの間も、いい気候の中を、黒いスーツを着た若い男女がたくさんの固まりになって歩いていましたよ。

テレビや新聞のニュースでは、一流企業の入社式が紹介されていました。

「自分で考えて仕事に取り組んで」なんて社長がスピーチしていましたが、同じ服を着て、キチンと座って社長の話を聞かせながら「自分で考えて」と言うのがそもそもおかしくないかしら。

おまけに、3年以内に30%の新入社員が辞めるそうです。

まぁ、どこの国でもこんな入社式もなければ、同じ真っ黒な服を着てまとまって歩いているなんてことも、まずないですよ。

こういう風景を、どこかおかしいと思わない人たちが普通なのですから、本当にどうする日本……。

おそらく10年後くらいには、もう学歴もたいして必要じゃなくなる可能性があるのですよ。

大学の入学式で、「ChatGPTでレポートや論文を作らず、自分で深い考察をする人になってください」というスピーチがありましたが、はてさて、人間は楽なほうがいいですからね。

頭の中も正解を求める勉強より自分で考えるほうが脳にはきついから。

でも、正解を求める日本の教育では、とても、もう今度の産業革命についていけませんよ。

本当にどうする日本……。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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