みんなと違う道を進むのはダメなこと? 留学を阻む日本の教育者たち

放送大学で科目をとるのっておかしなこと?

放送大学でどんな科目をとればよいのか、という高校3年生からの相談で、いろいろ話をしていくうちに、現在通っている高校の先生に「放送大学の科目を受講するなんて、お前はどうかしているのか」と罵倒されたそうで、涙を流しました。

私は、最近の大学の学費高騰を受け(とくにアメリカ)、便利で費用が安く、よいクラスを設けている、放送大学(文部科学省と総務省の所管)の科目の受講を、長い間勧めてきています。

幸いなことにアメリカの大学は、他の大学の単位を60単位まで認めてくれるので、これを放送大学で取得してしまうと、2年でアメリカの四年制大学を卒業できます。

留学に立ちはだかる「費用」の壁

費用や学力の面で、多くのエージェントはコミュニティ・カレッジ(二年制の公立大学)への留学を商品として売っていますが、寮のないコミュニティ・カレッジは、アパート代など生活費に多大なお金がかかって、卒業できなかったり、卒業に3年かかってお金が尽きてしまったりということが多々あります。

アメリカに留学して短大卒では、その後の仕事に就くのもなかなかむずかくなります。

また、日本学生支援機構からお金を借りて留学したいという相談もよくありますが、18歳のときから大きな借金をすることは勧められません。

ましてや経済が右肩上がりの時代であればともかく、就職後のお給料がどんどん上がるという保証もない中で借金を返していくのは大変なことです。

アメリカの大学を卒業すると、そのままアメリカに残ってインターンをしたり、他の国で働いたりするチャンスもありますが、そういった選択肢も狭められてしまいます。

ともかく借金を返すということが求められるのです。

その点、放送大学は1科目(2単位)の授業料が11,000円で、科目履修という制度があって、自分に必要な科目だけをとって、その単位をもって留学することができます。

留学という進路を認めない先生たち

このような便利で安価な、しかも文部科学省が認めている大学のクラスを受講することを罵る高校の先生って、いったい何なんでしょう。

九州あたりの県で1、2を争う進学校で、「日本の大学を受験せずアメリカの大学に進学する」と言うと、「夏のゼミには出るな」とか、「どうして日本の大学を受けないんだ」とか、生徒に嫌味を言ったり嫌がらせをしたりする先生がいることをよく耳にします。

高校3年生の、まだ完全に大人になりきれていない彼らは、泣いているのですよ。

ほかのみんなと違う道を選んだ生徒に対しては、励ましの言葉があってしかるべきなのに、馬鹿にしたり、みんなと同じことをしないことに対して非難したり、およそ学校の先生のすることではないですよ。

受験まっしぐらの日本では、高校の先生の頭の中は、国立理系○○人、文系○○人、私立理系○○人、文系○○人、という数字しかなく、留学や放送大学はその枠組みの中に入っておらず、まったく論外ということなのでしょう。

高校は、まるで企業のように、どこの大学に何人入ったかを競っていて、生徒個々人の考えや、幸せに何の関心ももっていないように見えます。

これからの大変革時代にあって、こんなことで、どうして若い人たちは人生を乗り切っていけるでしょう。

自分で考えた進路より「受験」が大事?

受験で勝ち組・負け組とレッテルを貼られた人たちは、両方とも、決してよくありません。

負け組の人はそれを引きずるでしょうし、勝ち組となった人も、そんなことで一生乗り切れるわけもないのに、度々、学歴を引きずって失望しなければならないことが起きるのです。

正解を求める勉強ではなく、考えることを習う勉強を、と言われているのに、17歳や18歳の生徒が一生懸命考えて、あれやこれや情報を探して、留学するとか、ましてや放送大学でクラスを取得して留学にかかる費用を半減させ、その間、自分も働いて、親の金銭的負担を軽くしようとしているのに、まるで馬鹿にしたような言いかたや、変な意地悪はやめてほしいものです。

まったく、教師失格です。

「人生100年時代」が高校生に及ぼす影響

学校の先生は終身雇用の人が多く、大学受験をして、在学中に就職を決め、4年で卒業して、社会に出たら結婚して、ローンを組んで家を買う、という、1960年代から始まった1つのパターンから頭が離れないのではないでしょうか。

おかげで、いまや多くの人が35年のローンを組んで高いマンションを買っています。

学生時代に学資ローンを組んでいた人は、それが済んでからしか住宅ローンを組めないそうですから、1つのローンが終わったら次のローンで、返し終えるのが85歳とか。

65歳をなんとか70歳まで働かそうと国はしていますが、85歳までローンを抱えてどうするの?

最近、投資の授業が高校で始まるそうですが、学資ローンや住宅ローンの怖さも、ちゃんと教えてほしいものです。

「人生100年時代」とかで、老後のことばかりマスコミは言っていますが、もう高校生のときから、いろいろなことが起きているのです。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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