アメリカへの留学生出身国。インドが中国を抜いて1位に!

留学生の数が新聞のトップ記事という異変

アメリカに留学する中国人学生の数が、インド人学生に抜かれたという記事が新聞の夕刊の一面にでかでかと出ていました。

留学生の数が一面に出るなんて、よほどのことです。

ところが、日本人留学生については何も書かれていません。

アメリカと中国の仲が悪くなったことの1つの事例として取り上げているだけで、日本にどう影響するのか、どうかかわるのかといったようなことについては一切言及されていません。

困難だった中国からアメリカへの留学

20年くらい前までは、中国人学生のアメリカ行きの学生ビザはなかなか発行されませんでした。

中国人学生は、留学が真の目的ではなく、アメリカに住むための手段として留学すると思われていたからです。

そうでないことを証明するために、親名義の高額の残高証明書が必要でした。

多くの中国人学生は、このことをうまく把握できず、私も何人かの友人に、どのような書類を出すべきかを教えて、そのことでいまでも感謝されて、長い付き合いをしている人もいます。

中国の北京や上海にあるアメリカ大使館の前には、ものすごい行列ができていたものです。

アメリカが歓迎した中国人留学生

いつの間にか中国はどんどん豊かになり、アメリカへの学生ビザも簡単に発行されるようになり、あっという間に約30万人という留学生数になりました。

アメリカ政府も大学も高校も大歓迎、あるボーディングスクール(寮制の学校)は50%が中国人学生で、日本人が留学すると英語ではなく中国語を覚える、といった話も聞こえてきました。

ある大学院のMBA(経営学修士課程)は学生全員が中国人という話もありました。

アメリカ政府は、中国が豊かになり、アメリカの若い人との交流も増えていくと、いつか、中国は共産主義から民主主義になると信じていたようです。

何せ共産党の幹部の子弟もみんな留学していたのですから。

留学トレンドを大きく変えたコロナ

習近平さんになって少し変わってきました。また中国人留学生も、中国によい仕事があるので、アメリカに留まる努力をせず、中国に帰国しようという風潮が出てきました。

深圳などでどんどんスタートアップが生まれ、国家が多大な援助をすると呼びかけました。

そしてコロナが中国人学生のアメリカ留学にとどめを刺したと思われます。

そもそもコロナは中国が起源などと言われて、ビザ発行にも規制がかかりました。

習近平さんも、若者よアメリカに行くな、と言い始めました。

それでもそれでも、現在もアメリカには中国人留学生が25万人くらいいるのですよ。

減り続ける日本人留学生

この新聞記事に、インドと中国と韓国と日本の留学生のグラフは載せていますが、文中では日本人留学生について何も触れていません。

日本人留学生はただただ減っていくのみです。15,000人くらいしかいません。

新聞記事は学生ビザの発行数を扱っていますが、日本人は語学留学の学生が多く、中国やインドは大学や大学院生の学生ビザです。

そういったことにも言及されていません。

中国とアメリカの仲が悪く、これからもっと仲が悪くなりそう、という主旨の記事なのでしょうか。

中国とアメリカの仲が悪くなっていくときに日本はどのような役割を果たせるか、もっと議論は出ないものでしょうか。

日本は2,000年以上に渡ってたくさんのことを中国から学びました。

アメリカとのかかわりは200年くらいに過ぎません。

世界に開かれていた日本はどこへ?

世界は、民主主義の国と、専制主義の国に分かれつつあります。

民主主義の国はわずか30%と言われています。

ソ連崩壊、ベルリンの壁崩壊のとき、世界のほとんどは民主主義になると思われていました。

それが短い間にまったく違う世界になっています。

しかしながら、専制国家の中の知識者階級や富裕層は、民主主義国家に移住したり資産を移したりしています。

民主主義が衰退しているわけではありません。

明治の終わりから大正・昭和の初めにかけて、中国をはじめアジアの国々から、欧米の植民地支配から脱するため、または、新しい国家をつくるため、たくさんの若者が日本にやって来ました。

日露戦争後には、1万人もの中国人留学生が日本で学んでいたそうです。

いまの中国のもとをつくった孫文も、インドのボーズもそれこそミャンマーのアウンサン・スーチーのお父さんも、みんな日本にやってきて勉強し、官民ともに応援を受け各々の国の独立を勝ち取っていったのです。

日本は次第に軍国主義になり、アジアを独立に導くどころか、自分たちが支配しようとしたわけですが、少なくとも一時期、日本がアジアの指導者になる若者を援助したことは事実です。

留学もしない、移民も受け入れない、心配事は老後の年金。

世界の情勢を見れば地球そのものの危機が迫っているように思いますが、日本の若者は受験と就職で頭がいっぱい、というのは何とかなりませんかねぇー。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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