一流大学に留学しなければ意味がない?「入ればいい」という発想を捨てよう!

アメリカ大学留学フェアで人気の大学・不人気の大学

アメリカ大学留学フェアや、ボーディングスクールフェアなどが、コロナが収まった今年、にぎやかに開催され、どこも賑わっているようです。

うちのスタッフの話によると、大学フェアは盛況で、かつスタンフォードやプリンストンなどの大学の前は長い列ができているとのことですが、あまり知られていない大学のブースのスタッフは手持ち無沙汰にしているそうです。

インターナショナルスクールは留学に有利か?

最近は日本にもインターナショナルスクールが増えて、英語力では、それなりにネイティブ並みの人が増えているので、英語力でいえば、これらの大学を狙うことも可能かもしれません。

しかし、日本人は英語さえできれば入学できると勘違いする人が多いのですが、これらの大学がまず、一番重視するのは、高校3年間の成績です。

アメリカ人でこのような大学に願書を出してくる学生は、基本的に成績はオールA、すなわち日本でいうところのオール5です。

次に推薦状も大切です。

アメリカの高校の先生たちは慣れているので、味わい深い推薦状を書いてくれますが、日本の高校では、なかなか望めません。

そういう意味ではインターナショナルスクールに在学している子のほうが少し有利かもしれません。

アメリカの大学が成績「以外」の要素を重視する理由

エッセーも非常に大切です。

アメリカの大学のAdmissions Officeのスタッフはとても賢く、深い洞察力をもっていますから、エッセーをきちんと読んで、他の学生にいい影響を与えて、お互いが切磋琢磨できるような子を選んでいきます。

課外活動やボランティアも考慮に入れます。

いろいろな人と出会うことや、いろいろな経験をすることで人間は深く思いやりのある人間に育つと考えています。

また、これらの大学はリーダーを養成することを教育の目的と考えていますので、リーダーになる人間にはいろいろな経験が必要だと考えていて、また、そのような経験がエッセーにも表れてくると考えています。

経済力も合否に影響する?

まあ、このようにすべてそろった学生がワンサカ願書を出してくるわけです。

その中から、10%にも満たないほどの学生を選ぶのです。

しかも多様性を大切にしていますので、人種のバランスや親の経済力、親の学歴も考慮します。

まあ、アメリカでは昔から年収20万ドル以上(いまなら3,000万円くらいかな)ある家の子は、あまり奨学金がほしいなんて言わないでね、という暗黙の了解があります。

学生の半分くらいは奨学金なしで来ています。

とくに私立などで学費全額を支払えることは、親のプライドでもあるのです。

やはり、ちゃんと経済力のある家庭の子も一定数以上は選ばなければなりません。

学費という収入がなければ大学はやっていけないのは当然のことです。

そんな中で、とてつもなく才能を発揮する子どもが出てくることがあるのです。

毎年、そういった学生がハーバードからもコロンビアからも(おそらくそれ以外の大学からも)全額免除の奨学金を得たなんてニュースが出ます。

日本人が一流大学に留学できる可能性は?

さて、日本からアメリカ留学を希望する人はどうでしょう。

日本にも、とてつもなくできる人が、一定数はいます。

しかし少数です。多くの学生はまぁまぁというところです。

いまからがんばれば早稲田・慶應に入学できそう、という人たちです。

いまからがんばれば、というのは日本の大学受験には通用してもアメリカの大学には通用しません。

アメリカの一流大学には、すべての面で不足です。

その上、お金もありません。UCLAが65,000ドル、ハーバードは80,000ドルです(学費と寮・食費などの1年度分)。日本の中流家庭にはまず無理です。

それでも、奨学金をもらいたい、一流大学に入学しなければ留学の意味がない、という人がほとんどです。

そんなことで万が一入学しても、よほどアメリカ式勉強ができないとついていけませんよ。

アメリカの大学が重視する「多様性」

アメリカの大学にとっては、中間層の学生も大切です。

アメリカ人なら、ローンという奨学金もあります。これは、市や国や民間の金融会社が担いますので、大学への影響はありません。

もちろん、低所得者層の学生も大いに入学させる意義があります。

アメリカの大学の願書には、親の学歴を書く欄がありますが、親の学歴が高くてよくできる子は当たり前で、親の学歴が低くて貧困家庭で育って、それでもよくできる学生を入学させるのにはとても前向きです。

他の学生にいい刺激を与えるし、多様性をキープするためにも大切だからです。

それにいまでもアメリカにはアメリカン・ドリームがあるのです。

アメリカには移民が毎日のようにやってきます。故国を逃れて命からがらやってくるのです。

それこそ学校に行く機会がなかった人たちもいるのです。

何とか生き延びてアメリカにたどり着いて、何とか家庭をもって子どもを育てます。

アメリカは小学校から高校まで、公立であれば授業料は必要ありません。

アメリカの大学の入学生は本当に多様性に富んでいるのです。

このようなアメリカの教育システムをよく理解しないといけません。

それでもインターネットで煽られて、どう説明しても日本式の受験と早稲田・慶應に入学しないと先がない、みたいな「入ればいい」という考えから日本人は抜けられません。

だからプリンストンやスタンフォードのコーナーにワンサカ並ぶのです。

困ったね。本当に日本どうする。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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