自分だけの時間割を組むのがアメリカ流

アメリカの高校では、授業ごとに教室が異なり、クラスメイトの顔ぶれも先生も異なります。座席も決まっていません。各自が適当なところに座ります。「1年5組」とか「3年A組」というものもありません。

時間割については、一人ひとりの生徒が、たくさんある科目の中から自分がとる科目を選んで、独自の時間割を作成します。

科目は、卒業するまでに必ずとらなければならない必修科目と、自由に選ぶ選択科目とがあります。だいたいどの高校でも、英語、数学、理科、歴史、芸術、外国語を必修としていますが、留学生には外国語の必修は免除されます(選択科目として外国語の科目をとることはかまいません)。ほかにコンピュータやボランティア、インターンシップを必修としている学校もあります。

選択科目は、その高校で開講している科目の中から自由に選んで学びます。ボーディングスクールの科目はバラエティに富んでいて、コミュニケーションや環境学、ジャーナリズムや福祉など、さまざまな分野を学べます。とくに芸術と外国語のカリキュラムを充実させているボーディングスクールが数多くあります。

時間割を組むにあたっては、アカデミック・アドバイザーという先生と相談して、アドバイザーの先生の指導と助言を仰ぎます。上級レベルの科目をとるためには、あらかじめその下のレベルの科目を修めている必要があるので、計画性をもって時間割を組むことが大切です。

10年生の時間割

ここに紹介するのは、あるボーディングスクールの10年生(日本の高1)が学んだ科目と時間割です。

Religion:宗教学

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教について学ぶ。授業は映画を観たり本を読んだり。宿題は毎回リーディングで、1日平均して20ページくらい。

Global Studies:世界地理・歴史

プロジェクトの課題が多く、試験には毎回作文形式の問題が出る。プロジェクトではアラブ側、ユダヤ教徒側に分かれて新聞をつくり、社説を書いた。

ESL:外国人のための英語

前期は短い物語や文章を読んで、文法や単語のチェック。後期は少し長めの小説を読んで、やはり文法や単語を確認する。宿題は単語の暗記がメインだが、ほかにJournalという日記も書く。クラスメイトは世界各国からの留学生たち。

Algebra:代数

先生が最初の15分くらいで解説して、あとは各自で問題を解くというのが授業スタイル。宿題は授業で終わらなかった問題を解くことで、次の授業で答え合わせをする。日本人留学生にとっては得意な科目。

Assembly:朝会

連絡事項や賞の発表など。教会で行われるが、会自体は宗教的なものではない。小説家や有名人、卒業生などがスピーチすることもある。

12年生の時間割

次に、12年生(日本の高3)がとった科目と時間割を紹介しましょう。

Student Meeting:朝会

生徒会委員会や先生からの連絡など。

Painting:絵画

 

決められたテーマ(影、抽象、象徴など)に沿って自分で好きなものを描く。水彩、アクリル、油彩などで、抽象絵画から写生まで。

BC Calculus:微分積分の上級クラス

下級クラスはAB Calculus。先生から新しいことを教わり、次いで問題を解くというスタイル。試験の後にプロジェクトがあって、「微分積分のことをすべて収めたホームページをつくる」「ランダムなかたちの表面積を測る」「川の断面図をつくる」など生徒たちが自主的に取り組む。

AP Economics:経済学

APとはAdvanced Placementの略で、優等生のみが履修できる上級レベルのクラスのこと。このAP科目で優秀な成績を修めると、大学の単位として認められる。

AP Physics

高校の物理では一番高いレベル。微分積分を用いた問題を解くので、Calculusのクラスをあらかじめとっていることが条件。学期の終わりのプロジェクトでは、グループに分かれてコンピュータでプログラミングし、決められたルールに従った車をLEGOブロックでつくり、スピードを競った。

English-Shakespeare:英語(シェイクスピア)

シェイクスピアの『から騒ぎ』『十二夜』『真夏の夜の夢』『恋の骨折り損』を読む。クラスでは宿題として読んできた内容について話し合う。書く課題も多く出る。

Advisor Meeting Period:アドバイザーとのミーティング

授業の合間20分くらいの間に、生徒がアドバイザーに会って近況を報告したり相談したりする時間。アドバイザーはとても頼れる存在で、学業だけでなく生活面でもいろいろとアドバイスをしてくれる。

授業はディスカッションが中心

ボーディングスクールでの授業は、先生の一方的な講義を生徒たちが聞く、というよりも宿題として読んできた内容をもとに、生徒たちが意見を交わす「ディスカッション」が中心になります。留学生たちは口をそろえて、このディスカッション中心の授業が、日本の授業と一番違うところだと言います。

大きな円形のテーブルに椅子を並べるスタイルも、ボーディングスクールではよく見られます。先生も含めてみんなが輪をつくり、和気あいあいとした雰囲気の中で、生徒たちがどんどん意見を述べます。この円形のテーブルのことをHarkness Tableといいます。名門ボーディングスクールPhillips Exeter Academyで開発されました。

つねに自分の意見をもち、それを発表することが求められるのがボーディングスクールの授業ですが、「自分の意見をもつこと」はアメリカではとても重視されています。そしてその意見をクラスメイトと分かち合い、それに対する意見や反論に耳を傾けることで、一人ひとりの違いを認め合い、相互の理解を深めるというのがとても大切だと考えられているのです。

少人数制の授業

1クラスの生徒数は10人前後です。多くても20人を超えることはないでしょうし、5、6人という少数の場合もあります。このような少人数制の指導は、アメリカのボーディングスクールの大きな特徴でもあります。

日本人にはなかなか慣れないディスカッションですが、黙っていることは理解していないことだと見なされてしまいかねませんし、またディスカッションに積極的に参加することが、成績にもよい影響をもたらしますので、少しずつでもディスカッションに参加するようにしましょう。

ディスカッションに参加するためには、そのトピックについてよく理解していることが欠かせません。そのために教科書を読む宿題が出されるわけですが、教科書に書かれていることをただ述べるのではなくて、その内容に対する自分なりの意見や疑問をもち、言葉として発しなければなりません。とても厳しい学習ですが、自分の考えを聞いてもらえる・認めてもらえるという実感を得られれば、やりがいをもって取り組めるようになります。

宿題は予習を兼ねる

アメリカの高校の宿題は、授業の予習を兼ねています。「次の授業までに教科書の○章を読んでおくように」などと授業ごとに宿題が出されます。授業は、宿題として読んできた内容をもとに、生徒たちが意見を交わすディスカッションによって進行します。

アメリカの高校生活における宿題の大部分は、この「読む宿題(Reading Assignment)」です。一つの科目について、毎回の授業で出される「読む宿題」の量は20~50ページくらいです。かなりの分量です。とくに英語(国語)と歴史の予習の量はたいへんなものです。反対に、数学や外国語、アートなどの科目はリーディングはそれほど多くありません。時間割を組むにあたっては、リーディングが多い科目とそうではない科目をバランスよく組み合わせることが大切です。

教科書を読むコツ

留学生にとって、リーディングの宿題ほど泣きたくなる宿題はありません。効果的な教科書の読みかたを身に付けられるとよいのですが、それほど簡単に身に付くものでもありません。

一般的には、ある章を読むことが宿題として出された場合、頭から読むのではなく、章全体の構成を把握してから読むことがコツとされています。アメリカの教科書は、章ごとに“Chapter Summary”といってその「章のまとめ」が箇条書きされていますので、まずこのSummaryを読み、そして章全体にざっと目を通し、太字や大きな文字、図、写真、グラフなどから、章全体の構成を把握します。そのうえで全体を読むにあたっては重要だと思われる箇所を重点的に読むようにします。この「飛ばし読み(Skimming)」ができるようになれば、教科書を読むコツを身に付けたといえるでしょう。

また日本語で理解していないことを英語で理解するのはとても大変ですので、まず日本語で知識を得ておく、というのも遠回りのようですが効果的な読書法です。インターネットを活用して、教科書に書かれている内容に相応する日本語のサイトに目を通しておくことで、教科書の内容も頭に入りやすくなります。英米文学のクラスなどで読むものは、日本語訳のものを用意しておくといいでしょう。

大学進学に大きく影響する成績

多くのアメリカの高校では、成績はABCDFの5段階でつけられます。このアルファベットを5、4、3、2、1、0の数字に換算したものをGrade Pointといい、その平均値をGrade Point Average、略してGPA(ジーピーエー)といいます。アメリカの高校ではこのGPAが非常に重視されていて、その数値によって大学進学も大きく左右されます。

成績はテストの結果だけでなく、授業態度、ディスカッションでの積極性、レポートの完成度やオリジナリティなど、いくつかの要素を組み合わせてつけられます。とくに日ごろの学習態度や努力はかなり重視されます。

科目ごとに先生のコメントがつく

ABCDFの成績に加えて、科目ごとに先生のコメントが付されます。かなり詳しくコメントされますので、日本にいる親御さんにも学習状況がよく伝わります。実際のコメントをいくつか紹介しましょう。

アメリカ史

植民地時代を中心に、アメリカ合衆国の黎明期を学びました。○○さんは宿題の提出状況もよく、授業への取り組みかたも申し分ありません。彼女の努力をうれしく思います。授業中の発言やディスカッションはとても重要ですが、彼女は自身の知識や理解を積極的に発表しています。最初のテストは92点。クラスではトップの一人です。今後の活躍に期待します。

文学

この学期は短編小説を読みました。読書を通して語い力と読解力を身に付け、ディスカッションに生かせるように指導しています。○○君は予習はしっかりしていますが、授業中はとても静かです。発言や質問もありません。理解できないときは、遠慮せずに助けを求める必要があります。彼はとても興味深い考えかたや想像力をもっていますので、それをもっとクラスメイトと共有してほしいと思います。

物理学

今学期は波、音、光について学びました。また毎週水曜日には「科学者のように考える」というコンセプトのもとにさまざまな課題に取り組みました。○○さんはすばらしい生徒でした。留学生でありながら授業に積極的に参加してきた彼女の努力と能力に賞賛を贈ります。非常にむずかしい問題が解けたのもクラスでは彼女ただ一人でした。年度が終わるまでに物理をより好きになってもらえるように指導していきたいと思います。

GPAの計算方法

成績の平均値であるGPAの計算式は、

(履修した科目のGrade Point×それぞれの科目の単位数)の合計÷総単位数

です。たとえば、以下の科目と成績をとった場合のGPAは、ポイントの総計=16÷総単位数=5で、3.2ということになります。

オールAを修めればGPAは4.0ということになります。だいたいGPAが3.5以上であれば、優秀な成績とみなされます。

悪い成績(GPA2.0以下)をとってしまうと、警告書が発行され、成績の改善が見られない場合は退学にもなりかねません。アメリカの学校は、成績に対してはとてもシビアな見かたがされます。もちろんあらゆるサポートはしてくれますが、本人の学習態度に改善が見込まれなければ、けっこうあっけなく退学を勧告されます。

アメリカの大学進学において、最も重視されるのがこのGPAです。名門大学ともなれば、GPAが4.0に近い生徒ばかりが出願してきます。高校の成績が良いことが、よりレベルの高い大学への進学につながります。

アメリカのボーディングスクールは、「落ちこぼれ」をつくらないために、学習サポートの体制を充実させています。先生やクラスメイトも、みんな親身に手助けしてくれます。ちょっとついていけないかも、と思ったら、一人で悩まないで先生やクラスメイトにできるだけ早く相談しましょう。

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