留学生の夏休み。セルビアでボランティア

留学体験記  2018年07月30日

 

こんにちは。アメリカのウィスコンシン州にあるベロイト大学に留学中の平沢優子です。

以前のブログで、「アメリカの大学の夏休みは、いろいろなことを体験できる絶好のチャンス」と書きましたが、今回のブログでは、今年の6月から7月の約3週間にかけて、セルビアの首都ベオグラードに位置するNGO(非政府組織)団体、BelgAidでボランティアをした経験をお話ししたいと思います。

留学中に海外でボランティア、こんな経験ができるのも、長い夏休みのおかげです。

みなさんもぜひ機会があればチャレンジしてください!


ボランティアハウス

もくじ

1.セルビアでボランティアをしようと思ったきっかけ
2.ボランティア参加のための奨学金
3.ボランティアでは何をするのか
 3-1.食べものの調理と配給
 3-2.難民キャンプとは
 3-3.ボランティアのルール
4.ボランティアを通して感じたこと
 4-1.難民といかに接するか
 4-2.ボランティアのモティベーション
5.セルビアを発つ2日前の夜に
6.まとめ

1.セルビアでボランティアをしようと思ったきっかけ

移民・難民問題は、いまの世界が抱える深刻な問題の1つです。

私は、アメリカの大学で国際関係を専攻していて、とくに人権問題に興味があります。以前から、移民・難民問題の実態はどうなっているのか、難民キャンプとは実際はどういうところなのかなど、たくさんの疑問がありました。

日本にいると、ニュースで小耳に挟む程度であって、そのようなトピックが会話に出てくることはあまりありません。島国である日本にとって、このような問題ははるか彼方の土地で起きていて、日本とはまるで関係ないのだという印象さえ受けます。

アメリカ留学を機に移民・難民問題への興味を募らせた私は、実際に自分の目でこの現実がどうなっているのかを見て、体感したいと強く思ったのです。

2.ボランティア参加のための奨学金


ボランティアの作業

私が留学しているベロイト大学では、夏休みの間、インターンシップやプロジェクトを行う学生に対して、「サマーグランツ」という返済不要の奨学金を出しています。

その奨学金を得るためには、自分のプロジェクトについてのプロポーザル(企画)を提出します。

なぜそのプロジェクトを行いたいのか
それを通して何を学べるのか
ベロイト大学での学習といかに関係するのか
プロジェクトを行った後、さらなる学びへどう発展させていくのか

など、多くの質問に答える必要があります。

また、渡航費・滞在費・ビザ申請など、費用をこと細かく計算し、予算案も提出します。教授の推薦も必要です。

すべての必要書類を期限内に提出し、無事サマーグランツに合格すると、申請した予算の奨学金を受け取ることができます(夏休み明けにプレゼンテーションを行うことも条件です)。

私も、「セルビアの難民キャンプでボランティアに参加する」ことのプロポーザルをつくり、サマーグランツに応募しました。

このサマーグランツに応募したことによって、金銭的補助を受けられるのはもちろんですが、なぜ自分がこのボランティアをしたいのか・この経験から最大限学ぶにはどのようにプロジェクトを行うべきかなど、事前に真剣に考えることができたのはよかったです。

3.ボランティアでは何をするのか


キャンプで配る衛生用品

セルビアの首都ベオグラードでは、バルカンルート(トルコ→ギリシャ→バルカン半島に位置する国々からハンガリーを通って、ドイツ・フランス等EU諸国をめざすルート)の開通と共に、2015年以降、中東やアジアの戦争・紛争から逃れてくる難民の数が増加しました。

初めは中央駅周辺に野宿をする難民がたくさんいましたが、それが問題視され、多くのNGO団体や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR: The Office of United Nations High Commission for Refugees)がセルビアに来て、難民のために人道支援を行うようになりました。

3-1.食べものの調理と配給

私がボランティアを行ったNGO団体、BelgrAidもそのような難民のために活動をしている団体の1つです。

BelgrAidでは、500~600人分の食事(ビーガンフード)をつくり、難民キャンプで配給する活動を行っています。また、数か月に1度は衛生用品(シャンプー、石鹸、歯磨き、生理用品等)を配っています。

ボランティアは大きく2チームに分かれていて、

(1)料理チームは朝の9時からボランティアハウスで調理を担い、
(2)配給チームは車で約1時間離れた難民キャンプに料理を持って行き、配給します。

配り終えた後は、難民の人たちとスポーツやクラフト、または単に話すなどのアクティビティを17時まで行い、その後ボランティアハウスに戻り皿洗いをして、1日の活動を終えます。

3-2.難民キャンプとは


難民の人がつくったドリームキャッチャー

私たちが食事を配っていた難民キャンプでは、18~25歳の約800人の男性難民が暮らしています。

キャンプの入口には門があり、そこを通り抜けると食堂や居住施設などの建物が点々とあります。また、出身国間での争いや喧嘩を避けるために、居住施設は出身国ごとに分かれています。

「難民」と聞くと、どうしてもテントや線路で寝ているような、劣悪な環境で暮らしているイメージが思い浮かびますが、難民キャンプは少し違います。

難民キャンプとはそもそも、そのような環境で暮らすことが人道的でないという考えから生まれた施設です。そのため、「ベスト」な暮らしではありませんが、ある一定の暮らしは保証されています。

3-3.ボランティアのルール

私たちボランティアが難民キャンプに行く際には、いくつかルールがありました。

まず、難民のほとんどがイスラム教徒ということもあり、肌・体のラインを隠せる服装を着なければなりません。

また、難民キャンプでの写真撮影は一切禁止です。

ほかには、トイレに行くときなどは、1人ではなく他のボランティアと一緒に行くこと、また、難民の人に法的アドバイスを求められても、私たちはエキスパートではないので無責任にアドバイスをしてはならない等のルールがありました。

4.ボランティアを通して感じたこと


キャンプで配るレモンとミントのジュース

ボランティアを通して感じたこと、考えたことは数え切れないほどあります。

4-1.難民といかに接するか

まず、難民の人たちとの接しかたです。

BelgrAidのボランティアとしては、食事を必要としている人全員に食べものを配り、そしてアクティビティを通して少しでも楽しい時間を過ごせてもらえれば十分といえるかもしれません。

でも、難民の人たちと話している中で、どの程度踏み入った話をしていいのかという判断がとてもむずかしかったです。より深い会話をするには、時間をかけて築き上げていく「信頼関係」が必要です。それを考えると3週間はとても短すぎた気がしました。

4-2.ボランティアのモティベーション

また、今回のボランティアだけでなく、人道支援を行うボランティア活動に共通した「むずかしさ」の1つが、「裏方」の仕事をするボランティアの人たちがどのようにモティベーションを保っていくかということだと思いました。

たとえば、キッチンで野菜を切る作業です。実際にキャンプに行って難民の人たちと接する機会があれば、自分がキッチンでしている仕事が彼らのためになっていると実感できます。

しかし、そのようなつながりが薄いと、1日中野菜を切るだけの、「作業」としてとらえてしまいがちです。すると、ボランティアにとってもその「作業」が苦になってしまいます。私も、実際に難民の人たちとキャンプで会う前に、そのような気持ちになってしまいました。

5.セルビアを発つ2日前の夜に


ボランティアたちの宿泊施設

最後に、セルビアを発つ2日前の夜に起きた出来事について話したいと思います。

その日の夜10時半頃、私は宿泊先のホステルに戻るために、1人で中央駅付近を歩いていました。すると7~8人の男性の集団がいて、そのうちの1人の子にどこか見覚えがあることに気づきました。

彼も私に気づいた様子で「ヘイ」と言いながら近づいて来ました。一瞬、どこで会ったのかわかりませんでしたが、すぐにキャンプで見かけた男の子だと気づき、私も近寄り話しかけました。

その子は、その夜国境を越えようと仲間と向かっているところでしたが、警察に何かを言われ、今日は諦めて明日出直すと言っていました。そして、キャンプに戻る途中でたまたま私と会ったのです(ちなみに、「国境を越える」は、cross the borderではなく、go on a gameという言いかたをします)。

彼のバスが来るまでの約30分ほど、一緒に話をしました。彼の身に何が起きたのか直接の話はしませんでしたが、ヨーロッパに向けての旅を開始してから約1年3か月経つこと、家族は一緒ではなくずっと1人で寂しいこと、いまはボスニアに向かおうとしていることなどを話してくれました。

彼と別れた後、私はなんともいえない気持ちになりました。

私のすぐ横に、ちょうどいま国境を越えようとして、諦めて帰って来た人たちが立っているという事実に鳥肌が立ってしまいました。彼らはリュック1つ持っていなく、着のみ着のままで歩いていたので、私には、あたかも友だちと遊びに行くくらいの身軽さに思えたのです。

その夜の出来事は、キャンプで難民の人と話したときとはまったく違う経験であり、彼がバスに乗って去っていった後も、感情のたかぶりを抑えられませんでした。そのときほど、「生まれた場所によってこんなにも人生が変わるなんて、こんなに不公平で理不尽なことはない」と思ったことはありません。

6.まとめ

難民の人たちも、私たちと同じ普通の人です。違法で国境を渡っているのだって、望んでやっているのではなく、ほかに生きていく手段がないのです。

難民が目的地としているヨーロッパの国々では、難民問題に対してさまざまな議論があり、その答えを見つけるのは簡単ではありません。

今回のボランティア活動を通して、難民問題に対して何がベストなのか見つけ出せたわけではありませんが、食事を必要としている人たちに食べものを配り、そして、限られた時間でしたが彼らと交流する機会をもてたことは、私にとっては本当にいい経験になりました。

そして難民問題や難民キャンプの現状だけでなく、一緒にボランティアに参加したほかのメンバーからたくさんの刺激を受け、自分自身が成長できたと思います。

ボランティア中に、

“Wisdom does not come with age, but from experience.”
(叡智は、年齢ではなく経験によって身につく)

と壁に書いてあるのを見て、まさにこの通りだと思いました。

いろいろなことを経験したり、異なった考えをもつ人とかかわったり、さらに、出会った人々のよい部分を吸収し、自分のものにしていくことの大切さを痛感したのが、今回のボランティアでした。

これから留学するみなさんも、ぜひ長い夏休みを最大限に活用して、すばらしい経験をしてくださいね!

 

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