「環境」について考えた留学生活その1:熊本から東京、そしてアメリカへ

みなさんこんにちは。ケンタッキー州のCentre Collegeに留学し、卒業した鈴嶋克太です。

僕はいま、東京にある環境団体で海外の森林保全に関する仕事をしています。

日本は紙パルプ、家具、建材、そしてバイオマス燃料などの用途に、海外から木材製品を大量に輸入しています。輸入にかかわる企業や、関連する政策を所管する行政に対して、原産地の森林生態系を破壊しないこと、地域住民の生活環境に負の影響を与えないこと等を求めて情報提供・提言を行っています。

Centre Collegeのキャンパス
緑豊かなCentre Collegeのキャンパス

環境への関心の原点

留学中に勉強したことや考えたことがいまの仕事を選ぶことにつながっていったのですが、もともと環境やサステナビリティへの関心は、実体験とからんだ自分の「原点」のようなものとして存在していました。

僕の出身は熊本県の田舎で、子どもの頃は親に連れられて海・山・川などの自然があるところで遊んでいましたし、高校は街中にある学校に電車で通っていましたが、それでも少し外れると自然が近くにある環境だったわけです。

ところが、大学進学で地元を出て東京に来たとき、そういった環境が大都市では当たり前ではないことに気づきました。毎日人ごみを縫いながら、大都会の中にあるキャンパスに通っていましたが、そこは、自分が本能的によいと感じる環境(well-beingを感じる環境)ではありませんでしたし、講義室で学んでいる社会学や政治学、法学のいろいろなコンセプトが、実際に自分の将来の仕事や社会への貢献の仕方(かかわりかた)にどのように活かされるのかも、あまりイメージできずにいました。そもそも、自分の仕事やキャリアについて、当時は明確な考えがありませんでした。

それでも、学生、社会人、研究者、環境アーティスト等の人たちが集まって環境問題について語り合うサークル(「環境カフェ」)に参加したり、長野県の田舎のまちづくりの現場を見に行ったり、同じく長野県のとある集落の農業ボランティアに参加したりと、自分なりにサステナブルな生きかた・仕事を模索してはいました。

そうした中で、アメリカの大学への留学準備を進めていたのです。

日本の大学からCentre Collegeへの編入を決めた理由としては、リベラルアーツ校として評価が高いのはもちろんですが、キャンパスの立地や周辺の雰囲気から、「とても田舎で、自然環境がよさそう」と感じたのもあります。

留学最初の学期に受講した「環境学入門」

専攻をInternational Studies(IST)にすることは留学する前から決めていたのですが、Centre Collegeに環境学の授業があることは事前に把握していましたし、生物学・物理学系の100番台の科目もとる必要がありました(編入前に同様の単位をとっていなかったので)。また結果的には、ISTの専攻科目や卒業前のセミナーでも環境問題に関するトピックに触れることになりました。

それぞれの授業で学んだことや考えたことがきっかけとなって、卒業時は「環境問題の解決を仕事にしよう」と決心するに至ったのですが、まず、留学最初の学期(2018年秋)に受講したのがIntroduction to Environmental Studies(環境学入門)という授業でした。

この授業は、入門レベルの教科書を最初から最後まで、1章ずつさらっていき、小テストや短いレポート課題などが組み合わさる形式でした。

気候変動、生物多様性の損失・森林破壊、プラスチック汚染、海洋酸性化、化学物質汚染といったグローバルなトピックから、アメリカ国内の地域的な問題(南部の工業地帯における大気汚染、「環境不正義」といわれるような、特定のマイノリティ・コミュニティに汚染が集中している問題など)までカバーされており、環境問題の全体像と各トピックの基本的な用語やコンセプトをおさえるような内容でした。

いまの仕事でも役立っている専門的な用語やコンセプト

用語については、日本語では何となく知っていても英語では初めて見るものばかりでしたので、見開き2ページを理解するのに1~2時間もかかってしまう具合でした。それほど分厚い教科書ではなく、図や写真も多くて簡潔なものですが、消化するのは大変でした。

2~3週間して「ちょっとついていけないな」と感じたので、先生に相談に行ったところ、「スタディグループをつくってみたら? 多分、アメリカ人の学生も苦労しているんじゃないかな。明日の授業の終わりに時間をとるから、呼びかけてみる?」と提案されました。

その先生はセネガル出身のかたで、僕みたいな留学生の気持ちによく配慮していただきました。実際に呼びかけたところ、5, 6人集まり、その後もテスト前などに情報を共有し合うなどして乗り越えました。なにしろ、短期間に新しい用語やコンセプトをたくさんインプットするのですから、アメリカ人の学生にとっても大変だったようです。

たとえば、

  • 過放牧 overgrazing
  • 乾燥/半乾燥の気候 arid/semi-arid climate
  • 温帯雨林 temperate rainforest
  • 北方林 boreal forest
  • 多年生の perennial
  • 落葉性の deciduous
  • 林冠 forest canopy
  • 海洋酸性化 ocean acidification
  • 人為起源排出 anthropogenic emissions
  • 生物濃縮 bioaccumulation
  • 食物連鎖 food chain
  • 頂点捕食者 apex predators
  • 殺虫剤耐性 pesticide resistance
  • 統合的病害虫管理 integrated pest management

などなど、ネイティブでも日常会話では触れないような言葉です。

いまの仕事で環境関連のニュースやレポートを読むことがあるのですが、こういった単語が出てくる際にすぐに思い出せるのでかなり役に立っています。

この授業ではレイチェル・カーソンの『沈黙の春』も読みました。これは、1962年に出され、農薬や殺虫剤の過剰な使用による生態系への悪影響を訴えた本です。当時、人間が自然環境に与える負の影響などほとんど顧みられず、無限の経済成長が信じられていた時代にあって警鐘を鳴らした先駆的なもので、環境問題におけるいわばバイブルです。

「環境」について考えた留学生活その2:「環境カフェ」を自ら開催に続く)

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