今、Public Healthがアツい!世界中が注目する学問をアメリカで学ぶ!!
みなさんこんにちは!
ハワイ大学マノア校に留学している小川です。(秋にはバージニアに帰ります。)
さて、私の大学での専攻の一つがPublic Health、日本語で言うと公衆衛生ですが、「公衆衛生って何を勉強するの?」「医学部では何を学ぶのか想像がつくけど、公衆衛生って想像がつかない。。」という方もいらっしゃると思います。
今回は、そもそもPublic Healthとは何なのか、アメリカの大学でそれを学ぶ意義について書いていこうと思います!
1.Public Healthって???
Public Healthの定義は様々ありますが、CEA Winslow によると、Public Healthの意味が次のように定義されています。
-The science and art of preventing disease, prolonging life, and promoting health through the organized efforts and informed choices of society, organizations, public and private communities, and individuals.
なんだか少し抽象的な気もしますね。もっと噛み砕くと、Public Healthには、3つの大きな柱となる役割があります。
Health promotion (健康の促進)、Disease Prevention (病気の予防)、Focus on Population-based health (人口全体としての健康を図る)です。
もっともっと噛み砕くと、いわゆる医学部で勉強する「臨床医学(Clinical Health)」は個人の病気の診断や治療を目的としているのに対し、「公衆衛生(Public Health)」は、人口全体(アメリカ国民、東京都民、など)を対象とし、病気の予防や流行の抑制、さらには人口全体の健康水準の向上を目的としています。
おそらく、皆さんが「公衆衛生」と聞いて一番最初に思いつくのは、2020年の新型コロナパンデミックの際、連日のようにデータを発表し、「パンデミック宣言」を行なった、テドロス事務局長率いるWHO(世界保健機関)ではないでしょうか。
WHOは、誰か特定の個人の病気を診断したり治したりするわけではなく、世界中の人々全員がより健康になるためにはどうしたらいいかを日々模索しているので、Clinical HealthではなくPublic Healthに分類されます。
2.リベラルアーツ教育が活きる!!
そんなPublic Healthの学びを深める中で、私が日々実感しているのが、リベラルアーツ教育との相性の良さです。
Public Healthは医学や保健の枠を超えて、実に幅広い知識が求められる分野なんです。
簡単な例として、新型コロナウイルスの流行を考えてみましょう。
2022年までの東京都の累計感染者数は、人口100人あたり4.6人。
全国平均の2.4人を大きく上回っていました。この差はなぜ生まれたのでしょうか?
要因は一つではなく、さまざまな側面から分析する必要があります。単に「人口が多いから」だけでは、対策が「人口を減らす??」などという曖昧で実現がほぼ不可能なものになってしまいます。
考えられる要因として、「東京は日本の中でも特に人口密度が高く、限られた空間に多くの人が暮らしているという特徴がある。
結果として住宅は必然的にコンパクトになり、一軒あたりの部屋数も少なくなる。
感染者が家庭内で隔離されるべき状況でも、十分な空間がない家庭も多い。
さらに、トイレが一つしかない家庭では、感染者と非感染者が共用せざるを得ないため、感染のリスクが高まる。」
こうした問題に対して、「感染者を速やかに隔離するため、その地域の住民が誰でも利用できる宿泊療養施設を整備する」などの対応策が求められます。(実際に行われていましたね!)
また、二つ目の要因として、「東京はヒートアイランド現象により、地方より気温が若干高くなる。
それにより、連続的かつ長時間のエアコン使用が増え、換気の回数が減った」なども考えられます。
この場合は、「夏の間でも、窓を数センチほど開けておくということを行政が呼びかける」という対応策があります。
この「流行の要因を考える」「予防策を設計する」というプロセスこそ、Public Healthのもっとも大切な部分です。
そしてこのプロセスには、実に多様な分野の知識が求められます。たとえば、先ほどの例に出てきたような地理学や、気候に関する知識に加え、以下のものがあります。
•経済格差、労働環境 → 経済学
•行政による対応策や制度設計 → 政治学・公共政策
•感染拡大のメカニズム → 医学・疫学
•統計的データ分析 → 数学
•感染による負担が女性に偏るなどの視点 → 女性学
•SNSで拡大するワクチンの陰謀論 →社会学・心理学
こうした横断的な学びを可能にするのが、まさにアメリカのリベラルアーツ教育だと思います。
専門分野の枠にとらわれず、幅広い知識を組み合わせて社会課題を解決する。
この柔軟な知的姿勢こそ、Public Healthのような複雑な分野には不可欠です。
リベラルアーツカレッジでは、自分の専攻以外にも、さまざまな分野の授業をとっていくことになります。
なので、Public Healthを学ぶ場として、リベラルアーツカレッジは最適だと思います。
3.「感染症」だけじゃない!幅広い健康課題にアプローチ
Public Healthでは、コロナやインフルエンザ、はしかなどの感染症の流行だけを扱っていると思われがちですが、そうではなく、肺がんや糖尿病、アルツハイマーなどのColonical Disease (人から人に感染しない病気)についても扱います。
アメリカも日本も、死亡原因の多くはColonical Diseaseであるがんや心臓病です。
何がこれらの病気の発症につながるのか(有名なものではタバコ、運動不足)、どうしたら有病率を下げられるかも議論の的です。
それから、ボツリヌス菌などの食中毒が発生した場合、どのように原因となった食べ物を特定するかも勉強します。
また、日本語に訳すと「衛生」という言葉が入っているので、「病気」に引っ張られがちですが、実はその実態はもっと幅広い概念を含んでいます。
交通事故による怪我や死亡件数、DV(デートDVも含む)によって引き起こされる身体的な傷害や、深刻な精神的影響といった問題も含まれていて、こうした課題にも目を向けなくてはいけません。
それに、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、アメリカでは銃による犯罪もあります。
法規制などでそのような事件・事故を減らし、人々が安全に過ごせるようにすることも、Public Healthの大きな役割です。
まとめ
2020年に始まった新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中でPublic Health(公衆衛生)の重要性が改めて認識されました。
アメリカでも、パンデミック以降はこの分野を専攻する学生が増えています。
アメリカでは、Public Healthは、本格的でより実践的なことは大学院から始まりますが、学部課程でもその土台となる考え方や視点をしっかりと養っていきます。
今回は、その“入り口”として全体像や背景を中心にお話ししました。
専攻の学問に対する熱意が溢れかえってしまい、今回全てを書ききることができなかったため、後編として次回は、私がこれまでに学んできたことをもっと具体的に紹介していきたいと思います!
乞うご期待!!
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