「環境」について考えた留学生活その3:気候変動と国際政治、市民の役割

みなさんこんにちは。ケンタッキー州のCentre Collegeに留学し、卒業した鈴嶋克太です。

Centre Collegeのキャンパス
Centre Collegeのキャンパス

「環境」について考えた留学生活その1:熊本から東京、そしてアメリカへ で紹介したように、僕は今、東京の環境団体で海外の森林保全に関する仕事をしています。

CO2を吸収し固定する役割や洪水防止機能を持つ森林を守ることは、気候変動対策としても大変重要です。

僕が専攻したInternational Studies(国際学、IST)では、Senior Seminar(2020年の春セメスター)のテーマが「国際政治と気候変動」でした。

この授業が、卒業後は、気候変動・地球環境問題に関する仕事に進もうと決心するきっかけになりました。

このSenior Seminarでは、気候変動と世界情勢に及ぼす影響に関する、さまざまな本やニュース記事、論文、ドキュメンタリーなどが題材でした。

学生は2人1組に分けられ、「毎回1組ずつ、本の一部分についてポイントをまとめ、プレゼンし、クラスのディスカッションをモデレートする」というやり方で進んでいきました。

過去に受講したISTクラスのノートや、文献、書いたエッセイの中身を見直しながら授業に臨むことが期待されていました。

セメスター後半は、新型コロナのパンデミックで対面授業が無くなり、ディスカッションの機会が無くなったのですが、その代わり、テーマを決めてリサーチし、一人25分のプレゼンテーションを録画して提出することになりました。

そして、セメスター最終盤。大学での学びの総括として課されるComprehensive Examinationで出された質問が以下です。

「気候変動は地球規模の問題であり、国家間における広範な国際協力が必要である。リアリズム、リベラリズム、マルクス主義者は、協力の可能性をどのように捉えるだろうか? どの視点が最も説得力があると考えるか? その理由は何か? これまでの講義資料の事例を用いて論証せよ。」

今回は、当時の回答内容やISTで学んだことを、現在の仕事を通して感じていることを絡めながら、この専攻の醍醐味をお話しします!

国家は気候変動問題で協力できるのか?~国際関係理論を基に考えると・・・

まず、国際関係学には、国家の行動や関係(協力、孤立、争い、優劣など)を説明する「理論」があるのですが、「どんな原理・原則を前提とするか」で異なる主義があります。

例えば、「リアリズム(現実主義)」では「この世界では、各国は自国の安全保障のためにパワー(軍事力や、それを支える経済力)を追求する。

国にとっての最優先事項は、パワーと安全保障だ。」と考えます。

国際協力は、「気候変動問題が国家安全保障に関わる場合」や「気候変動対策が、パワーの維持・強化を阻害しない(つまり、自国が他国と比べて損をしない)場合」に可能となります。

他方、「リベラリズム(理想主義・国際協調主義)」では、「国際的な制度(国連や国際機関、国際法など)の存在によって、国家はお互いに共通利害を確認・調整しやすくなり、協力することが合理的な選択になる。

また、民主主義国家は世論や人々の福祉・人権に配慮する傾向にあるため、より多くの民主主義国家が国際機関に集うことで、協力を進めやすくなる」というロジックになります。

現実の世界は、気候変動は既に安全保障に関わる問題(災害の激化、海面上昇、食料危機等よる社会の不安定化・難民の発生、紛争の助長など)として広く認識され、そうしたリスクを低減するための協力も一定程度進んでいます。

また、気候変動に関する国際協力は、こうしたリスクが顕在化する前(1980~90年代)から続いてきたものです。

たとえ安全保障に直結しない場合でも、環境問題に関するいくつかの国際条約は1970年代には誕生しています。

こうしたことを考えると、リベラリズムの説明も妥当なようにも見えます。

その一方で、積み重ねられてきた国際協調に逆行する動きがあるのも事実です。温暖化を懐疑的に捉え、気候変動対策に背を向ける国が出ています。

昨年2025年のG7(先進7か国)会合の声明では、「気候変動」への言及さえされず、11月にブラジルで開かれた気候変動枠組条約の締約国会議(COP)でも、脱・化石燃料の機運は大きく後退したと報じられました。

悲しいことに、たとえ制度上民主主義の国であっても、そして、国際機関が機能していても、こうした「逆行」や「後退」が起きてしまうのです。

また、現状各国が設定している温室効果ガスの排出削減計画を足し合わせても、温暖化の進行は止めることができないとされています。

気候変動の安全保障リスクが顕在化しており、十分認識されているにもかかわらず、です。

こうした現状に対して、資本主義の視点で国際関係を説明しようとする「マルクス主義」の理論では、「資本を有する先進国や多国籍企業・既得権益が、社会や政策形成に大きな影響力を持っている。国家間の不平等を作り出しているこの現状が変わらない限り、気候変動における国際協調も表面的なものにとどまり、根本的な問題解決につながらない」と説明されます。

他にも、コンストラクティビズム(構成主義)という考え方があります。

国家や人々の間の日々の出来事や相互関係、コミュニケーションの積み重ねを通して、規範や文化、新しい認識が「構成」されていくという考えです。

リアリズムやリベラリズムはある種、物理学の様に、国家の行動や国際関係を一定の原理・原則に落とし込んで説明しようとします。

一方、コンストラクティビズムは、世界が変化するプロセス(対立していた国同士の和解、新しい国際常識や規範の出現など)を説明できる、と対比されています。

一人の行動も、世界を変えるきっかけになる~当時の学びと今の仕事を通して思うこと

現実の世界では、対立関係にあった国家間で、首脳同士の個人的な信頼関係の構築と友好ムードの演出が、実際の和解のきっかけになることがあります。

また、気候変動など地球規模の問題では、草の根の市民運動やある一国のリーダーの発言が反復され、世論として広がり、新しい国際常識や規範になったりします。

国際機関は、単なる国同士の利害調整の場ではなく、そこから出されたメッセージが政治的な影響力を持つことがあります。

例えば、現在の国連事務総長グテーレス氏は気候変動問題の危機を訴え続けていますし、昨年2025年7月には、国際司法裁判所(ICJ)から「国家には気候変動対策の義務がある」という意見が出されました。

こうしたメッセージが規範として働き、長い目で見て、国の行動は変わっていくと期待されています。

このICJ意見は、深刻な海面上昇に直面する太平洋の島国の学生27人が、2019年に始めたキャンペーンがきっかけであることも重要です。同じ年の9月には、ニューヨークで気候変動サミットが開かれましたが、そこにスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん(当時16歳)が、ヨットで大西洋を横断して加わり、20万人以上のデモが行われました。

2020年5月に留学から帰ってきた直後には、人種差別への抗議運動「Black Lives Matter」が、全米そして世界に波及しました。

当時の僕は、これらの出来事にはニュースとして触れるだけでしたが、市民運動の持つ力を目にして、強い当事者意識を抱いたことを覚えています。

今、環境団体で働いていて思うのは、政治家や「偉い人」だけでなく、市民としての一人一人の考えや運動も、社会の常識を変え、国や国際社会の変化につながる可能性があるということです。

世界はどのように動いているのか。変化はどのように起こるのか。

そして、「私に何ができるのか」。

こうした問いに向き合いたい人には、International Studiesをぜひおススメしたいと思います。



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