【留学体験談】アメリカの大学で芸術を学ぶ

みなさん、こんにちは!
今回の「留学ブログ」は、アメリカの大学で芸術を専攻した先輩からの留学体験談をお届けします!

アメリカには、日本の美大・芸大のような専門大学もありますが、ごく普通の大学でも芸術を専攻できます。どのようなことを学ぶのでしょうか? その辺りのリアルなお話を語っていただきましたので、芸術留学を志すかたはぜひ参考にしてください!

 

もくじ

1.ゼロから芸術を学べるアメリカの大学
2.絵画の基礎からていねいに指導
3.歯に衣着せぬ批判大会
4.キャンパス内のスタジオでニュース制作
 4-1.編集ソフトを独習
 4-2.原稿から収録当日まで
 4-3.撮影機材のトラブルが(汗)!
5.大統領選のインタビュー
6.グラフィックデザインで学ぶこと
 6-1.タイポグラフィ
 6-2.いまに役立つデザインの授業
7.ユニークな芸術のクラス
 7-1.唯一無二のクラスメイト
 7-2.青空の下でジュエリーデザイン?
8.まとめ

1.ゼロから芸術を学べるアメリカの大学

初めて出会う人に「アメリカの大学を卒業しました」と言うと、「何を専攻していたんですか?」とよく聞かれます。「専攻(Major)は芸術で、副専攻(Minor)はグラフィックデザインでした」と答えると、「一体どんな勉強していたんですか?」とさらに聞かれます(笑)。

私は、アメリカの大学に留学した当初は、教育学を専攻するつもりでした。でも、いろいろな科目をとったり自分なりに教育学についてリサーチしていくうちに、教育学を本当に勉強したいのかどうか、自信がなくなってしまいました。そこで、アドバイザー(勉強全般にわたって相談にのってくれる先生)に相談することにしたのです。

小さい頃から何かをつくったり、写真を撮ったりすることが大好きだったので、そのことを伝えると、「芸術を専攻するのはどう?」と言ってくださいました。

そのとき、芸術を本格的に勉強したことのない私でも、ゼロからアートを学べ、さらに専攻できることを知ったのです。

2.絵画の基礎からていねいに指導

「芸術専攻ということは、絵もすごく得意なんですか?」と聞かれたことがありますが、特別絵が上手で才能があるといったわけではありません。絵を描くための基礎を、ゼロから大学で学びました。

たとえば、描いたものを立体的に見せるときの色の使いかたです。油絵の授業で、テーブル上のレモンを描くことになりました。レモンの影の部分に、私は灰色を使ってみたのですが、どうしても野暮ったくなり、影の部分だけ浮いて見えたのです。すると、先生がこう言うのです。「目を細くして、実物のレモンをよく観察してみて。そのときに見えてくる隠れた色を塗ってごらん」と。

先生の言うとおりに目を細めて、ジーッとレモンを観察してみました。すると、なんとなくですが、薄くて暗い紫のような色が見えてきたのです! そこで影の部分を、薄暗い紫で塗ってみると、とても自然な感じになり、立体感が一気に出たのです。

これにはとても驚きました! 先生の指導方法もとてもすばらしいなと思いました。すぐに答えを教えるのではなく、まず学生に考えさせる、そうすることで、学生自身が新たな発見をする喜びを得られるんだなと感じました。

私が留学した大学は、私立の小規模大学だったので、絵画の授業は一クラス15名ほどでした。少人数だったので、先生が一人ひとりの学生にていねいにアドバイスをくれて、とても助かりました。

3.歯に衣着せぬ批判大会

作品が完成すると、Critique Day といって、クラスのみんなで作品を鑑賞し、意見交換を行う日があります。まずは先生からの注意があります。「他の人の作品を見て、I like it! とだけコメントするのはダメだよ。具体的にどこがいいのか、逆にどこを改善するべきなのかを言ってね」

私の作品に対して、あるクラスメイトからこう言われたことがあります。「あなたが描いた空の絵、なんか不気味だわ。その空の色、もっと明るくしたほうがいいと思う」「不気味って・・・そこまで言うかい?」とびっくりしました。言いたい放題のアメリカ人。でも、悪気はないので、へこまないことが大事!

4.キャンパス内のスタジオでニュース制作

4年生の終わりに、映像の科目をとりました。この科目では、大学にあるスタジオでニュースを制作したり、キャンパスを紹介する動画などをつくったりしました。

4-1.編集ソフトを独習

動画を編集するにあたって、まずはソフトの使いかたを学びます。このクラスには20人以上の学生がいたので、先生も一人ひとりにていねいに教える時間がありません。そこで私は、授業後に一人でもくもくと動画編集ソフトの使いかたを練習しました。YouTubeに使いかたを解説するビデオがたくさんあったので、とても助かりました。複雑な操作の説明も英語だったので苦労しましたが、何回も練習していくうちにマスターできるようになりました!

上の写真は、大学にあった実際のスタジオです。映っているのはクラスメイトですが、すでにプロのニュースキャスターの風格が漂っていますね! 本格的なスタジオで、カメラも4台くらい設置されていました。このスタジオで撮影されたニュースはインターネットのライブストリームで放送されます。

4-2.原稿から収録当日まで

授業では、ニュースで報道するテーマを自分で見つけて、キャスターが読む原稿も考え、撮影、編集までします。

原稿は私が読み上げるわけではありませんが、ニュースで流れる大事な内容なので、図書館にあるライティングセンター(作文のサポートをしてくれるセンター)に行き、文法の間違えがないかどうか確認してもらっていました。

当日は、スタジオにある4つのカメラのうち、いずれかのカメラを担当することになりますが、どのカメラを担当するかはその日に決まります。2メートルほどの高さまで伸びるカメラで、とても高価そうなものだったので扱う際はヒヤヒヤしました。

ニュースの本番が始まると、マイク付のヘッドフォンを装着し、アシスタントの指示を待ちます。ヘッドフォン越しに「カメラをオンにしてください!」「もう少し右に寄せてください!」など、いろいろな指示が飛んできます。マイク越しの英語は聞きとりづらく、けっこうたいへんでした。本番が始まる前は少し早めにスタジオに入り、指示を出してくれるメンバーと打ち合わせをします。本番のたびに、一つのものをつくりあげるには綿密な打ち合わせとチームワークが大切だということを実感したものです。

4-3.撮影機材のトラブルが(汗)!

あるとき、キャンパス内で行われるカルチャーショーという催しを撮影することになりました。カルチャーショーとは、世界各国から来た留学生たちが踊りや歌をステージで披露するイベントのことです。

撮影機材一式をカートに載せて会場に行き、セッティングを終えて録画テストをすると、なんとトラブル発生。録画ができなかったのです! 5分後にはショーが始まるので焦りました。幸い、デジタルカメラを持っていたので、しかたなくそのカメラで撮影。このときばかりは冷や汗がタラ〜り(笑)。翌日先生に事情を説明すると「それだったらしょうがないね」と理解していただき、なんとか課題を終えることができました。

5.大統領選のインタビュー

 大学4年生のとき、ドイツのテレビ局:ドイチェヴェレの撮影クルーと一緒にアメリカ大統領選挙に関するインタビューをキャンパス内で行いました。ちょうどアイオワ州で民主党の集会が開かれていたため、大学にビル・クリントン氏やバーニー・サンダース氏が、演説に来ていたのです。

とある週末に、課題を済ませようと教室に行ったら、先生に「ちょうどいいところに来た! いまからキャンパス内でインタビューするけど、やってみる? Extra Creditをあげるよ」と言われました。Extra Creditとは、ボーナスポイントのようなものです。

そのときの私の服装といったら、使い古したパーカーにジャージ、それにファーのついたロングブーツ(笑)。「こんな格好だけどいい?」と聞くと、「もちろんよ、その服装よく似合ってるわよ!」となんともアバウトな返答。「嘘でしょ〜?」と思いましたが、ドイツのテレビ局と一緒に行動でき、Extra Creditももらえるので挑戦することにしました。

インタビューでは「今後、どんなアメリカになってほしいですか? だれに投票しますか?」という質問をしました。でもほとんどの人が、自分の投票する候補者を明かしませんでした。アメリカというお国柄、もっとフランクに答えてくれるかと思っていましたが、これはとても意外でした。

インタビュー後は教室に戻り、撮影した動画を編集して、それをソーシャルメディアで配信しました。ドイツから来たクルーたちは、「喧嘩をしているの?!」と思うくらい、お互いに自分の意見をぶつけ合っていました。チーム一丸となって、よいものをつくりあげようとしているその情熱に圧倒されましたが、映像を編集する際、クルーに質問すると、とても真摯に答えてくれました。学生としてではなく、共に働く一員として接してくれたことがとても嬉しく、貴重な経験となりました。

6.グラフィックデザインで学ぶこと

グラフィックデザインの授業では、描画ソフトや編集ソフトを使って、いろいろなものをデザインします。ある科目では、架空の会社を立ち上げ、その会社のコンセプトに則ったロゴ・WEBサイト・名刺・グッズなどをデザインしました。

パソコンを使って何かをデザインした経験がなかったので、やはりゼロからのスタートでしたが、先生がソフトの使いかたやデザインを手とり足とりアドバイスしてくださいました。

6-1.タイポグラフィ

デザインの勉強に本格的に入る前に、Typography(タイポグラフィ)というものを学びました。Typographyとは大まかにいえば、フォントのサイズや種類、レイアウトを工夫して、その文字をより美しく見せることです。

わかりやすい例があるので、下の画像をご覧ください。

上の段にあるTrustの文字をよく見ると、Tとrの文字間が少し空きすぎているのがおわかりでしょうか? WonderとVenderも同様です。この隙間を埋めてあげることで、単語の見栄えがよくなるのです。このテクニックをKerning(カーニング)といいます。最初のうちは、この隙間の加減がよくわからず、先生にダメ出しされていました。

もう一つ、タイポグラフィのわかりやすい例を挙げてみます。

子どものサマーキャンプのポスターをつくるとしましょう。

以下の文字を比べてみてください。どちらのフォントのほうが子どもらしい雰囲気が出ているでしょうか?

2番目のフォントのほうが、丸っこくて親しみやすく、子どもらしい雰囲気があると思いませんか? このようにタイポグラフィの授業では、シーン別に適したフォントや色なども勉強します。

6-2.いまに役立つデザインの授業

架空の会社を立ち上げる課題では、私は英会話教室を立ち上げました。まずは、会社のターゲットはだれなのか? コンセプトはどうするのか? などをみんなの前でプレゼンテーション。そして、デザインの途中経過を発表するCritique Day がありました。WEBサイトのデザインを発表したのですが、先生から「角ばったフォントのイメージとあなたの雰囲気が合っていない気がする。もっと丸みのあるフォントを使って、フレンドリーな雰囲気を出したほうがいいよ」とアドバイスをもらいました。一言にフォントといっても、それぞれ個性があり、おもしろい! と思ったことを覚えています。

この授業で勉強したことは、いまでも仕事で役に立っています。仕事柄、自分でチラシを作成することがあるのですが、授業で学んだフォントや色の使いかた、スペースの空けかた、配置などを思い出しながら作成しています。授業をとっていたときは、将来どんなふうにグラフィックデザインが役に立つのか、まったく想像がつきませんでしたが、いまとなってはこのクラスをとって本当によかったと思っています。

7.ユニークな芸術のクラス

芸術学科には、ユニークなクラスがたくさんあり、また先生たちもとても個性的でした。

7-1.唯一無二のクラスメイト

グラフィックデザインの授業初日、びっくりした出来事がありました。教室の外から犬の鳴き声が聞こえ、しかも、その鳴き声がどんどん大きくなって教室に向かってくるのです。ドアが開くと、黒のラブラドール犬が勢いよく中に入ってきて、走り回り始めました。一緒に入ってきた先生がこう言いました。「今日から一緒に授業を受ける、僕の愛犬・ガスといいます。よろしくね〜! あ、そうだ! 授業の前に餌あげなきゃ!」そして、おもむろに棚を開けると、そこには犬の餌と水の容器がすでに用意されていました。何とも自由な光景に、授業初日から、思わずお腹を抱えて笑ってしまいました。

授業後、さみしそうに窓越しに見つめてくるガス(笑)

7-2.青空の下でジュエリーデザイン?

ジュエリーの授業では、いつも地下の教室で作業をしていました。ある日、先生が「いつも地下にいたら息が詰まっちゃうわね。天気もいいし、気分転換に外で授業をしよう!」と提案してくれ、気持ちいい風に吹かれ、美しい緑に囲まれながら、リフレッシュすることができました。これはそのときに撮った写真です。みんな和やかムード。ディスカッションもはかどりました!

そしてすべての課題を終えると、なんと先生からドーナツとコカコーラの差し入れが!

砂糖たっぷり、で、いかにもアメリカンなドーナツ! 美味しくいただきました。

8.まとめ

芸術を専攻してよかったと感じたことは、先生と学生の距離が近いこと! 親身になってゼロから教えてくれたおかげで、たくさんの未知の世界に足を踏み入れることができました。

芸術の科目は作品をつくるだけではなく、歴史の勉強をすることもあります。芸術史ではむずかしい言葉がたくさん出てくるので苦労することもありますが、作品をつくる上では、あまり言葉の壁は感じません。制作プロセスを通じて、クラスメイトや先生とコミュニケーションをとりますが、英語力そのものが問題になることもありません。感性とか個性、センスのようなものが大切ですね。

芸術専攻のクラスメイトの中には、ずば抜けて絵やデザインが上手! という子もたくさんいました。でも、特別な才能をもっていなくても、アメリカの大学の先生は一人ひとりの個性や感性、独創性を重視してくれます。

どの大学でも定期的にアートの展示会が行われます。感性を磨くチャンスもたくさんあります。芸術に興味のある人は、留学してアートの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか?


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