留学生におすすめ本: 『知的複眼思考法』

著者の苅谷剛彦氏は東京大学大学院教育学研究科を経て、アメリカの名門私立大学Northwestern Universityにて社会学の博士号を取得した、教育社会学を専門とする研究者です。実際の社会からの調査データを分析して理論を構築する手法を取る社会学の専門家であり、アメリカの大学で教鞭をとった経験もあるため、アメリカの大学・大学院留学をめざす方々にとって、苅谷氏の著作の中で語られる内容やものの見方に学ぶことが多いと思います。

そのような著作の1つとして『知的複眼思考法』(講談社)があります。苅谷氏は、自身がNorthwestern Universityの大学院で身につけた「考える力」を以下のように表現しています。

「的確に、批判的に、情報を読みとる能力。問題を探し出す能力。素朴な疑問からスタートして、それを的確な問いとして表現する方法。問いの立てかたと展開のしかた。論理的に自分の考えを展開する力。そして、なによりも問いをずらしていくことで隠された問題を探っていく方法」

ここにアメリカの大学・大学院でペーパー(レポート)を書くということが凝縮されていると思います。

まず、書こうとするペーパーのトピックに関連のある文献を読み、必要かつ質の良い情報を得ます。そのためには、書かれていることを鵜呑みにしないクリティカルな読み方が必要です。その情報を基にどのようなことを解明していきたいのかを探り、さらにテーマまで発展させます。そのテーマをどのような根拠を用い、どのような論理で展開して立証するかがペーパーの本質です。

苅谷氏が言う「問いをずらしていくことで隠された問題を探っていく」ということは、論理展開の過程において、論理的に考えたからこそ得られた、当初と異なる視点でそのテーマを見つめなおしてみると、テーマがさらに深いものになるという意味なのではないでしょうか。その深まったテーマを、再度、論理展開によって立証してペーパーを書き直したり、別のペーパーで立証していくということの繰り返しで、次第に考える力と書く力が鍛えられるのだと思います。

この『知的複眼思考法』は、アメリカの大学・大学院留学をめざす方々にとって、ペーパーを書くだけでなく、出願エッセイを書くためにもとても参考になると思いますので、ぜひ読んでみてください。


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