アメリカ留学に必要な「学生ビザ」の申請について
(2021.12.15更新)
アメリカの大学に留学する際には、F-1ビザと呼ばれる学生ビザが必要になります。これは、アメリカ大使館・領事館に申請して、発行されるものです。アメリカの移民法にもとづいて発行され、その手続のために、さまざまな書類を準備しなければなりません。さらに、領事の面接を受ける必要があります。
このページでは、そんな「学生ビザ」について、最新情報もまじえながら、詳しくご紹介します。
ちょっとむずかしい内容かもしれませんが、とても大切なことですので、しっかり理解して、適切なビザ申請に臨んでください!
〔もくじ〕
1.アメリカ留学に必要な「学生ビザ」とは?
2.学生ビザの申請プロセスと申請書類
3.留学生が知っておきたいSEVIS
4.パスポートと同じくらい大切なI-20
5.学生ビザの面接への対策
6.2021年度のビザ申請状況
1.アメリカ留学に必要な「学生ビザ」とは?
ビザ(VISA)とは、「査証」と訳されるもので、ある国に、外国人が出入国したり、滞在したりする際に必要になるものです。
国によってビザの種類はさまざまにありますが、アメリカの大学に留学する人は、「F-1ビザ」と呼ばれる学生ビザが必要になります。語学学校に留学する人でも、週に18時間以上授業がある場合、このビザが必要です。
アメリカのビザは、学生ビザのほかに、商用ビザや就労ビザ、交流訪問者ビザなど、さまざまな種類のものがあります。いわゆる「交換留学」では、「Jビザ」と呼ばれる交流訪問者ビザを申請することになります。
また学生ビザにはF-1ビザのほかに、職業訓練のために専門学校に通うなど、学問「以外」の目的で留学する人のためのMという種類のビザもあります。ただアメリカで「学生ビザ」といえば「F-1ビザ」が最も一般的ですので、このページではF-1ビザについて解説することとします。
このF-1ビザを得るためには、アメリカ大使館または領事館に申請することになります。申請が認められてビザが発行されると、パスポートに貼付されます。2021年の時点では、だいたい5年のビザがおりています。ビザの申請料金は160ドルで、手数料が18,400円です。
※2020年度は、コロナ対策のために「オンラインのみで授業を行う大学への留学生には新規の学生ビザを発行しない」ことになりました。とはいえ、オンラインと対面の組み合わせ(いわゆるハイブリッド)で授業を行う大学への留学の場合は、ちゃんと申請すれば学生ビザが発行されています。2021年度はほとんどの大学が対面授業を再開したので、ビザ申請へのコロナの影響はありません。
2.学生ビザの申請プロセスと申請書類
F-1ビザを申請するためには、以下の書類をアメリカ大使館または領事館に提出して面接を受けます。
- DS-160フォーム(オンラインの申請書)
- 申請料(Pay-easy対応のATM、インターネットバンキング、クレジットカードのいずれかで支払います)
- 現在有効なパスポート(ビザ申請時に有効期限が6か月以上残っているもの)
- 過去10年間に取得した古いパスポートすべて
- 過去にアメリカのビザを取得したことがある場合、そのビザが載っているパスポート
- カラーの証明写真1枚(5 cm×5 cm、6か月以内に撮影、背景が白色、眼鏡を外したもの):デジタル画像をDS-160フォームに取り込む
- 財政能力証明書(申請者本人、または保護者名義の英文残高証明書)
- I-20(後述します)
- 面接予約確認書
- SEVIS(シービス)費支払い確認書(SEVISについては後述します)
- 日本国籍以外の申請者は外国人登録証、または在留カードの両面のコピー
上記の書類を提出し、アメリカ大使館または領事館でビザ面接を行い、無事終了してビザ発行が決定されると、2週間後くらいにF-1ビザとともにパスポートやI-20、財政能力証明書などが郵送にて返却されます。
なお留学生の配偶者あるいは21歳未満の未婚の子どもが、留学生本人と同じ期間、アメリカに滞在する際には、「家族ビザ」が必要になります。ただしこのビザでは、アメリカで働くことはできません。家族ビザの申請にあたっては婚姻証明や出生証明といった書類が必要になります。
以上のほかに、学生ビザ申請にあたっては、補足書類として、
・日本と強いつながりがあり、アメリカで留学を終えたら必ず帰国することを示す書類
・留学資金が必要十分なだけあることを証明する書類
などが求められます。
SEVISの費用は、F-1ビザの場合は200ドルです。ビザ申請のための面接の3日前までに、オンラインでクレジットカードにて支払います。支払いが済むと、SEVISのWEBサイトから領収書をプリントアウトできます。ビザ申請時には、この領収書が必要になります。
ワンポイント:F-1ビザは「勉強」が目的
F-1ビザは「学生ビザ」ですので、
・ アメリカに滞在する目的があくまでも勉学であり、
・ 受け入れ先の学校があり、
・ 滞在中の学費や諸経費を支払うことができる
これらのことが認められて、はじめて発行されます。
F-1ビザの申請者がアメリカで働きたい、または移民したいといった意思があることが審査において判断された場合、F-1ビザの発行が却下されてしまいますので注意しましょう。
ワンポイント:F-1ビザの申請には早めの準備が肝心
ビザ申請は、渡米予定の3か月前までにすることが推奨されています。早めの準備が肝心です。
領事と面接を受ける際にはI-20を持参しなければなりません。面接を予約する際には、入学大学からのI-20の入手予定日を考慮して、時間に余裕をもって面接の予約をするようにしましょう。
3.留学生が知っておきたいSEVIS
ここで、アメリカの大学に留学する人にぜひ知っていただきたい、SEVIS(シービス)というシステムについて説明しておきたいと思います。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件、いわゆる9.11事件の実行者の一部がF-1ビザでアメリカに入国していたという背景があり、その後、留学生の入国や滞在をSEVIS(Student and Exchange Visitor Information System)という「学生・交流訪問者情報システム」で管理するようになりました。
各大学から、入学する留学生に対してそれぞれSEVIS番号が付与されます。SEVIS番号はI-20(後述します)という書類に記されています。
アメリカの大学に入学したら、留学生オフィスに行き、パスポート、F-1ビザ、I-20を確認してもらい、SEVISにおけるステータスを適切なものにしてもらいます。
SEVISにアクセスできる大学のスタッフは、DSO(Designated School Official)と呼ばれ、留学生の情報をSEVISに入力しています。
DSOは、それぞれの留学生がきちんと大学に在学し、フルタイム学生として必要な単位を取得しているかどうかを管理しています。
フルタイム学生とは、1セメスター(学期)に12単位以上を履修している学生のことです(大学院生の場合は、9~12単位以上としている大学が多いようです)。
もし、単位が認められないような悪い成績(※)をとってしまい、1セメスターの取得単位数が12単位未満になってしまった場合、必ず留学生オフィスに行って相談し、SEVISの記録を適切なものにしてもらいましょう。
留学生が成績不良や素行不良で退学になったり、何らかの理由で大学をやめた場合、DSOがSEVIS上でその学生の籍を抹消しますので、即刻アメリカを出国しないと違法滞在となります。
SEVISにおけるステータスはアメリカに入国する際にチェックされますので、適切なものにしておかないと、入国を拒否されることもありますので、十分な注意が必要です。
※アメリカの大学では、それぞれの科目についてABCDFの5段階で成績がつきます。Fがつくと、その科目の単位が認められません。
4.パスポートと同じくらい大切なI-20
I-20は、F-1ビザ申請に不可欠な書類です。また入学後も、留学生にとっては、留学生としての身分を保つためにきわめて重要な書類です。
合格した大学に数100ドルのディポジット(予約金)を支払い、入学する意思を示すことで、その大学がI-20を発行してくれます。
I-20は、アメリカの国土安全保障省(Department of Homeland Security)が作成している3ページ綴りのフォームですが、それぞれの大学が、入学する留学生に対して発行します。とくに、1ページ目に記載されている情報が正しいかどうかを十分に確認する必要があります。
I-20には、以下の情報が記載されています。
- 氏名
- 出生国
- 国籍
- 生年月日
- 入学する学校名・住所
- 大学到着時にコンタクトをとる学校のスタッフの名前
- めざす学位
- 専攻名
- 学位取得に要する期間
- 英語力
- 大学が始まる年月日
- 学費の金額
- 学費の財源
- 特記事項
- DSOの署名
- 本人の署名欄
アメリカを出国する時には必ずI-20を携帯しましょう。出国時にはチェックされませんが、アメリカに再入国の審査の際に必ずI-20をチェックされます。
休暇で日本に一時帰国する時だけでなく、陸続きのカナダやメキシコに行くときも忘れずに携帯しましょう。I-20は、パスポートやビザと並び、留学生にとってきわめて重要な書類ですので、取り扱いには十分な注意が必要です。
ワンポイント:渡米後に学校が変わるとき
アメリカの大学は9月が新年度です。その前の7月くらいに渡米して、アメリカの英語学校で1~2か月間の英語訓練を受けておきたいという人は、まず英語学校にI-20を発行してもらい、そのI-20でF-1ビザを申請する必要があります。
英語学校が終了した後に所定の手続をして、英語学校から発行されたI-20に記載されているSEVIS番号を、入学する大学に引き継いでもらいます。すなわち、その大学に入学した学生であることをSEVISにおいて明確にしておく必要があります。
SEVIS番号の移行に際しては、留学生本人が所定の書類に記入し、それを英語学校のDSOに提出して移行を依頼する必要があります。
さらに、引き継がれたSEVIS番号が記載されているI-20を、新たに入学する大学から発行してもらいます。そのI-20が在学中有効となります。
大学を転校した場合も同様の手続を行い、在籍していた大学から転校先の大学にSEVIS番号を移行してもらい、その番号でI-20を発行してもらいます。
渡米してから学校を変わる留学生もたくさんいますが、これらの手続をきちんと行っていないと、違法滞在とみなされる原因になりますので注意しましょう。
5.学生ビザの面接への対策
留学生にビザを発行するかどうかを決めるのは、領事です。ビザ申請にあたっては、領事と面接します。
領事としては、「留学と称してアメリカに移住する気はないだろうな」ということを、まずもって確認する必要があります。
なぜ領事が移住を疑うのかといえば、いまでもアメリカは世界で移住したい国ナンバー1だからです。世界の多くの人から見ると、アメリカはあこがれの国なのです。不法移民も1,100万人以上いるといわれています。
ですから、ビザ申請において大切なのは、留学が終わったら必ず帰国することを、説得力をもって示すことが大切です。卒業後はアメリカに滞在する意思のないことや、アメリカで働くつもりのないことを、きちんと領事に伝える必要があります。
面接の時間は短く、あまり長々と話すチャンスはありません。短く簡潔に答えられるように準備しておきましょう。英語力そのものは問われません。シンプルな英語で、単刀直入に答えることが大切です。
とくに以下の質問に対しては、自信をもって答えられるようにしておきましょう。
- どうしてアメリカで勉強したいのか
- アメリカでは何年間勉強するつもりか
- 留学中はどこに滞在するつもりか
- 留学が終わったらどうするつもりか
- 留学中の資金はどのようにまかなうつもりか
また領事も人間ですので、「印象」も大切です。必ずしもフォーマルなスーツを着なくてもかまいませんが、清潔感を抱かせるようなさっぱりした服装をこころがけましょう。
ワンポイント:留学生がアメリカで「働く」チャンス
学生ビザは、繰り返し述べてきたように「勉強すること」が目的で留学する場合に発行されるビザです。したがって、日本の一部の大学生のように、勉強そっちのけでアルバイトに精を出すということはできません。
ただし、学内のアルバイトであれば週に20時間まで働いてもよいということになっています。学内のアルバイトとは、寮の掃除だとか、食堂の配膳、図書館の受付といったものです。高給は望めませんが、勉強に支障が出ない程度であれば、いい経験だと思ってアルバイトをするのもいいでしょう。ただし、このことによって成績を落とすこのないように注意しましょう。
また大学を卒業後1年(理工系(STEM)の専攻の場合は3年)に限って、専攻分野にかかわる業種であれば就労研修を受けてもよいという制度があります。これを「オプショナル・プラクティカル・トレーニング」(OPT)といいます。
さらに、いわゆる「働く」こととは異なりますが、大学のカリキュラムの一環としてインターンシップに参加することで、アメリカで企業研修を受けることができます。インターンシップは、単位を取得できる「科目」ですが、大学や課程によっては必修になっています。
6.2021年度のビザ申請状況
コロナによって渡米が心配、留学が不安、という人もいると思いますが、2021年度はアメリカの大学は基本的にキャンパスをオープンしています。したがって、きちんと申請手続を行えば、問題なく(おおむね5年の)ビザがおりています。渡米にも2021年時点で支障は出ていません。ただし、ワクチン接種証明が求められます。
アメリカ留学の現状や見通しについては、当研究所でも最新かつ的確な情報収集に努めながら、順次、発信していきたいと思います。
また学生ビザに関しての公式情報については、「米国ビザインフォメーションサービス」のWEBサイトをご確認ください。
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というわけで、今回はアメリカ留学に必要な学生ビザについて、そしてそれに関連することとして重要な、SEVISとI-20について解説しました。
少しむずかしい内容だったかもしれませんが、私たち留学生は、あくまで外国人として、そして勉学を目的として、さらに勉学を終えたら日本に帰国することを約束したうえで、アメリカに滞在します。そのためには、さまざまな決まりごとを守らなければなりません。
この決まりごとを守らないと、不法に滞在しているとみなされてしまい、強制的に帰国しなければならなかったり、再渡米がむずかしくなったりします。
日本の人は、「ビザ」についてあまり意識することがないかもしれません。短期の旅行であれば、「ビザなし」で訪問できる国がたくさんあるからです。日本のパスポートは世界的な信頼が高く、ビザなしで入国できる国が150以上もあります。
しかし長期にわたって滞在するためには、必ずビザを申請し、有効な状態をキープしなければなりません。ビザのことで間違いが起きると、アメリカに入国すること自体がむずかしくなりかねません。
留学生にとってのビザ申請は、単なる手続ではなく、留学生としてアメリカの大学で学ぶことが法的に認められていることを証明するための唯一の道です。とても厳密なものとして心得て、油断せずにビザ申請に臨みましょう。
アメリカの各大学には、留学生をサポートするオフィスがあります。学生ビザやI-20、SEVISのことも、よく理解しています。わからないことや不安なことがあったら、自分の力だけで解決しようとするのではなく、こうしたオフィスの助けを借りるようにしましょう。
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