日本の大学に在学中にアメリカの大学に編入する場合、日本の大学で取得した単位をアメリカの大学に認めてもらう必要があります。それによってアメリカの大学の2年生あるいは3年生からスタートでき、在学期間や費用の節約にもなります。スムーズに単位を移行するにはいくつかのポイントがあります。
もくじ
- 1.編入留学は「単位の移行」が大事
- 2.単位が認められやすい科目を履修する
- 3.アメリカの大学のカリキュラムを理解する
- 4.講義要綱を英訳して提出する
- 5.アメリカの大学に交渉する
- 6.単位の移行が認められにくい科目
編入留学は「単位の移行」が大事
編入留学においては、「単位の移行」が大きなポイントになります。認められる単位数の上限はおおむね 60単位ですが、すべての科目の単位が認められるわけではありません。
よりたくさんの単位が認められれば、卒業までの費用と期間もそれだけ節約できます。そのためには、
- 単位が認められやすい科目を履修しておく
- 認められるべき単位はきちんと認めてもらう
ことが大切です。
このページでは、より多くの単位を移行するためのポイントをお話しします。
単位が認められやすい科目を履修する
アメリカの大学は、その大学で開講している科目と「同じレベル」で「同じ内容」の科目であれば、その単位を認めるというのが基本的なスタンスです。
したがって、編入留学をめざすのであれば、できるだけアメリカの大学で認められやすい科目を、日本の大学で履修しておくことが大切です。
最も認められやすいのは「一般教養科目」です。アメリカの大学では、だいたい 1, 2年生が学ぶ科目です。専門性が高い内容ではなく、その科目の基礎的なことを全般的に学ぶのが一般教養科目です。専攻にかかわらずこれらの科目はどの大学でも同じような内容・レベルのものを学ぶ、ということが全米の大学の共通理解として成り立っています。
たとえば以下のような分野と科目が、一般教養科目にあたります。
- 自然科学系の科目: 生物、化学、物理学、天文学、数学など
- 社会科学系の科目: 政治学、経済学、歴史学、社会学、心理学など
- 人文学系の科目: 文学、哲学、宗教学、外国語など
- 芸術系の科目: 音楽、美術、演劇など
「社会学概論」「心理学概論」「統計学の基礎」「哲学入門」「西洋美術史」といった、広く浅く学ぶ科目であれば、だいたい一般教養科目として単位が認められます。
アメリカの大学のカリキュラムを理解する
より多くの単位を認めてもらうためには、アメリカの大学のカリキュラムを理解することが欠かせません。 めざす大学が絞り込まれていなくても、いくつかの大学の Webサイトを読んでいけば、一般教養科目や専攻科目のあらましや、卒業要件についてイメージがつかめるようになり、より「認められやすい」科目というのも予想ができるようになります。
アメリカのほとんどの大学が、その大学の Webサイトでカリキュラムを公開しています。カリキュラムを調べる際のキーワードをいくつか紹介しておきましょう。
- Academics(その大学の教育内容全般)
- Graduation Requirements(卒業要件)
- Academic Catalog(日本の大学でいうところの「便覧」)
- General Education Requirements(一般教養の必修内容)
- Major Requirements(専攻の必修内容)
- Course Descriptions(講義要綱)
これらの項目について、複数の大学の Webサイトを読み比べていくことで、アメリカの大学のカリキュラムの構成がわかってきます。もっと深く読み込んでいけば、卒業までのカリキュラムも組めるようになります。どの科目の単位を移行して、どの科目はアメリカの大学で履修する、というシナリオも描けるようになるはずです。
アメリカの大学の Webサイトはもちろんすべて英語で書かれていますが、留学中に頻繁に接する用語もたくさん載っていますので、英語学習も兼ねて、ぜひチャレンジしてください。
単位のしくみについてより詳しくは、「単位と成績のしくみ」のページで紹介しています。
講義要綱を英訳して提出する
アメリカの大学が編入単位として認めるのは、その大学で開講している科目と同じ内容・同じレベルの科目の単位です。
アメリカの大学間での編入の場合は、それぞれの科目のおおよそのレベルと内容が理解しやすいですが、日本の大学の科目の場合はアメリカのような統一的な基準がないため、アメリカの大学からすると、科目のレベル・内容が明確ではないので、その単位を認めにくいことがあります。
その対策として、履修した科目についての講義要綱(Course Description)を、成績表とあわせて提出するようにしましょう。この講義要綱は、その科目で学んだことを端的に要約し、内容とレベルが伝わるように英文で作成します。アメリカの大学の Webサイトには、すべての科目について講義要綱が記されていますので、参考にするとよいでしょう。
アメリカの大学に交渉する
アメリカの大学の合否を審査するのは Admissions Officeというオフィスですが、単位の認否はこの Admissions Officeではなく、Registrar’s Officeという別の部署が行います。
アメリカの大学は全米および世界中からの編入生を受け入れています。Registrar’s Officeは、合格者1人ひとりの単位について、移行の可否を判断しなくてはいけません。もちろん単位の認否は、大学ごとに設定された基準によりますが、完全に一律的な判断はむずかしいので、交渉の余地もあります。
日本の大学の事情を説明したり、講義名だけでは認められそうになくても実際の授業を説明することで単位が認められる可能性もあります。先に挙げた講義要綱やシラバスなども、交渉の武器になります。積極的な姿勢で臨みましょう。
なお交渉がより功を奏するのは小さな私立大学です。大きな州立大学になると、なかなか交渉の余地がありません。
単位の移行が認められにくい科目
アメリカの大学に単位として認められないのは英語系の科目です。
日本の大学で学ぶ英語は「外国語としての英語」であって、英語が母語であるアメリカの大学の科目としては見なされないからです。将来、アメリカの大学に編入することを見据えて、日本の大学の英文科に進む人も少なくありませんが、じつは英文科の科目は、アメリカの大学には認められにくい科目ということになります。
ただし、英語を「外国語として」学ぶのではなく、「文学として」学ぶ科目については、一般教養の人文科学系の科目の単位として認められる可能性があります。シェイクスピアの戯曲を英語で読む科目などがそうです。第2外国語として学ぶフランス語やドイツ語なども、一般教養科目として認められます。
また法学や医学など、アメリカでは大学院でしか学べない科目については、アメリカの大学では単位として認められません。
職業訓練志向の強い科目(たとえば特定のソフトウェアの使用方法を学ぶような科目)やインターンシップ、それから学習スキル(リサーチの方法やレポートの書きかたなど)そのものを学ぶ科目も認められません。体育も、大学によっては認められにくい科目です。
栄 陽子留学研究所では、長年にわたって編入留学の指導を行ってきました。志望校選び、出願書類作成、単位の移行にあたっての交渉、奨学金の獲得など、留学全般にわたってサポートしています。
日本の大学からアメリカの大学へ...。ダイナミックな進路変更ですが、しっかりと準備すれば、必ずすばらしい経験が得られます。編入留学をお考えのかたは、ぜひ一度個別の「留学相談」においでください。