「留学したい」と思い立っても、「具体的にどんな準備が必要なのだろう?」「手続は自分でできるのかな?」など、留学に向けてどのような準備を進めていいのかわからない人も多いと思います。
「留学するなら、手続くらい自分でできないとダメだよ」という話も聞きますが、そもそも留学準備は自力でできるのでしょうか?
結論からいえば、留学準備を自力ですることは可能です。いまはインターネットにたくさんの情報があり、いろいろな情報を集めながら少しずつ準備を進めていくことはできるでしょう。
しかし、インターネットの情報は混合玉石で、自分に本当に必要な情報を取捨選択するのはなかなかむずかしいことです。
とくに長期で大学や大学院に留学する場合は、学校選びから出願書類の準備・作成、入学手続、ビザ申請など、すべてを1人でこなすのはとてもたいへんです。
まず学校選びが大きなハードルです。アメリカには4,000以上の大学あります。これだけの数の中から、自分の希望や適性に合う「ベストマッチ」の留学先を見つけるだけでも簡単な作業ではありません。
さらにアメリカの大学は、日本の大学のように1回の試験だけで合否を決めることはありません。願書、高校の成績、エッセー(自己アピールの作文)、推薦状、テストスコアなど、さまざまな書類を、時間をかけて審査して、合否の判断をします。英語が得意な人でも、完成度の高い書類をつくり、満足できる結果を出すのは相当の努力とスキルが必要です。
このように複雑な留学プロセスのサポートを行うのが、いわゆる留学エージェントです。
ただ「留学エージェント」といっても、それぞれに扱う国(アメリカ、イギリス、フィリピンなど)も異なれば、留学の形態(卒業を目的とする留学、語学留学、ワーキングホリデーなど)も異なります。
このページでは、留学エージェントを利用するメリットとデメリットから留学エージェントの選びかたまで、いくらかの「ウラ話」も交えながら、詳しく解説したいと思います。ぜひ参考にしてください!
もくじ
1.留学エージェントを利用するメリット
1-1.留学の情報収集をスムーズにできる
1-2.たしかな留学先選びができる
1-3.留学手続が確実になる
1-4.質の高い留学エージェントは「卒業」までサポートする
2.留学エージェントを利用するデメリット
2-1.費用がかかる
2-2.すべて留学エージェント任せではダメ
2-3.専門知識のない留学エージェントもある
3.「手数料無料」をうたう留学エージェントのからくり
4.留学エージェントのかしこい選びかた
4-1.留学カウンセラーの質を見きわめる
4-2.どれだけ入学させたかでなく、どれだけ卒業させたか
5.留学エージェントはあなたの人生を左右する
1.留学エージェントを利用するメリット
留学の方向性を客観的に定めて、留学手続をスムーズに進めるために、留学エージェントのアドバイスは役に立つでしょう。ここではもう少し掘り下げて、その利用のメリットを見てみましょう。
1-1.留学の情報収集をスムーズにできる
留学エージェントを利用するメリットの1つが、「留学に必要な情報を効率よく集められる」です。インターネットや書籍からでも情報は得られますが、いまは情報があまりにも多すぎます。自分にとって本当に必要で、たしかな情報を選び出すのは手間と時間がかかります。
アメリカの教育に精通し、大学の入学審査官である「アドミッション・オフィサー」とも頻繁に連絡をとっているような留学エージェントは、インターネットには載っていない最新の情報や、キャンパスの環境や雰囲気などの現地事情を知っています。不安や疑問があればすぐ相談でき、適切な情報をリアルタイムで得られるので、情報収集の手間が省ける分、英語の勉強をしたり、在学校の成績を上げたりすることに専念できます。
1-2.たしかな留学先選びができる
留学準備の際にまず立ちはだかる大きなハードルが、大学選びです。留学エージェントを利用する大きなメリットも、この大学選びにあります。
アメリカには、種類や規模、立地もさまざまな、個性豊かな大学が4,000校以上もあります。その中から、自分に合った大学を探し出すのは、まさしく「至難の業」です。
留学エージェントのカウンセラーと面談を重ね、留学の動機や将来の夢、長所、特技、留学先で何をしたいのか、などを熟考することで、留学の方向性がはっきりして、自分にとって「ベストマッチ」の大学を見つけやすくなります。
留学の大きな方向性が決まったら、日本での成績や、英語力、費用などの条件をもとに、学校選びや留学手続について、「いま・何をしたらよいのか」、具体的なアドバイスが得られます。質の高いサービスを提供している留学エージェントは、1人ひとりの留学希望者に多くの時間を割き、留学に対するビジョンを明確にしていくことで、本人と大学の相性を考えながら大学選びを導いていきます。
1-3.留学手続が確実になる
留学エージェントを利用することで、確実な留学手続ができる、というメリットもあります。
アメリカの大学に出願するには、願書やエッセー、推薦状、TOEFL®テストなどのスコアなど、提出しなければならない書類がたくさんあります。そのため、留学手続は時間に余裕をもって進める必要があります。具体的には、入学時期の半年から1年前くらいには、準備を始められるといいでしょう。
大学に提出する書類は、がんばれば自分でも用意できます。ただアメリカの大学は書類審査で入学生を選抜するので、これらの書類をいかに魅力的に、完成度を高くつくれるかどうかが、大学に合格するための大きなカギを握ります。ただ書類がそろっていればよい、というわけではありません。
サポートがしっかりしている留学エージェントでは、エッセーの書きかたから推薦状の人選、書いてもらうポイントなど、細部にわたってアドバイスを受けることができます。実績のあるエージェントは、出願後も、個別に大学にコンタクトし、出願者の長所をアピールしたり、奨学金獲得のために交渉したりしてくれます。これは自力ではなかなかできないことです。
1-4.質の高い留学エージェントは「卒業」までサポートする
留学エージェントの中には、渡米前の留学準備だけでなく、留学中の現地サポートが充実していて、大学生活で困ったことなど、さまざまな相談ができるところもあります。
実際に留学生活が始まると、自分で解決しなければならないことも多いのは事実ですが、いざとなったときに日本語で相談ができ、適切なアドバイスをしてくれるサポーターがいることは、とても心強いはずです。日本の親御さんも安心です。
2.留学エージェントを利用するデメリット
では、留学エージェントを使うにあたって、どのようなデメリットや注意点があるでしょうか。
2-1.費用がかかる
留学エージェントを利用するにあたって、一番気になるのは、費用ではないでしょうか。自分でやれば無料で済む手続ですが、エージェントを使うと、たいていは一定の手数料を支払う必要があります。
とはいえ「留学費用を節約したい」という気持ちはわかりますが、すべて自分で、というのは孤独な道のりです。
情報収集に手間どり出願に間に合わなかったり、何を基準に学校選びをするべきかわからず留学をあきらめてしまったり、現地の情報に精通していないためにレベルの低いコミュニティ・カレッジ(公立の二年制大学)に行ってしまったり、さらには英語が苦手だからと語学学校に留学してしまったり、と残念な思いをすることになりかねません。
それよりは、自分が納得いく、質の高い留学エージェントを利用することで、最短で卒業にこぎつき、結果的に留学費用を抑えられる場合が多くあります。
2-2.すべて留学エージェント任せではダメ
留学エージェントを使うことにしたから、あとは安心。自分は何をするでもなく、言われた書類にサインして、渡米するだけ、というようなケースにはデメリットしかありません。
留学エージェントに手続をお願いするにしても、すべてエージェント任せで、大学からの書類やメールにも目を通さないまま、エージェントに何もかも日本語で用意してもらい、留学する本人が現状を理解しないまま、現地に着いたあとに、こんなはずではなかった、というケースはたくさんあります。
エージェントを利用しても、留学するのは自分だということを忘れずに、1つひとつの手続をきちんと納得しながら進めることが欠かせません。
2-3.専門知識のない留学エージェントもある
留学エージェントを利用するときは、そのエージェントに豊富な知識や経験、留学の専門知識があるかどうかを見きわめることも重要です。
旅行代理店の勤務経験がある、短期間だけアメリカに滞在したことがあるというだけの人が、単にビジネスの手段としてエージェントを経営しているケースも少なくありません。旅行と留学はまったく違うにもかかわらず、です。
エージェントによっては、自分が希望する留学ではなく、エージェントにとって手続が楽で、紹介料がとれる「提携先」に留学することになってしまうケースもあります。費用が安く、高校を卒業していればだれでも入れるような大学を、パッケージ旅行を販売するような感覚で紹介してくる可能性もあるので、利用者がかしこくなって、そのようなデメリットは回避したいものです。
問題のある多くの留学エージェントは、あらかじめいくつかの大学を提携校として用意して、パッケージ商品として留学希望者に売っています。「学費が安い」「英語学校併設」といった売り文句で、留学希望者の目的や興味、能力などおかまいなしに、だれでも入れるような大学に押し込めるのです。実際に大学に着いてみると、日本人学生だらけというケースもめずらしくありません。
また、留学希望者の英語力を問題にして英語学校に強制的に入れられる場合もあります。「TOEFL®テストで◯点をとれば大学に入学できる」といった文句で誘ってきますが、英語学校でTOEFL®スコアが上がるとは限りません。そもそもアメリカの大学はTOEFL®テストだけで合否を決めるものではありませんし、日本の高校をきちんと卒業できる程度の英語力があれば、アメリカの大学へきちんと大学生として入学することを志すべきです。
3.「手数料無料」をうたう留学エージェントのからくり
インターネットや留学関係の書籍には、アメリカ留学の手続を無料で提供する留学エージェントの広告を見かけます。よく読むと、そのほとんどが、語学留学専門のエージェントであることがわかります。
語学学校へ留学するのであれば、その手配は無料でやってくれる、ということですが、どのようにしてこのようなビジネスが成り立っているのでしょうか。
海外にある数多くの語学学校は、生徒を世界中から集めるネットワークなどはもっていません。そこで頼りになるのが各国の留学エージェントです。留学エージェントは、語学学校に生徒を送る見返りに、1人あたりいくらという紹介料をもらう、という仕組みです。
手数料ゼロ、すべて無料! をうたうエージェントは、そのほとんどが提携する語学学校からの紹介料で運営されているため、留学相談に行くと、特定の学校やプログラムを勧められる、という傾向があります。それが、自分の希望と一致する場合は問題ありませんが、自分の希望とは違う留学を勧められることにもなりかねないので、注意が必要です。
アメリカの大学に留学するには、大学選びから願書などの書類をそろえるだけでも一苦労です。そのアドバイスから手続の一切を、すべて無料でできるというエージェントは、まずありません。
もし無料で大学留学の手続ができる、というエージェントがあるとしたら、それは、英語のスコアなどが必要ない、高校を卒業していればだれでも入れるようなコミュニティ・カレッジ(あるいはその付属の語学学校)に願書を出すだけなら無料、といった具合です。コミュニティ・カレッジであれば、願書と成績証明書だけで出願できてしまいます。語学学校への留学であれば、それこそ「自力」でも十分にできます。
それなりにしっかりした教育環境が整っている大学に留学するには、現地の教育事情に精通した専門家の指導を受けるのが確実です。そのためにいくらの費用を支払うか、これは個々人の考えかたにもよるでしょう。
4.留学エージェントのかしこい選びかた
昨今では、アメリカ留学を扱っている留学エージェントはたくさんあります。そういった留学エージェントの中には、「アメリカの教育システム」や「出願および合格のための方法」、「卒業するための勉強方法」などの専門知識をもってないエージェントもあります。そのようなエージェントは、先に述べたように、パッケージ旅行を販売する感覚で、留学希望者に英語学校やコミュニティ・カレッジを紹介していることもあります。
ここであらためて、かしこい留学エージェントの選びかたを考えてみましょう。
4-1.留学カウンセラーの質を見きわめる
質の高い留学エージェントには、進路指導のプロである、自身も留学経験をもつ留学カウンセラーが必ずいます。アメリカの大学に関する知識はもちろん、授業の選びかた、勉強方法、卒業のためのノウハウといった面でも深い知識があり、入学から卒業までをサポートしてくれます。
よい留学カウンセラーは、たとえば、「アメリカの大学に入ってからの勉強はどうすればよいですか?」、「どういう点に気をつけて履修科目を選べばいいですか?」、「この程度の英語力と学力、予算ではどのような留学の可能性がありますか?」といったことを尋ねると、明快に答えてくれます。
その留学エージェントがアメリカの教育に熟知していることも、あらかじめ確認しておきたいところです。留学をきちんと「教育」の観点から位置づけてくれるエージェントを選ぶべきでしょう。
もし卒業を目的とした留学をめざすなら、留学カウンセラー自身がアメリカの大学を卒業していることも確認しましょう。語学留学しか経験したことがないカウンセラーは、アメリカの大学教育の「厳しさ」を認識していないこともあります。
4-2.どれだけ入学させたかでなく、どれだけ卒業させたか
多くの留学エージェントが入学率の高さをアピールしますが、これはあまり意味がありません。なぜならば、アメリカの大学は「卒業する」のがむずかしいからです。まして、だれでも入学できるような大学がアメリカにはたくさんありますから、入学率が高いだけではプロの証とはいえません。
よい留学エージェントは、パッケージツアーを販売するようにどんどん留学生を送り込むのではなく、卒業までを視野に入れた大学選びと留学準備を指導してくれます。
5.留学エージェントはあなたの人生を左右する
自分に適した留学エージェントを選ぶためには、複数のエージェントを比較して、相性の合うエージェントを選ぶのが一番です。ほとんどのエージェントが無料の留学セミナーや留学講演会を行っているので、面倒でもいくつか足を運んで、肌で感じることが大切です。
手数料が安い、学費が安い学校を紹介してくれる、というような理由だけでエージェント選びはしないこと。自分の要望を真剣に検討し、マイナス面も含めて正直に話ができるのが大切です。
留学は、大きな決断です。その後の人生をドラマティックに変えるだけのインパクトがある一大イベントです。留学エージェント選びもまた、あなたの人生を左右するものであると心得て、慎重な判断をするようにしましょう。