激レアな留学体験。アメリカの大学で士官候補生隊に入隊!

アメリカのバージニア州にあるMary Baldwin Universityに留学中のAiraさんが栄 陽子留学研究所を訪ねてくれました。

AiraさんはVirgina Women’s Institute for Leadership(VWIL)という、アメリカで唯一の、女性だけの士官候補生隊に入隊する、というユニークな経験をおもちです。そのたぐいまれな経験を語ってくださいましたので、ここで紹介したいと思います。

VWILのメンバーたちと
VWILのメンバーたちと

英語ができないまま留学

私はバージニア州のMary Baldwin Universityに編入し、政治学を専攻しています。いざ授業が始まると、まったく聞きとれず驚きました。英語が苦手でほとんどできない状態での留学だったため、コミュニケーションをとるのも一苦労でした。

大学には日本も含めたアジア各国から交換留学生が12名ほど来ていましたが、留学生同士で固まることが多く、英語がなかなか伸びにくいと感じていました。

英語力をどう上げるのか、いかに友人をつくるのか、まずはこの2つの課題を解消するために、現地の人と積極的にかかわろうとしたのが、VWILに入隊する1つのきっかけになりました。

集合写真
VWIL総出の記念写真

入隊した日本人は私が初めて

VWILはアメリカで唯一の女性士官候補生隊です。キャンパス内を制服で歩いている学生を見かけ、アドバイザーの先生に詳細を教えてもらいました。彼女たちは大学で普通に授業を受けながら、士官候補生としての訓練を受けています。

留学生はアメリカ国籍をもっていないので将来軍人にはなることはできませんが、VWILに入ることは可能でした(アメリカ人の場合は大学卒業後に一定期間軍に入ることを条件に奨学金が支給されます)。私は中学生の頃から日本の安全保障に興味をもっていたこともあり、入隊を決意しました。

VWILには現在55人ほどの人が所属しています。VWILに入りたいという理由でこの大学を選ぶ学生もいるようです。他国からの留学生は私が3人目で、日本人は私が初めてです。

入隊前には、司令官と面接を行いました。面接では、献身的であること、情熱的であること、身体能力が高いこと、責任感があることを見られるようです。

士官候補生隊の活動内容

VWILの活動は多岐に渡ります。体力訓練は週に最低3回あり、自分たちで内容を決め、実践的にリーダーシップを学びます。規則や歴史を覚えることも必須で、nULLと呼ばれる訓練生のときには週に1度テストが行われます。

パレードや式典も大事な行事です。3月にはセントパトリックデーのパレードをワシントンDCで行い、とても楽しかった記憶があります。

また、服装や部屋の点検もあります。服装も部屋もつねに正しくきれいに整えることが求められます。

そして、士官候補生隊では一部軍の階級が使用されているため、互いを呼び合う際に、階級(Captain:4年生、Sergeant:3年生、Corporal:2年生、Cadet:士官候補生、nULL:訓練生)を名前の前に付けて呼んでいます。

パレード
パレードは重要な行事

私を通して日本を知る

アメリカで実際に暮らしてみると、「じつは日本は自分が思っているほど世界に影響力がないのではないか」と疑問を抱くようになりました。

私は留学生なので、まだアメリカの本質に触れられるほどの経験はできていませんが、VWILの仲間たちと行動を共にすることで、アメリカ的な視点や思考を学ぶことができると考えました。

またその一方で、彼女たちは私を通して「日本」を見るかもしれません。そのため、活動には積極的に参加し、日本人として恥ずかしくないように心がけています。

仲間たち
大切な仲間たち

市民のリーダーとして

VWILの役職やシステムはさまざまに分かれています。その中の1つを紹介しましょう。

体力訓練においては、おもに各ROTCを含めた以下の5つの部門に分かれます。

  • Army
  • Air Force/ Space Force
  • Navy
  • Marine Corps
  • Citizen Leader

これら5つのうち、私が所属しているのはCitizen Leaderです。Citizen Leaderは文字通り市民の中のリーダーをめざすもので、VWILの中でも軍以外の道に進みたい士官候補生がここに入ります。

Citizen Leaderでは、セミナーで民間におけるリーダーシップのありかたについて協議したり、将来設計について学んだりします。

とはいえ、他のROTCの学生と同等の体力レベルが求められるため、決して甘いわけではありません。

たとえば、全士官候補生の体力訓練の成果は、Strength and Endurance Test(SET)という体力検定で評価されます。SETはアメリカ軍の女性の体力基準を補完しており、腕立て、腹筋運動、1.5マイル走で構成されています。

私はそのSETで春学期の終わりに同期の中で1位をとることができました。また、学業成績とSETの結果が優れた士官候補生に与えられるTop Gun Awardもいただくことができ、いままでの努力が功を成したと嬉しく思いました。

Top Gun Awardを受賞
Top Gun Awardを受賞

留学を通して精神力と体力が強くなった

通常の学業に加えて、VWILの訓練や行事が加わるため、非常に多忙な大学生活を送っています。成績を維持しつつ、VWILの活動との両立を図るのはかなり大変です。課題や授業、予習復習、VWILでの指示なども、もちろんすべて英語です。瞬時に相手の発言を理解できないこともあります。

時間も技術も圧倒的に足りない、しかしすべてこなさなくてはならない、という状況だったため、留学1年目にしてはかなりハードだったと思います。つねに限界の一歩手前にいるような精神状態でしたが、厳しい環境で鍛えられたおかげで、以前と比べて精神面、体力面共にかなり強くなったと思います。

この経験を人の役に立てたい

栄 陽子留学研究所では、栄先生ご自身が留学をされたときの経験談をうかがったり、力強い叱咤激励をいただきました。担当してくださったカウンセラーのかたも全員留学経験があり、アメリカに出発する前には、いろいろと相談に乗ってくださいました。初めての渡米でしたが本当に心強く、数々のサポートにとても感謝しております。

VWILに入隊したことで、英語力はもちろん、人間的にも大きく成長できたと思います。VWILで出会った士官候補生の友人たちとの思い出は一生の宝物です。

アメリカに来てこのような経験ができるとは入学当時考えていませんでした。多くの人の支えがあってたくさんの貴重な経験をさせていただいたので、この経験を将来人の役に立てたいと思っています。



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