アメリカの大学における厄介な問題。AIが解決できるか?

AIの進化が著しいのは日本もアメリカも同様です。アメリカのほうが、あらゆる場面で、より積極的にAIを活用しようとしているようです。大学教育の現場でも、AIをはじめとしたテクノロジーの進化によって、いままで抱えてきた厄介な問題(wicked problems)を解決できるだろうと、Western Governor’s Universityの研究所が述べています。彼らが述べるところの、アメリカの大学教育が直面する7つの課題と解決の道筋を紹介しましょう。

AI

アメリカの大学が抱える問題

課題① 高等教育へのアクセス

将来の学生たちは、オンラインやAIなどによって、高等教育にさまざま方法でアクセスできるようになる。

課題② 財政支援

アメリカの大学には、働きながら学ぶ学生が多い。成人学生はアメリカの大学生の4割を占めるといわれる。仕事と学業の両立はむずかしく、財政的な負担も大きい。そこで短期間で特定のスキルのみを身につける「ミニ課程」を増やすことで、これらの課題を解決する。

課題③ 帰属意識

オンラインで学ぶ学生が増えることによって、大学全体のコミュニティ意識が低くなるので、テクノロジーを活用しながら学生の帰属意識を高め、オンラインで学ぶ学生と対面で学ぶ学生の差をなくす工夫が必要になる。

課題④ デジタルツールの活用

学生たちはオンライン・ラーニングにもはや飽きてきている。AI等のデジタルツールが、いかに学習効果を高めるのか、大学はそれを示す必要がある。

課題⑤ 学習成果の多様化

卒業後、さまざまな職分野で即戦力となる人材が求められる。したがって「ミニ課程」のような、特定の分野に特化して学ぶプログラムの需要が高まる(ヘルスケアの分野にこれが顕著である)。ミニ課程や資格取得課程のような短期で安価な課程を充実させることで、大学は、企業からの要求にも、成人学生のニーズにも応えられるようになる。

課題⑥ 大学から職場へのスムーズな移行

企業の新人研修はAIが担うようになる。大学のほうも、企業が新人研修に大きな負担をかけずに済むように、より一層キャリア教育を充実させるようになる。

課題⑦ 将来の学習機会

大学はますます、伝統的な四年制課程ではなく、ミニ課程や資格取得のためのプログラムなどを充実させるので、学生の選択肢も増えることになる。

(以上、Higher ed has 7 ‘wicked’ problems. Here’s how leaders can solve themより)

いかに短期間で即戦力を身につけるか

このように、彼らの調査によると、大学は企業の要請に応えるべく、即戦力となるスキルや知識をもつ学生を「即成」する方向にどんどんシフトしていくということです。それにあたってAI等のテクノロジーが大きく活用されるだろうというわけです。逆に、伝統的な、一般教養課程と専攻課程をじっくり時間をかけて学ぶようなありかたは衰退していく、つまり時代のニーズに合わない、ということのようです。

たしかに、成人学生からすると、いまさら哲学や微分積分を学ぶよりも、仕事に直接役立つスキルや知識を手っ取り早く身につけたいと思うでしょう。そのために4年間も大学にいる必要はないし、何よりもそんなお金の余裕がないわけです。

大学の真の使命とは?

ただ、このような意見もあります。

いま仕事に役立つスキルが、3年後も役に立つかどうかはわかりません。何しろ変化のスピードが速い時代です。そのたびに学び直し(リスキリング)をしなければならない可能性も大いにあります。

むしろ、4年をかけてじっくり学び、人間形成をすることのほうが、長い目で見るとキャリア形成のうえで役に立つはずです。時代のトレンドに浮き足立つことのない「軸」を備えることになるからです。

大学の役目とは、ただ企業に人材を送り込むだけではありません。豊な人間性をはぐくむのが、まず大きな役割です。

Western Governor’s Universityの調査は、あまりに時流に添いすぎているようにも見えます。ハーバードをはじめ多くの一流大学は、いまでも一般教養をとても重視しています。さまざまな分野を学び、自分で考え、ディスカッションを通じて意見を交わし、寮生活においては協調性や寛容性を学ぶ。これが伝統的なアメリカの大学の姿です。そもそもアメリカの社会だって、即戦力にならないから役立たずだ、と決めつけるような狭量なものでもないでしょう。

AIは、このような伝統をもおびやかす存在になるのでしょうか。

みなさんは、どう考えますか?


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