女性の留学 -第5回- 留学という選択肢

(2021.4.1更新)

これからの女性たちの課題

あるお父さんが短大生のお嬢さんの留学のことでカウンセリングに見えました。

「私は基本的には娘の留学に賛成しています。これからの女性は、ちゃんと一生働ける準備をしないといけないと思います」 と言って、次のような話をされるのです。

――これからは、家族や社会や国のために生きるというより、自分自身の生活を楽しむという時代になるので、おのずと夫婦それぞれにお金がかかる。

要するに消費する時間やお金が膨大になってくる、というのです。

いまの40代、30代の人がおじいちゃん、おばあちゃんになったときはどうなるのか。団塊の世代が老人になる頃には、人口の4分の1が老人で、若い人の負担が大きくなり、年金制度もあやしくなる。

やはり自分自身でしっかり収入を得ないと、難しい状況におちいることになる。だから、これからは女性はもちろんのこと、人間はすべてプロとして通用する技能や才能をみがくべきではなかろうか。

お父さんのお話は、たいへん興味深いものでしたが、相談のポイントはそこにはありませんでした。

「でも、私の娘はそこまで考えて留学を志しているのかどうかは疑わしく、ただ憧れだけで留学したいと言っているような気がします」

結局、もう少しお嬢さんの考えがまとまって、十分に留学への準備ができたときでいいのではないかということで、とりあえずその娘さんの留学は先送りになったのでした。

しかし、このお父さんのお話は、これからの女性にとってたいへん重要な意味があるのではないかと思います。

すなわち、人間としての生き甲斐だの何だの言う前に、まず、普通のサラリーマン家庭なら、夫婦どちらか一方の収入ではとてもやっていけないということです。

いまだって、東京で暮らしていくとなると、二人で働いたって、なかなか大変です。

女性から見て、家つき親つきの大金持ちのぼんぼんと結婚して……なんて、まあ空想するのは自由だけれど、仮にそれが現実になったとして、お金には困らなくとも、どれだけたくさんの、そして、いつまで続くか想像もつかない精神的な抑圧を経験しなければならないこともあります。

20歳や30歳で、親のおかげでもないのに大金持ちなんていう男性はまずいないし、そんな人がもしいたら、ろくなことはない。気をつけてください。

経済的なものを男性にだけ求めてはいけません。社会の仕組みが、そういうわけにはいかなくなっているのです。旦那さんにたっぷりお金を稼いでもらおうなんて、そもそも考えないこと。

いまや女性も、一生続けられる仕事を探さなければならない時代になってきたのです。

私の周りには、離婚した女性が、子連れで、しかも初婚の男性と再婚するというケースもちらほらあります。独身で通そうと思ったって大丈夫。いまさら独身だからという理由で目立つこともなく、みんな社会の中で立派に生きています。

女性にとってアメリカ留学は危険なのか

ところで、女性の中には、アメリカは危険なところだから留学するのは心配だと言う人がたくさんいます。

たしかに絶対安全などと言いきれるわけがありません。しかし、だからといって、アメリカ人が全員拳銃をぶら下げて歩いているかのように思いこむのも、とんでもない。

アメリカ人の中にもニューヨークやロサンゼルスは怖いと思っている人がいっぱいいます。でもそういう大都市は、地図の上では小さな点にしかすぎません。

だいたいカリフォルニア州だけで、日本がスッポリ入ってしまう大きさです。アメリカの大部分は、大自然であり、小さな田舎町なのです。

その大きな土地柄のせいで、アメリカは寮制の学校がたいへん発達しています。それこそ何もない山の中にポツンと学校があったりします。

アメリカの田舎町は人口600人とかせいぜい2,000人とかいうのがいっぱいあって、鍵もかけない生活をしているところだってあるのです。

その昔から、アメリカは世界中の若者を受け入れ、家族同然に扱ってきました。日本人だって、どれだけアメリカの懐の大きさにお世話になってきたか考えてみてください。

アメリカ人は、日本がこんな大国になるずっとずっと以前から、そしていまも、日本人だけではなく、貧しい小さな国々の若者をホイと引き受けて、鍵を持たせて同じものを食べさせているのです。

田舎の大学のキャンパスは、それこそ危険とはまったく無縁といっていい世界です。セキュリティも万全ですし、エスコートサービスもあります。学生の安全と衛生を保つのは、大学にとっては最も重要な使命でもあります。

雄大な自然に抱かれた、緑いっぱいの美しいキャンパスで寮生活を送る限り、留学を危ないと考える必要はありません。

選択肢の1つとしての留学

日本の女性には、1つの選択肢として留学の道が開かれています。しかしこれはけっして安易なものではありません。自分の人生は自分自身で切り開いていくのだという、それなりの覚悟が必要です。留学はとてもすばらしく、エキサイティングな経験ですが、人生を大きく左右するビッグイベントでもあります。

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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