お金と留学と世界情勢。「いのちの価格」を考える

日本の特別支援学級

私事になりますが、私には孫が2人います。

1人は港区立の小学校1年生。

もう1人は同じく港区立の小学校4年生で、特別支援学級というのに通っています。

上の子は自閉症で、かつ知能指数が低いと言われています。

嫁は、周りの友人たちから「子どもたちをどこのインターナショナルスクールに入学させるの?」などと聞かれたたそうですが、子どもには食育がとても大切なので、ちゃんと栄養バランスと共に季節を感じられる日本の給食を提供する区立が一番よい、という私のアドバイスに従って区立に入学させました。

特別支援学級というのは、中学校までしかありません。

高校は義務教育ではなくなるので、進学先がいろいろむずかしいと思います。

入学させてくれることはあっても、孫のようにいろいろ問題のある子どもをそれなりに指導してくれるとは思えません。

アメリカのインクルーシブ教育

アメリカは高校まで義務教育ですし、そもそも「インクルーシブ教育」といって、いろいろな障害のある子も普通の子どもと同じように受け入れてくれます。

特別に先生も付けてくれるので、とてもいいのですが、うちの息子や嫁がアメリカに留学するか駐在するか、永住権をとるか、といった方法でアメリカに居住しなければ入学することができません。

私の留学研究所は、ボストンにも事務所がありますから、いまは東京の事務所で働いている嫁を転勤させることもできますが、息子の仕事をどうするのかという問題が残りますし、ボストンでの生活費はとても高くつきます。

私立のボーディングスクール(寮制の学校)で孫のような子どもを受け入れる学校がアメリカにはたくさんあります。

本当によく面倒を見てくれますし、先生と生徒の数の割合が1:10くらいですから、個人指導のようなものです。

また、孫のような子どもを指導するスペシャリストの先生たちが必ずいて、社会生活ができるように指導をしてくれます。

嫁は、孫のような子はアメリカのほうが生きやすいのではないかと思っているようです。

永住権はお金で買える?

こういう学校の難点は、なんといっても学費や寮費が高いことです。

1年度(9月から翌年5月まで)の学費と寮費と食費が約10万ドル、いまの為替レート(1ドル=150円)では1,500万円かかります。

3年間行かせるとなると、ざっと5,000万円近くのお金がかかるのです。

アメリカは、移民、難民、DVにシングルマザー、シングルファザーとあらゆる家庭があり、あらゆる考えの人がいるので、なんとか食べてさえいければ生きやすいと思います。

したがって、永住権をとればいいのですが、永住権を一番簡単にとれる方法で、EB-5という投資をして永住権を得る方法がありますが、これにはお金が1億円くらいかかります。

まぁ、お金があれば何でもできるという話になってしまいますが、上の孫だけでなくもう1人の孫のことも考えなければなりません。

まだ1年生ですから、何もわかりませんが、まぁまぁできるようであれば、飛び級でアメリカの大学に入学させてしまうつもりです。

下の孫にはなるべくお金のかからない方法を考えなければなりません。

トルコのマンション価格とアメリカ留学費用

平和な日本で孫のことをグチャグチャ考えていますが、一歩、外へ出ると、とうとう戦争まで起きてしまっています。

ウクライナの人もパレスチナの人も気の毒でなりません。

彼らの国からそう遠くないところにトルコという国があります。

エルドアンというちょっと変わった目立ちたがり屋の大統領のいる国です。

この国でマンションを買うと、なんと市民権が付いてくるのです。

みなさん、こういうこと知っていました? マンションは1,000万円くらいから買うことができます。

もし、ウクライナやパレスチナの人が、そのくらいのお金をもっていたら、トルコでマンションを買って移住してしまえば、命は助かるのです。

トルコの国境沿いに難民キャンプがあるのですが、1,000万円のお金がないので、トルコで仕事を探したり、おいしいものを食べたりできません。

1,000万円で命を失うか、生きることができるか、ということです。

まさに命がお金で買えるのです。

それも日本円で考えると、大金ではありますが、どうにもできないという額ではありません。

孫のボーディングスクールとトルコのマンション。

こういった不条理を考え、世界の人が何とか平和に生きる道をつくる一助になりたいと思う人間を育てたいと、私は50年も留学研究所をやっていますが、なかなか思うようにはいきません。

私の幼馴染みが電話をかけてきて、浪人して予備校に通っている孫に、「海外の大学とか考えたら?」と提案してみたら「意味がわからん」と返事されたと言っていました。

平和で食べ物がおいしい日本、どうする日本!


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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