下落し続ける日本の世界的地位。元凶は教育にあり!

世界から見た日本とは?

久しぶりに遠方に講演にでかけました。

ロータリークラブが主催したもので、小さい会だと思っていたら100人もいる大きな会でした。

最近の留学の傾向とかいった話かなと思っていたら、世界から見た日本というお題でした。

その町の名士と呼ばれるおじさんばかりが、一同に集まっていました。

あれまあ、じいさんばかりだなぁと思ったものですが、よく考えれば、私もばあさんで、そこにいる人たちは、けっこう私より年下の人がたくさんということです。

銀行の支店長とかいうと50歳くらいでしょうから、私よりずっと年下ですね。

世界から見た日本といっても、世界の一般の人は、日本のことなんかまったく知らないのです。

いまだに、当研究所から留学した人を見て、初めて日本人を見たという人だっているのです。

一重まぶたの人は、みんな中国人だと思っている人もいます。

ちょっと知っている人でも、東洋の片隅にある小さい小金持ちの国、とか、高齢者がすごく多い国とか、長寿の国、といった程度です。

世界の人は日本をほとんど知らない

最近は、海外の田舎のスーパーでも寿司を売っていますが、もとは日本のものだとはわかっていても、いちいち日本を結びつける考えはありません。

スパゲティやピザを食べてイタリアを思うことなんてないのと同じで、たくさんある食べ物の1つです。

ソニーとトヨタは知っていても、いちいち日本の国を思い浮かべるわけではありません。

日本に対して無視とか無関心というより、ほとんど知らないというところです。

日本の10,000円札は、昔からアメリカでは通用しませんでしたが、最近ではアジアでも通用しません。

ひと昔前は、中国でもタイでもベトナムでも10,000円札でものが買えました。

10,000円札のほうが喜ばれることもありました。いまは、まったくダメです。

それくらい日本の円の地位も国の地位も重要視されなくなったということです。

ひと昔前は、世界のトップ50社の中に半分くらい日本企業が入っていたのに、いまやトヨタだけです。

世界の潮流から取り残される日本の実態

そんなに日本の企業が落ちぶれてきているのに、いまだに入社の仕組みは変わりません。

大学3年生で就活をするために、小学校受験にまで影響が出ています。

そして大学受験で燃え尽きて、大学院に進学する人も少ない有様です。

人生100年と言っている割には、就活で失敗したら人生終わりみたいな考えを学生にも親にも刷り込んでいます。

そこで私は次のような話をしました。

アメリカは大学院が主体で、大学院に行く人がとても多い。

どんないい大学を出て大きな会社に入社しても、30歳くらいでマネジャーになりたいと思ったら大学院に入学してMBAを取得する。

つねにキャリアや学位を上げて自分を高く売る努力をする。

アメリカの博士課程の学生は基本的にTeaching AssistantやResearch Assistantという仕事をして学費は必要なく、いくらかの給料をもらえる。

したがって、いつでも、少々長い期間がかかっても、自分のペースで勉強できる。

いまの日本は世界に太刀打ちできない

GoogleなどIT系の職種によっては、データアナリストの博士号をもっている人を募集する。

またAmazonなどは、つい数年前まで毎週200人採用していたのが、いまでは18,000人もリストラしている。

そうやって企業は生き延び、かつ、必要な人材を入れ替えて成長する。

日本のように偏差値の高い大学の人間を100人採って一から育てていくなんて、呑気なことをやっていては太刀打ちできない。

昨年、当研究所から留学して博士号を取得して、アメリカの大学の准教授になった人の給料は23万ドル。

日本の大学は研究費も少なく太刀打ちできない。

ChatGPTができたおかげで、何でも生成AIがプログラミングしてつくってくれるので、アメリカではいまやプログラマーはどんどん仕事をなくしている。

代わりに生成AIにいろんな言語を入れたりうまい回答を引き出したりするPrompt Engineerが大募集されていて、これには哲学であれ数学であれ、あらゆる分野の博士号をもつ専門家が必要で、給料は35万ドル。

いまはこの仕事が花形。

日本はリカレント教育でいまからプログラミングをやろうという人がいる。

日本はやたら大学受験ばかりに気をとられていて、いい腕やセンスをもった職人さんの地位を上げられなかった。

エルメスやカルティエに負けないものは日本でつくれるし、世界に通用するはずのものがいっぱいあるけど、みんな日本の中で留まってしまって、世界では知られていない。

カルチェの宝飾品をつくっている職人さんは、初めから大学に行っていないが、誇りのある仕事をし、それなりに充分な生活を送っている。

だからだれも日本のことは知らない。

もっといろいろ話したと思いますが、後から聞いたら、みんなけっこうショックだったようで、すべて初めて知った、みたいな話ばかりだったとか。

そのことに私はショックを受けました。

どうする日本!


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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