コロナ禍で交換留学ができない。その問題の本質

留学生が来日できない

外国人の留学生が日本に入国できなくて、日本の各大学が困っているというニュースが出ていました。

とくに交換留学生は、相手側の大学には入学できると言われているのに、日本には入国できなくて不公平になり、今後、各大学との協定が維持できるか不安ということです。

当研究所にも、よく相談がありました。

アメリカの大学が交換留学生として入学を許可しているのに、日本の大学側が、外務省がアメリカを危険地域として指定している(感染症危険レベル:3(2022年1月時点))ので渡米してはダメと言っている。

アメリカの大学から、入学のためのいろいろな書類や指示がEメールで届くのだが、どうしていいかわからず困っている。

こういった相談です。

おまけに日本の授業は全部オンラインで大学に行くこともできません。

私費留学だと単位が認められない?

そのまま留学の話を進めれば、ビザも下ります。

したがって留学することは可能です。

ですが、日本の大学に帰国したときに、退学とまではならないでしょうが、交換留学の単位は認めない、同じ学年をもう1度やり直さなければならない、くらいのことを言われる可能性は大きいのです。

そもそも日本の大学は、交換留学の指定先としている大学に、交換留学制度(選抜・推薦されて留学する)を通さず、私費で留学した場合、まったく単位を認めないというのが普通です。

文部科学省は、若い人はどんどん海外に出て見聞を広めるようにしなさいと言い、外務省は危険、危険と言い、大学は交換留学こそが留学という考えですから、まぁめちゃくちゃです。

入学案内のパンフレットにみんな留学できるようなことが書いてあるのに、交換留学生に選ばれるのはとてもむずかしく、少数しか行けない。

また、3年生ともなれば、就活のことがあって留学しているわけにはいかないという声がたくさん聞こえてきます。

3年生で留学するのも、2年生のときにちゃんと用意できてなければなりません。

そんなこんなで、交換留学といえども私費留学といえども、1か月とか、せいぜい半年の語学留学みたいなものになるわけです。

アルバイト目的の留学

日本に留学を希望している学生たちが入国できずに困っているということですが、その中には、生活に困るという人たちもいるのです。

とくにアジアの人たちは、日本はアルバイトができるのでそれを生活の基本にする予定の人たちも多いのです。

留学生であっても、1週間に28時間まで働いていいのです。

夏休みや冬休みはもっとですよ。日本に行けば勉学も生活もできるのです。

いつ入国が再開されるかもわからない宙ぶらりんの状態で、不安定なまま時間が過ぎています。

アルバイトよりも成績が大事

日本で留学生がアルバイトできるというのも変な制度です。

アメリカでは当然できません。

学生ビザというのは勉学に専念することを約束する、ということで発給されています。

それにアルバイトができるほど勉学が楽ではありません。

そもそも寮生活ですし、大量の宿題が出て、予習・復習をしなければなりませんから、毎日、勉学でけっこうヘトヘトです。

成績が悪くなると、奨学金が止まったり退学になったりしますから、気が抜けません。

よい成績を残すことがとても大切なのです。

もちろん、休講なんてものもありません。授業はキッチリ行われます。

授業を休むということもあり得ません。

授業に出ないと、何がなんだかわからなくなってしまうので、致命傷になります。

また、何度も欠席すると、当然、成績が悪くなり、かつ大学側から、これ以上こんなことをすると退学になるぞ、というEメールが届きます。

それでも成績が改善しないと、退学になります。

もう大学に戻ってくるな、という通知が、学期の始まる前に届きます。怖いですよー。

コロナの教育界への影響

その点、日本の大学は楽ですね。

よく休講もあるし、テストは年に2回だし(アメリカでは中間テストもあります)、成績がどんなに悪くても退学にはなりません。

外国から来る留学生たちは、そのことに初めはとても驚くのですが、それを横目で見て、アホがいると思いつつちゃんと勉強する人と、それをよしとしてアルバイトに精出す人に分かれます。

このアルバイトに精出す人たちで、日本のコンビニや飲食店などは助けられているわけです。

どこのお店も留学生の店員さんがいっぱいいます。

東京の港区あたりになるとアジア系だけでなく欧米系の人もいます。

今回のコロナでこういった留学生の人は職を失いました。

港区あたりでは、自転車でUberの配達をしている欧米系の人をよく見かけます。

次の留学生が入ってこないとなると、コロナが落ち着いたら飲食店は人手不足で困ることになるそうです。

コロナのことでは、テレワークや経済のことばかり話題になっていますが、教育の分野も、いろいろと不都合になることが出てきています。

日本の教育全体について、もっと真剣に考えるべきときではないでしょうか。

 

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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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