留学生の就活:Boston Career Forum Report vol. 3 海外大生を採用したい企業と、海外大生の結婚が成立しない訳

第2弾で終了予定だった研究所のボストンオフィスからのレポートですが、続編のレポートがまだまだ届いているので、引き続き連載をしていきたいと思います。


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③ 海外大生を採用したい企業と、海外大生の結婚が成立しない訳 
  〜お見合い現場で見た矛盾とすれ違い〜
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国内市場も飽和状態で、海外に市場を求める「グローバル企業」が増加する中、外に広がろうとする企業に反して、中の社員が「外に行こう」と思えない。海外赴任したいと思う社員が少ないといった現実があるようです。


そこで注目を浴びているのは、海外大生。


日本からの留学生低迷、といわれていた2005〜2009年あたりには、景気低迷=節約で、ボスキャリの出展企業は100社前後に落ちこみましたが、海外進出、業績回復のためには、これからどういう社員を採用するかが大事。最近は海外大生採用の意気が高まり、今年は200社近くがボストンに集まりました。


その流れを受けて(かどうか知りませんが)アメリカに来る日本人の留学生の数も、少しづつ回復傾向にあるようです。研究所東京オフィスでも、問い合わせが3割程度増えたそうな。


そんな中、出展企業の人事担当者とお話しする機会もあり、なかなかボスキャリうまくいっていないんだなぁ、と感じることが多々ありました。


アメリカと日本の大学のシステム、就職活動のシステムが違うので、多くの矛盾が生じるのも当たり前なんですが、これを機会に、いろいろな矛盾を書き出してみたいと思います。また、普段から海外大生の話や感覚を聞いている私たちが感じる、「違和感」を含めて、つらつら書いてみたいと思います。


よく企業側から指摘されることは、「海外大生は就職の準備が甘い→企業研究もろくにしていない→将来をどう考えているんだ!」というお叱りの声。これは、いわゆる日本式の就職活動の流れに乗っかるべきだ、という前提があって生まれる発言です。


留学生の視点からすると、就職の準備ができていないのではなくて、就職先の会社の中身・情報が表示されていないことが問題。(それは、アメリカ企業採用の仕方が、ある一定の専門枠に空きがでたら採用するという、ピンポイントのマッチングが一般的なので、常に自分の畑、スキルを明確にしておく必要があり、また募集要項もかなり詳細のスペック情報が掲載される)


「自分の専門性をいかせる場所はありますか?ホームページや採用情報をみても、自分が探している情報がなかったもので」という問いに対して、「それは入社してから、人事部が社員の希望になるべく沿って、適切な部署に配属されるよう、相談を受けます」
企業側の本音は、「大学卒業したてのお前に、何ができる?全ては入社してから、教えてやる」ということ。


学生側は、「入社してから、自分のやりたいことができない、となったら残念。入社前に、この会社でいいかどうかを確かめるために、こうやって情報収集しているのに。」というようなことを考えます。


そもそも、人事担当者に会社の中の専門分野について聞かれても、知らないことが多く、実際に興味のある部署の社員と直接つなげてくれることはとても稀。


アメリカの採用システムでは、各大学の学部の就職課が、それぞれの生徒の専門性にマッチするインターン先を紹介。会社としては、関連する分野の知識や経験がすでにある学生を受け入れるので、トレーニングがしやすく、即戦力としていろいろ仕事を任せることも現実的。


学生は会社の社風ややり方を学び、経験を積んで、次の会社にいかそうと考えることも自由だし、そこにインターン先で就職をしなくてはならないという縛りもない。
システムが違うので、多くの矛盾が生じるのも当たり前なんですね。


どうして就職活動の準備が甘いかについて、採用担当者に知ってもらいたいこと。
(知っていると思っていると思うけれど、海外大生の視点/力/経験が欲しいのであれば、「ダメ出し」している場合ではなくて、もう少し聞く耳を持ち、自分たちのやり方を変えるぐらいしてもらわないと、海外大生にとって魅力的な就職先にはなり得ないということ)


● 留学生の現実①
10月末はちょうど中間試験(mid-term exam)の時期。9月から新学期が始まり、怒濤の勢いで中間に突っ込む学生には、1-2年後の卒業後の進路を考える余裕がはっきりいってない。1つの授業を落とすだけでも、GPA(成績平均値)はかなりの打撃をうけ、回復はとっても難しい。

「私たちは就職のために大学に通っているのではなく、大学で知識とスキルを得て、将来にいかせる自分を作るために、努力しているんです。なので、勉強はないがしろにできません!勉強<就職ではなくて、勉強も就職もどっちも大事。」


● 留学生の現実②
1-2年後の卒業後、そもそも日本で就職するか、アメリカで就職するか、迷っている人が多い。アメリカでの就労ビザの取得は困難でも、無理ではないし、就職のチャンスは年中ある。(アメリカ社会の多様性のなせる技)
日本の企業は、これからどれだけ変わるか次第で、魅力がでることも、魅力がなくなることも。 就職のチャンスは年に1-2回、卒業後1-2年経つと、応募資格を失う。(大企業に限り)


● 留学生の現実③
日本の外に出ていろいろな考え方や選択肢に出会い、日本での就職は多くの選択肢の中の1つでしかない。「大学卒業=就職」ではないということ。

→修士/博士課程まで進めば、勉強しながらお給料をもらうこともできるし、専門性を活かした「自分にしかできないスキル」を極めるのが、アメリカの労働市場で自分の価値をあげることにつながる。(日本では入社してから育てたいので、専門性があっては困る)


● 留学生の現実④
企業研究は、リクナビやウェブ上での情報収集が容易になっているので、やろうと思えばできるし、それなりに勉強もしてきている。ただ、面接では「どうしてうちで働きたい?」という明確な動機が必要とされるが、OB/OG訪問の機会が少ないために、はっきりいって各企業の中身は知らないし、自分個人と会社をリレートすることが難しい。


などなど。
留学生の声を弁明させてもらいました。


グローバル社会、海外進出に向け、変化を求められている日本企業。『伝統は守りながらも、いいとこは取り入れ、新しく革新していこう!』と謳っていても、現実どこまで変われているのでしょうか。


今までの日本式の就職活動、全社が足並みそろえて採用活動開始、一斉入社、そういった「国内向け」のやり方を、基本は変えずに「海外バージョン」に時期をずらすなどして、まかり通ると思っている。それがボスキャリ。しかも、多額の資金を採用活動に費やすことができる大企業のみ、参加できるボスキャリ。日本企業の従来のやり方と性質を利用して、成り立つビジネスですね。


それに代わる何かをはじめなければならない。


中小企業への就職に目を向ける国内大生が増えていると聞きますが、自立心があり、いろいろなことに興味を持って挑戦できる性質がある(そうしないとやっていけないアメリカでの大学生活を送った)留学経験者は、中小企業への就職の方が向いているかもしれません。


中小企業が参加できる「ボスキャリ」的存在があればいいですね。


結論が出たので終了します。
以上、長くなりました。



ミヤ


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