留学生におすすめの本: ”The Help”

以前、同名のタイトルの映画を観たことがきっかけで、原作で詳細を読んでみたいと思い手にした本です。この本は1960年代のミシシッピ州、ジャクソンという町を舞台とし、裕福な白人家庭に仕えるヘルプ(”Help”)と呼ばれる黒人メイド2人と、University of Mississippi(通称、Ole Miss)を卒業したばかりのジャーナリスト志望の若い白人女性(Skeeter)という3人を主人公とした物語です。2人のヘルプと白人女性のそれぞれの立場からそれぞれが語る形式で物語が展開します。

その時代のアメリカ南部地方では“Segregation”という政策のもとに、学校や住居をはじめ、交通機関、レストラン、スーパーマーケットに至るまで、白人と黒人が分離されていました。裕福な白人家庭にはヘルプが働いており、そのような家庭で心優しいヘルプに育てられた主人公Skeeterはヘルプたちに対して何の偏見もなく、彼女たちがどのような思いで白人家庭に仕えているのかを本として出版することを試みます。

ヘルプとして白人家庭の雑事と育児で生計を立て、最愛の息子を理不尽な死に方で亡くしながらもキリスト教への深い信心を糧に凛として生きる主人公の黒人女性(Aibileen)。白人によるヘルプに対しての理不尽な扱いと社会の不条理に常に怒りを感じ、その怒りが故に仕えている白人家庭からいつも解雇されてしまうもう1人の主人公のヘルプ(Minny)。この2人のヘルプが語る当時のアメリカ社会の人種差別や不平等、それに伴う貧富の差は現代社会からは想像も及びません。

黒人がかかる病気には、白人には免疫のないものがあるため、白人家庭で家族が使うトイレはヘルプには使わせず、戸外にヘルプ専用のトイレを作って使わせることが彼女たちにとっても幸せなのだという白人の勝手で根拠のない主張をきっかけとして、ヘルプたちが内面に抑えていたものがだんだん噴き出してきます。Skeeterが本を書くためにヘルプたちにインタビューすることが不可欠なのですが、とうとうAibileenがインタビューを受け入れ、口火を切ります。

AiblieenはSkeeterのまっすぐで誠実な人間性に少しずつ心を開いていき、インタビューを通じて自身の過去や現在の思いを静かに深く語っていきます。Skeeterに対しても白人女性ということだけで例外なく怒りを覚えていたMinnyも、怒りという表現も含め自身の思いをSkeeterにぶつけます。ヘルプが白人に対して個人的なことを語るなどということが発覚すれば暴動さえ起こりかねないという状況のなか、とうとう10数人のヘルプが協力し、本が出版されることになったのです。

人種差別が蔓延する社会において、人間としてのフラットな目で見た価値観を貫く若者Skeeter、人間としての尊厳を内面的に貫くAibileen、社会の不条理に対して怒りを爆発させながらも真摯に生きるMinny。3人の人間としての心の触れ合いや感情のぶつけ合い、それぞれが実際に語る内容が何かを教えてくれるはずです。アメリカ現代史の一部を人間的な側面から理解することができる本ですので、アメリカ留学を考えていらっしゃる方は、ぜひ、”The Help”を読んでみてはいかがでしょうか。

余談として、本を読んでいて1960年代という時代やアメリカ南部の特徴を象徴していると思ったこと:
白人経営の綿花プランテーションとそこで働く黒人、ヘルプによる白人家庭所有の銀食器・製品磨きの習慣、若い女性の所構わずの喫煙、女性にとって大学教育より結婚が優先、ミシシッピからニューヨークまでの驚くほどの航空運賃の高さ、南部の代表食は豆とフライドチキンであること、等々。


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