アメリカで名門大学といえば、ハーバードをはじめとした名門大学8校のグループ「アイビーリーグ」や、UCLAなどの州立大学、スタンフォードやMITといった私立大学がよく知られています。これらはいずれもそれなりに規模の大きな総合大学ですが、アメリカには小規模ながらもアイビーリーグに劣らない質とレベルを誇る名門大学があります。それらの大学は「リトルアイビー」と通称されています。

このページでは、アメリカの小さな名門大学であるリトルアイビーを取り上げて、その出願対策について考えてみます。

リトルアイビーとは

リトルアイビー(Little Ivy)とは、アメリカの小さな名門大学を指していう通称です。「小さな」というのは、学生数が1,000~2,000人規模の大学ということです。アイビーリーグハーバード、イェール、コロンビア、プリンストン、ダートマス、コーネル、ペンシルバニアの8大学を指すのに対して、リトルアイビーは、伝統ある小さな名門大学の俗称です。そのため、この言葉を使う人によって、リトルアイビーに含まれる大学はいくらか異なります。

「リトルアイビー」という言葉は、だいたい以下の3通りの使い方がされています。

(1)Little Threeの大学

“Little Three”とは、かつて存在した学生スポーツリーグのことで、Amherst College、Wesleyan University、Williams Collegeという名門3大学で構成されていました。リトルアイビーを最も小さく定義すると、この3大学になります。ハーバード、イェール、プリンストン3大学を指す“Big Three”と対照的に用いられる呼称でもあります。

(2)NESCACのメンバー大学

“NESCAC”とはNew England Small College Athletic Conferenceの略で、ニューイングランド地方(アメリカ北東部)の小規模大学から成る学生スポーツリーグです。11の大学から成り、いずれも歴史ある名門大学であるため、リトルアイビーとNESCACの加盟大学を同一視することもあります。このうちTufts Universityは総合大学ですので、リトルアイビーには含まれません。なおLittle Threeの3大学もすべてNESCACのメンバーです。

(3)全米各地のすぐれた小規模大学

Little ThreeとNESCACは、いずれも地理的にはニューイングランド地方に限られます。これに対して、地理の枠を飛び越えて全米各地のすぐれた小規模大学を指してリトルアイビーと呼ぶこともあります。Howard Greeneという人が“The Hidden Ivies”という本で紹介した24の大学が、その代表的なものです。


リトルアイビー、3つの分類

Little Three NESCAC "The Hidden Ivies"
Amherst College Amherst College Amherst College
  Bates College Bates College
  Bowdoin College Bowdoin College
    Bucknell University
    Carleton College
  Colby College Colby College
    Colorado College
  Connecticut College  
    Davidson College
    Grinnell College
  Hamilton College Hamilton College
    Haverford College
    Lafayette College
    Kenyon College
    Macalester College
  Middlebury College Middlebury College
    Oberlin College
    Pomona College
    Reed College
    Rhodes College
    Swarthmore College
  Trinity College Trinity College
    Washington and Lee University
Wesleyan University Wesleyan University Wesleyan University
Williams College Williams College Williams College

リトルアイビー、それぞれの大学の特徴

ここでは、ごく一般的なリトルアイビーの定義に従って、NESCACに加盟している大学のうち、Tufts Universityを除いた10大学と、それぞれの大学の特徴を簡単に紹介しましょう。

Amherst College アマースト・カレッジ(マサチューセッツ州)

1821年創立。日本とかかわりが深く、内村鑑三や新島襄が学んだことでも知られる。新島はこの経験を生かして同志社大学を創設した。内村の名を冠した奨学金もある。近隣のSmith College、Mount Holyoke College、Hampshire College、University of Massachusetts – Amherstでも授業を受けられる。しばしば全米でナンバー1と評されるすばらしい教授陣が持ち味。「アーモスト」と表記されることもある。

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Bates College ベイツ・カレッジ(メイン州)

1855年創立。ニューイングランド地方で最初の共学大学。自由と寛容性が学風としてみなぎっている。カリキュラム全体として、とくに言葉によるコミュニケーションを重視する。この大学で学び、ニュース解説に足跡を残した平沢和重の名を冠した奨学金もある。キャンパスの美しさでも定評があり、周囲の大自然はアウトドア派にはもってこい。最近は多様化にとくに力を入れている。

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Bowdoin College ボードウィン・カレッジ(メイン州)

1794年創立。大西洋に面した美しいキャンパスは、生きた自然教育・環境教育の場になっている。課外活動でも大自然を満喫する遠足が一番人気。学生の教授に対する評価は高く、キャンパス全体としての仲間意識も強い。出願者に対して、SAT®のスコア提出を必須ではなく任意とした大学として先駆け的な存在。

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Colby College コルビー・カレッジ(メイン州)

1813年創立。全米で最も早くマイノリティや女子を受け入れた大学の1つで、リベラルで革新的な学風が息づいている。近年は多様化・国際化に力を入れていて、留学プログラムに参加する学生も多い。キャンパスの一部は自然保護区域に指定されていて、環境学をはじめ自然科学の実習場として生かされている。

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Connecticut College コネチカット・カレッジ(コネチカット州)

1911年創立。リトルアイビーの中では新参。「学際性」がこの大学の特徴で、インターンシップや留学、教員と学生との共同リサーチなど、分野を超えてさまざまな学習機会がある。日本語で「コネチカット大学」というと、州立の総合大学であるUniversity of Connecticutを指すことが多いので混同しないよう注意。

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Hamilton College ハミルトン・カレッジ(ニューヨーク州)

1812年創立。学生の自主性を重んじるカリキュラムをしいていて、専攻を除けば、英語・数学・体育のほかに必修科目を設けていない。とくにコミュニケーション力を養う教育に力を入れている。授業は小さな大学らしくディスカッションが中心で、教授も指導熱心。半数近い学生が留学プログラムに参加している。

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Middlebury College ミドルベリー・カレッジ(バーモント州)

1800年創立。アメリカで最初にアフリカ系アメリカ人に学士号を授与した大学。このことからもうかがえるように、さまざまな価値観や個性を認める気風が特徴。全米で初めて環境学の課程を設けた大学でもある。「世界一美しい」と評されることもあるキャンパスは雄大な自然に抱かれ、冬はウィンタースポーツを思い切り楽しめる。

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Trinity College トリニティ・カレッジ(コネチカット州)

1823年創立。コネチカット州都に位置する歴史ある名門大学。柔軟性に富むカリキュラムは、学生主体で組まれる。留学やインターンシップに参加する学生も多い。マーク・トウェイン記念館が管理する図書館はトウェインの書簡を多く保管していることで知られる。

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Wesleyan University ウェズリアン大学(コネチカット州)

1831年創立。多様性と革新性に富む名門大学で、日本を含むアジア諸国から留学生を選抜し、4年間の学費を全額支給する奨学金システムを設けている。必修科目の数が少なく、学生が自主的に、自らの適性を探り出せるようなカリキュラムづくりがされている。

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Williams College ウィリアムズ・カレッジ(マサチューセッツ州)

1793年創立。オクスフォード大学の指導法を取り入れた“tutorial”システムでは、2人の学生に対して1人の教員が指導につき、緊密な導きのもとに自主課題に取り組む。また、アメリカで初めてキャップ&ガウンという、いまではお馴染の卒業式のいでたちを取り入れた大学であり、ほかにもさまざまな面においてアメリカ大学教育の先駆的役割を担ってきた。US Newsのリベラルアーツ・カレッジのランキングでは長年1位に輝いている。

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その他

これらのほかにも、名門という名に恥じないリベラルアーツ・カレッジは全米にいくつもあります。とくに中西部~西部の名門リベラルアーツ・カレッジは上記の伝統的なリトルアイビーをモデルとしてつくられた例も多く、その教育理念も共通します。ここではそれらの大学の名前だけ紹介しましょう。

Carleton College カールトン・カレッジ(ミネソタ州)
Claremont McKenna College クレアモント・マッケンナ・カレッジ(カリフォルニア州)
Colgate University コルゲート大学(ニューヨーク州)
Colorado College コロラド・カレッジ(コロラド州)
Davidson College デビッドソン・カレッジ(ノースカロライナ州)
Grinnell College グリネル・カレッジ(アイオワ州)
Haverford College ハバフォード・カレッジ(ペンシルバニア州)
Oberlin College オバーリン・カレッジ(オハイオ州)
Pomona College ポモナ・カレッジ(カリフォルニア州)
Reed College リード・カレッジ(オレゴン州)
Swarthmore College スワースモア・カレッジ(ペンシルバニア州)
Washington and Lee University ワシントン&リー大学(バージニア州)

小さな大学であることのメリット

これらリトルアイビーの大学の特徴をまとめると、以下の通りです。

  • 小規模であること
  • 私立であること(アメリカで名門と呼ばれる小規模大学はほとんど私立)
  • 伝統があること(だいたい150年以上の歴史をもつ)
  • 特定の地域だけでなく、全米から学生が集まること
  • 名門大学と呼ばれる質を備えていること

リトルアイビーにおける教育の質の高さは、小規模であることと密接に結びついています。アメリカでは、「大学は小規模」「大学院は大規模」が望ましいとよくいわれます。小さい大学のほうがより質の高い教育を受けられるというのが、アメリカの常識です。小規模であることのメリットを、5つのポイントに絞って見てみましょう。

ポイント1.クラスの規模が小さいこと

リトルアイビーの大学における1クラスの人数は10~20人ほどです。大きな大学では一般教養のクラスが数百人規模になることもありますが、リトルアイビーの授業は一般教養であってもディスカッションが中心です。1人ひとりの学生が自分の意見を述べるチャンスを得るために、クラスの規模を意図的に小さくしています。一方的に講義を聴く授業に比べて、はるかに刺激的ですし、発想力やコミュニケーション力が鍛えられます。

ポイント2.教員からていねいな指導を得られること

リトルアイビーで学ぶ学生の満足度がとても高い理由が、教員の質の高さと、その指導熱心なことです。大学院レベルのリサーチに重きを置く総合大学では、とかく指導よりも研究や学会活動が優先されがちですが、リトルアイビーはあくまでも大学レベルの教育を最重視しています。教員も全力で学生の指導にあたります。小規模であるだけに、学生の個性をよく見きわめ、きめ細かな指導を親しくする環境がリトルアイビーには整っています。

ポイント3.リーダーシップを発揮できるチャンスが多いこと

リトルアイビーをはじめ小さな大学では、1人ひとりの学生がリーダーシップをとれるチャンスがたくさんあります。授業で発言する機会が多いのはもちろんですが、寮生活やボランティア、スポーツなど、リーダーシップを担うさまざまな局面に出合うはずです。大学生活においてリーダーシップを発揮したことは、大学院進学において、また就職においてプラスに評価されます。

ポイント4.自主性が尊重されること

リトルアイビーによく見られる特徴が、カリキュラムが柔軟性に富んでいることです。必修科目や条件が少なく、学生が自らの関心を探り出し、主体的に学ぶ課題を掲げ、それに対して先生の指導や助言を仰ぐというのが1つの典型です。大きな大学になるほど、学生をある型にはめこむような傾向がありますが、リトルアイビーでは、個々の学生の自主性を尊重する気風が根づいています。これは大学と学生との信頼関係がしっかりしていることの証だともいえるでしょう。

ポイント5.大学院進学率が高いこと

大学院進学率が高いことも、リトルアイビーの大学にきわだった特徴です。リトルアイビー自体は基本的に大学院課程を設けていませんから、大学院に行こうと思えば別の総合大学に出願することになります(アメリカでは学士・修士・博士をそれぞれ別の大学で修めるのはめずらしくありません)。それで8割という卒業生が大学院に進んでいるようなリトルアイビーもあるのです。あらかじめ大学院へ進学することを想定した、徹底した基礎教育がリトルアイビーでは実践されています。

進学先としてリトルアイビーを選ぶ理由

アメリカには4,000もの大学があり、名門と呼ばれる大学だけを挙げても、アイビーリーグセブンシスターズパブリックアイビーやリトルアイビーまであって、アメリカの大学の層の厚さにあらためて驚かされます。

この選択肢の多さにあって、リトルアイビーをめざそうという人は、先に挙げたような、小さい大学であるからこそのメリットに有意義な価値を見いだしています。幅広い視野と知見を身につけ、親しく教授の指導を受けながら、しっかり学問の土台を築き、自らの進むべき道を探っていきたいというのであれば、小さな大学は適しています。大きな総合大学で学びたければ、いずれ大学院生として行けばよいわけです。

リトルアイビーの大学は、大学院レベルのリサーチに重点を置く総合大学とは異なる理念をもち、小規模であることに誇りをもっています。総合大学のほうが第三者のランキングにこだわったり、数字的に優位であること(ノーベル賞受賞者の数など)を誇示したがる傾向がありますが、リトルアイビーは、何はさておいても在学生への教育に目を向けます。「主役は学生」という考えかたです。

そもそも理念が異なる総合大学とリトルアイビーを比べても意味のないことですが、少なくともリトルアイビーの大学を、US NewsやTIMES HIGHER EDUCATION(THE)などのランキングに照らして評価するのは妥当ではありません。US Newsのランキングに対しては、Reed Collegeが調査を拒否したことをきっかけに多くのリベラルアーツ・カレッジが批判的な立場をとっていますし、THEは基本的に大規模かつ先端的リサーチを行っている総合大学を評価しています。

世界的な知名度はいくらか低いかもしれませんが、小さな大学ならではのメリットに目を向けるならば、リトルアイビーはほとんどの総合大学に勝ります。教授から親しく指導を受けながら自らの可能性を開花させたいのなら、リトルアイビーはその希望をかなえてくれるでしょう。

リトルアイビーへの出願対策

日本人が留学先としてリトルアイビーの大学をめざす場合に、まずは前提として、リトルアイビーに限らずアメリカの大学は、日本の大学のような一斉入試ではなく、以下の項目を多角的・総合的に審査して合否を決めるということを頭に入れておきましょう。

  • 高校の成績
  • エッセー(作文)
  • 推薦状
  • SAT®やACT®のスコア
  • TOEFL®テスト等の英語テストのスコア
  • 課外活動
  • 面接

リトルアイビーの合格率は、だいたい10~30%くらいです。アイビーリーグ8大学に比べると、わずかに入りやすいといえますが、それでもやはり超難関といえるレベルです。

これらの項目のうち、最も重視されるのは高校の成績です。これはアイビーリーグなどの総合大学の入学審査と共通します。ともかく高校でよい成績を修めること、これがリトルアイビーをめざすにあたっての第1歩です。

またエッセーや推薦状も、リトルアイビーの入学審査においてはかなり大きなウェイトを占めます。学力が高いことを踏まえたうえで、エッセーや推薦状を通じて1人ひとりの出願者の人間像をしっかり見きわめようというのがリトルアイビーの入学審査です。一方で、SAT®のスコアを求めない場合も少なくありません。パブリックアイビーをはじめ州立大学が、成績やテストなどの数字に偏りがちの審査を行うのとは、かなり対照的です。

課外活動(部活、ボランティア、アルバイトなど)の成果も非常に重視されます。とくにリーダーシップを発揮した実績があれば、よいアピールになるはずです。

学生の自主性を尊重するリトルアイビーでは、自主的にものごとを考え、判断し、実行する素質をもつ出願者を歓迎します。リーダーシップにしろ自主性にしろ、エッセーや推薦状を通じて、具体的なエピソードを示して大学にアピールできるといいでしょう。

関連する留学ブログ:ハーバードを含むアイビーリーグ8大学すべてに合格した学生

まとめ

アメリカの小さな名門大学、リトルアイビー。その知名度が比較的に低いことから「隠れたアイビー(Hidden Ivy)」と呼ばれることもあります。日本でもあまり知られていないかもしれませんが、アメリカでは良質の大学として、また学生の満足度がきわめて高い大学として、たしかな存在感を示しています。世界で活躍しているリーダーの学歴をたどると、これらリトルアイビーに行き着くこともしばしばです。留学先としても、とても魅力的な大学であるといえるでしょう。

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