高校留学体験談:栄陽子留学研究所
土子 麻衣子(つちこ まいこ)さん
St. Timothy's School(メリーランド州)卒業

高校留学編

高校留学編


第8回  ホストファミリーから学んだこと

動物園でボランティア

St. Timではシニアになると、4月終わりから5月にかけて1か月間、SPIと呼ばれるボランティアWorkをしなくてはいけない。それを終えてやっと卒業できるのだ。SPIはどんなことでもいい。

私の場合動物園で働きたくて、Washington D.CにあるNational Zooに電話で連絡をとって、ボランティアをさせて欲しいと頼んだ。だが、初めのうちは、私が留学生ということもあり電話の相手の声はあまり乗り気ではなく、とにかくだめもとで何回か動物園に電話をかけて自分のやる気をアピールした。そうしているとある日、動物園から電話がかかってきて、Bird Houseだったら働いてもいいということを伝えられた。ボランティア活動中はアカデミックアドバイザーの親戚の家でホームステイさせてもらえることになり、4月の下旬にアドバイザーの車でWashington D.Cまで送ってもらってホストファミリーと対面した。


ホストファミリーは4人と愛犬1匹

ホストファミリーには、小さな男の子と女の子、彼らのご両親と犬が一匹いて私をとても歓迎してくれた。私はホストマザーのベッツィと、とくに仲良くなった。彼女から見れば私はまだ19歳だし、うんと子どものはずなのに、いつも対等に扱ってくれていろんな相談話をしてくれた。

ホストファミリーの家には自動パン焼き器がおいてあって、とても美味しいパンができる。私があんまり美味しい美味しいと言うものだから、ベッツィは毎朝タイマーをセットしてパンを焼いてくれるようになった。動物園には朝7時半くらいには行かなければならなくて、朝はいつも5時半起き。ランチは持参なので、毎朝その焼きたてパンを使ってターキーサンドイッチを作っていた。

私の部屋は地下室。そこには私専用のバスルームがあって、TVやベッドが置いてあった。朝目覚めるとシャワーを浴び、服を着替えて階段を上がり、抜き足差し足でキッチンに手探りで向かう。まだ外は暗いし、朝早いから家族を起こしたくなくて、キッチンで静かにサンドイッチを作る。でも、犬はすぐ私に感づいて、2階にある家族の寝室を抜け出し、私に朝のあいさつをしに来た。足の爪が伸びすぎているせいで、カシャカシャとすごい足音を立てながら、2階からもうダッシュで降りてきて、キッチンにいる私に飛びかかってくるのだ。しかも毎朝。そして私が家を出る時はちゃんと玄関まで見送ってくれた。


「愛犬」のために臨時Houseシッターも

高校留学 イメージ1今はちょっとその犬の名前を思い出せないが、その犬とはまだほかにもいろいろと思い出がある。ある日、ホストファミリーが旅行に行くことになり、家を二日間空けることになった。私はお隣の家でお泊りさせてもらえることになり、犬は一匹、家でお留守番。

でもホストファミリーの家には、ちゃんとHouseシッターが来ることになっていた。犬の世話をしてもらうために。そのHouseシッターは、何回か家に遊びに来ていて私もよく知っている同い年の女の子で、私は、彼女と一緒に買い物をしたり、Washington D.Cにある有名な遺跡の場所に車で連れて行ってもらったりもした。

彼女とはその日も、Houseシッターに来るついでに一緒に映画を見に行く約束をしていたので、私はお昼頃にホストファミリーの家に寄って(私は鍵を渡されているので自由に家に入ることができた)、彼女が来るのを待っていた。でも、いつになっても彼女は来ないし、朝からトイレの中に閉じ込められている犬のことも気になった。家の中を荒らされたら困ると、犬は朝からトイレの中でお留守番をさせられていたのだ。中にはちゃんと餌や水も用意されていたものの、体の大きい犬には狭かったに違いない。

夕方になっても、その女の子は来ないし、どうしたんだろう?? と心配しつつ、一旦お隣の家に戻って夕飯を食べた。その後、「ホストファミリーの家にまだHouseシッターの子が来ていないみたいなので、犬のことも気になるしちょっと様子を見てきます」と家族にことわって、ホストファミリーの家に戻った。でも家の中は真っ暗。Houseシッターの子は来ていなかった。いてもたってもいられなくてトイレに真っ先に行くと、私の気配に気づいて犬がドアに体当たりを始めた。まるで「出してー! 出してー!」と叫んでいるようにワンワンと吠えながら。私もトイレのドアを一生懸命開けようとしたが、鍵がなかなか開けられなくてとても焦っちゃった。やっと開いたと思ったら、すごい勢いで犬が飛び出してきて家の中を狂ったように走り回り、最後は私に飛びかかって顔中を舐めてきた。よっぽど狭いトイレの中から外に出られたことがうれしかったのだろう。私は涙が出た。とにかく、その日から犬と私はますます仲良くなった。

その日の晩は犬の世話をして犬と一緒に遊んだりしていたが、10時ごろにまた犬をトイレに入れて隣の家に帰った。次の日もHouseシッターは来なかったため、私がHouseシッターをすることとなった。ホストファミリーが旅行から帰ってきた時に聞いたのだが、Houseシッターの子は家に来る途中交通事故になって家に来られなかったらしい。


厳しいアメリカのしつけ

アメリカの両親は、二人だけの時間を大切にする。たとえ子どもがいても子どもたちを家に残して二人だけで食事に行くことがある。ベッツィ夫婦もそうで、ある日、私は子どもたちのベビーシッターを頼まれてしまった。ベビーシッターなんてしたことないし、子どもは大好きだけどやっぱり責任が大きい分、不安も大きかった。でもチャレンジ精神が旺盛な私は、ベビーシッターを引き受けることにした。

ベッツィ夫婦には、小学4年生の女の子と6歳くらいの男の子がいた。女の子の名は、サラ。男の子の名は、アイザック。アイザックは家族一のトラブルメーカー。短気で怒りっぽくて、わがまま! だから、両親も彼の教育には苦労していた。でもベッツィ夫婦の教育で感心させられたのは、決して子どもを甘やかさないが、愛情をもっていつもちゃんと子どもたちと向き合っているところ。アイザックがどんなにわがままを言って泣きじゃくっていても、駄々をこねて暴れても、「うるさい! いい加減しろ!」と頭ごなしに怒鳴って子どもに手を出すのではなく1分くらいかんしゃくを起こして暴れたいだけ暴れさせる。それからアイザックをつかまえて2階に連れて行く。泣きやむと彼が納得して反省するまで根気よくとことん話す。

ある日、アイザックがいつも以上に駄々をこねて、反省のために部屋に閉じ込められてしまった日があった。キッチンで頭を左右に振ってため息をつくベッツィに「言うことをどうしても聞かないのであれば、アイザックのお尻をたたいて理解させることも必要なんじゃないのかな? 私は子どものころ叱られるとよくお尻をたたかれました」と言ったことがある。すると、彼女は「私は親として、子どもを暴力で何事も解決するという考えをもってほしくないの」と話してくれた。

日本の親たちの場合はどうだろう。ベッツィのように子どもをしつける親はどれくらいいるのだろう? 親の言うことを聞かない子どもを怒鳴りつけたり、なかには殴る親もいるだろうし、そういう親は「これは愛のムチだ」というおきまりの言い訳をして暴力を振うことを正当化する。

反対に、子どものしつけに暴力は使わないが、子どもを甘やかしすぎて、しつけが全然なっていない親だって多い。そういう子どもを甘やかしすぎている親たちは、子どもを大切にしているようで、実は自分自身に一番安易な選択をしているだけなのではないかとも思う。そういう親は子どもと向き合って話し合うのが怖いのだろうか? そうするだけの自信がそういう親たちにはないのだろうか?

ベッツィ夫婦をみていると、そんな疑問が頭をよぎる。ヒステリックに泣きわめく子どもと話し合いながら、なぜ自分が怒られているのかをちゃんと理解させ反省させることは、とても根気がいるだろうし時間がかかるだろう。でも、もし私に子どもができたら、私はベッツィ夫婦のようなしつけができる我慢強い親になりたい。ちゃんと子どもと向き合える親に。しつけには厳しいけれど、子どもは親の愛をちゃんと感じることができる、そんなベッツィのような母親になりたいなと思う。


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