アメリカ留学 = ホームステイと勘違いする人があまりに多いのでテロと息子の話をします。

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ニューヨーク大学がテロの際に行った対応

ニューヨーク大学

9・11テロ事件、あのワールドトレードセンターから一番近い大学が、ニューヨーク大学(New York University)でした。当時、私の息子はそのニューヨーク大学の大学院の学生で、彼の住む学生寮はあのビルからわずか5ブロックのところにあったのです。

息子の話によると、授業中にとつぜんの大音響が起こり、そのあと訳も分からないまま緊急避難の指示が出されました。授業中だった彼が持っていたのは筆記用具とノートと教科書だけ。

また、授業が無くて学生寮でのんびり休憩していた息子のルームメイトも大音響と共に、退避命令を受けました。学生たちは誰もかれも着の身着のまま。この直後に学生寮は閉鎖されたというのです。

そして大学側は、安全だと考えられた体育館に、水やサンドイッチ、マットレスなどを用意し、学生寮に戻れない学生が宿泊できるようにしました。2、3日後には、市内のホテルを2つ借り上げて寮として使えるようにし、学生一人ひとりに200ドルを補助しました。

さらに1週間後には、ブックストア(日本の大学生協のようなもの)に行けば、必要な教材が無料で手に入るようになり、授業が再開したのです。

この対応の速さに、私はたいへん驚いたものです。というのも、あのときアメリカはニューヨーク、ワシントンDC、ペンシルバニアという三つの場所で同時にテロが起こり、まさに国家存亡の危機というムード。空港は何日も閉鎖され、人々が安心して日常生活に戻るにはたくさんの時間が必要でした。

しかし、そんな中でニューヨーク大学は自らの力によって学生たちの生活を瞬く間に取り戻し、勉学に集中できる環境を整えたのです。

なんとも素晴らしい行動力を示したニューヨーク大学ですが、そもそもなぜ大学がそこまでやるのでしょうか。

大学がなぜそこまで学生の生活にこだわるのか

大学が学生生活をここまで守る理由を知るためには、日本に無いアメリカの家庭の常識を知る必要があります。

まず、アメリカの家庭は夫婦単位で成り立っており、子どもが大人になった後も、ずっと親と一緒に暮らすというのは一般的ではありません。

結婚しようがしまいが、職を得ようが得まいが、子どもは成長したら家を出なければならないのです。

そしてその家を出るタイミングとして最も重要視されているのが、この大学の学生寮なんです。

アメリカでは、「子どもは18歳になったら大学で寮生活をして親離れをする」のが一般常識。

なので、アメリカの大学生活は寮生活が基本であり、それが、社会の中で自立するために必要なことだと考えられています。

寮生活で学生は、掃除や洗濯は自分で行わなければなりません。これは一人で生活するための重要なトレーニング。

部屋は気の合わないルームメイトと一緒になるかもしれませんが、これも実社会で誰とでも良好な人間関係を築く予行演習になります。

もともと入学と同時に寮で暮らすことを義務づけている大学も多く、ハーバードなどは、4年間全員が寮生活を送ります。

また1・2年生は必ず寮に住まなければならないという大学もありますし、郊外に広大なキャンパスをかまえる大学などは、学生寮に住んでいないとそもそも通学すること自体が困難です。

つまり、大学生活 = 学生寮での生活なのです。

そして大学は、こういった哲学の元に運営されていますので学生達の1日24時間の生活に責任持ちます。ただ単に授業さえやっていればいいというわけではないのです。

何か事故が起こったときは大学が全責任をとって行動しなければなりません。大規模大学ですと、何万人もキャンパスに住んでいるのです。

例えば竜巻の多い地域では、どの大学でも、寮の地下が避難場所になるようにつくられています。

このような学生寮の在り方や考え方は日本ではあまり知られていません。

日本ではお遊び半分の語学留学や短期留学と、学位取得を目指す大学留学が一緒くたに理解されていて、ホームステイをすることが留学だと考えている人がいまだに大勢いるのです。

はじめに述べたニューヨーク大学の見事な対応でもわかるように、アメリカは寮生活・学生生活を実に大切にしています。

アメリカの大学教育の根っこは学生寮にありますし、この寮生活を味わうことこそがアメリカ留学の醍醐味ともいえます。

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栄陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院教育学修士課程を修了。帰国後、日本で留学カウンセリングを立ち上げ、留学指導を行い、これまでに7000人以上の留学を成功させる。留学関係の著作も多数。 » 栄 陽子留学研究所について