15年後の「留学」を考える

さまざまな価値観がある教育環境の方が面白い

最近、私が孫の話をするものですから(「長男の家に子どもが生まれたので50年先のことまで考えなくてはならなくなった」とよく話しています)、「孫にどんな教育を受けさせるつもりなのか?」という質問をよく受けます。

孫は、この4月から区立の保育園の一歳児クラスに入園したばかりです。小学校は、区立に行かせるつもりです。中学校も区立に行かせます。小学校では、学童保育も受けさせるつもりです。最近あちこちで知られるようになった学童保育ですが、私は30年前に二人の息子を学童に入れていました。

私の息子の頃から、区立の小学校や中学校は荒れているなどという噂を耳にしましたが、まったく何もありませんでした。いまも、やはり区立は荒れているという噂を聞きますが、これだけ世界が荒れている時代にどうってことないじゃないかと思っています。

むかし、息子を区立の中学校に入学させたとき、何人かのお母さんに「栄さんが息子さんを区立に入れたので安心しました」と言われたことがありますが、自分たちが税金を払って住んでいる地域を信用しないなんて、ちょっと考えてみればおかしな話です。

周りに商店街が多くて「商店の子どもたちは小銭をパラパラ使うから困る」というようなバカげた話を聞いたことがあります。そもそも商人はお金に対してシビアなはずですし、その親を見て育つ子供もお金にシビア。それに世の中へ出たら、お金の使い方なんて人によって本当にてんでバラバラなんです。だいたいお金に関してだって、色々な価値観をもつ子が周りにいれば面白いじゃありませんか。

ホンネは高校からアメリカ留学させたい

さて高校ですが、私の本音は、孫をアメリカのボーディングスクール(寮制の高校)に入れたいと考えています。

緑に囲まれた広大な敷地の中で、先生方も一緒に住んでいて、人間の生きかたや、幸福とは何か、人類はどう生きるべきか、地球を守るには、などなど議論し、文章で表現し、スポーツを楽しみ、芸術に親しみ。。。もう、それはそれは充実した青春を送れると思います。

受験のために塾に行くなんてこともなく、おケイコごとに通うこともなく(たとえば音楽の道に進みたければピアノのレッスンをする先生を用意してくれます)、また偏差値の高い大学に行けという指導もありません。夏休みはたっぷり3か月以上あって、夏休みの宿題なんてありませんし、希望すれば大学受験目的ではない、いろいろなサマーキャンプやスクールに参加することもできます。世界的に有名な大学も高校生向けのサマープログラムを開いています。

ボーディングスクールの魅力を書けばキリがないので、またの機会にしますが、私は孫を高校からアメリカに行かせたいと思っています。

留学費用の心配を今からしても・・・

ところが、いくつかの問題があります。一つは、費用があまりに高いことです。今年あたりは、食費・寮費を含めての1年間(実質9月~翌年の5月末)の費用が約60,000ドルです。日本円にして700万円以上です。

それ以外にも保険や交通費などさまざまな費用がかかります。寮に住むのでお金を使うこともそんなにないし、塾やおケイコごとにかかる費用が必要ないとしても、それでもやはり高額です。

昔、ハーバード大学の学費・寮費・食費は天文学的数字になると言われていましたが、それが本当に現実になってきて(※約65,000ドル 2015年現在)、それにつれて他の大学やボーディングスクールの費用もどんどん上がっています。毎年5~7%くらいの値上がりです。あと15年後にはどうなっているのやら。おまけに円だってどうなっているかわかりません。

私の母が96歳で存命なので、いま流行りの孫の教育預金とかいうのは曾孫でもいいんじゃないの、とか、父親たる長男がそんなに稼げる人間になるわけないじゃん、とか、まあゴチャゴチャ考えるんですけど、最後は、そのときになってみないとわからない、と居直っています。

大学から留学させること

私の40年以上にわたる仕事の経験からいうと、たとえば英語力という面では、大学からアメリカに行ってもどうということはありません。英検の2級くらいとっていればまったく大丈夫。高校から留学した人の方が英語力が高いなんてことはありません。

アメリカは大学も寮生活です。寮生活をして人とのコミュニケーションをはかることを、大学教育のとても重要な役割の一つと考えているのです。

もし経済的な問題が生じたら、しょうがない大学からアメリカに行かせることにします。

結局は孫本人のやる気次第

とまあ、いろいろ勝手に考えていますが、はてさて孫本人はどう思うやら。中学校くらいまでは親の言う通りにするでしょうが、高校くらいになると本人の主張も強くなるでしょうし、「アメリカの森の中で、寮制のややこしいところに行くのは嫌だ!」なんて言い出すかもしれません。

その上、こんなに激しく世の中が変わっていけば、15年後なんて、どんなことが待ち受けているかもしれません。

ですから、最後は「ときの流れに身を任せ」というところです。


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著者情報:栄 陽子プロフィール

栄 陽子留学研究所所長
留学カウンセラー、国際教育評論家

1971年セントラルミシガン大学大学院の教育学修士課程を修了。帰国後、1972年に日本でアメリカ正規留学専門の留学カウンセリングを立ち上げ、東京、大阪、ボストンにオフィスを開設。これまでに4万人に留学カウンセリングを行い、留学指導では1万人以上の留学を成功させてきた。
近年は、「林先生が驚いた!世界の天才教育 林修のワールドエデュケーション」や「ABEMA 変わる報道番組#アベプラ」などにも出演。

『留学・アメリカ名門大学への道 』『留学・アメリカ大学への道』『留学・アメリカ高校への道』『留学・アメリカ大学院への道』(三修社)、『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?(ワニブックスPLUS新書)』、ベストセラー『留学で人生を棒に振る日本人』『子供を“バイリンガル”にしたければ、こう育てなさい!』 (扶桑社)など、網羅的なものから独自の切り口のものまで、留学・国際教育関係の著作は30冊以上。 » 栄陽子の著作物一覧(amazon)
平成5年には、米メリー・ボルドウィン大学理事就任。ティール大学より名誉博士号を授与される。教育分野での功績を称えられ、エンディコット大学栄誉賞、サリバン賞、メダル・オブ・メリット(米工ルマイラ大学)などを受賞。

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