栄陽子留学研究所 アメリカの大学の歴史とシステム
 

アメリカの大学と教育の歴史(2)

リベラルアーツ・カレッジができてから140年後に、アメリカは独立戦争をへて、国になります。

国になったアメリカはいくつかの州が合わさってできた「合衆(州)国」です。それぞれの州は自治が強く、1つの州がまるで1つの国のようなものでした。  
各々の州はそれぞれの大学を作りました。つまり州立大学です。  

アメリカには日本人のイメージするような国立大学がなく、公立大学は「州立大学」になります。
アメリカにもウエストポイントやネイバルアカデミーなどの国立大学がありますが、それらはすべて軍関係の大学です。

  アメリカの州立大学は私立のリベラルアーツ・カレッジよりずっと後にできたものですから、日本の「公立は優秀」というイメージはないのです。

ところで、アメリカの州立大学の教育理念はリベラルアーツ・カレッジと全く異なるのです。州立大学は人格者をつくる「全人教育」ではなく、農学・工学・牧畜学などの仕事に役立つ「実学」を教えることを目的にしています。

 

州立大学はなぜ「実学」を教えることになったのでしょう?それはアメリカが移民の国だからです。

もともとアメリカは移民の国。裸一貫のような人がどんどん入ってきます。アメリカ人は自分達も移民でしたから、税金を使って「すべての移民に教育を受けさせよう」と思ったのです。そして移民にとっては、必要なのは教養ではなく実学でした。これが州立大学が「実学」中心になった理由です。*

*州立大学が「実学中心」になった背景には1830年代に始まったアメリカにおける産業革命がありました。

 

移民が増えるにつれて、州立の大学も増えていきました。

  だんだんとアメリカには「望めばだれにでも教育を受けるチャンスを与える」という考えができあがります。

さらに移民が増え、様々な分野の実学が必要になると、それに応じるために多様な大学ができてきます。その上、英語の話せない移民をも受け入れる大学や、学力がほとんどない人も受け入れる大学もできてきます。

 

次々に大学は作られ、アメリカにはリベラルアーツ・カレッジを含めて4000もの大学ができたのです。
各国の大学数は次の通り、日本1207校、ドイツ159校、イギリス87校、フランス83校、オーストラリア39校、ニュージーランド8校。

現在の州立大学の多様性をレベル別に分類すると次のようになります。
・ いい大学
・ まあまあの大学
・ 低いレベルの大学
・ だれでも入れる大学

上の・と・は「大学院」を中心として、多くの学部を持った大規模な総合大学がその典型です。・は低所得層の人や黒人などのマイノリティの人が多く通う4年制の大学です。・はコミュニティ・カレッジと呼ばれる2年制の大学です。

 

ヨーロッパではなぜ大学が少ないのか
ヨーロッパの大学ではリーダやエリートを育成し、その数は人口の1割か2割でいいのです。その代わりリーダーやエリートではありませんが、とくにドイツで見られるように職人さんたちの地位がとても高く、デザイナーやコック、ソムリエなど、若いときから腕や感性をみがいて一流になる人がたくさんいます。語学もよくできます。しかも一流になれば、勲章も授与され、社会的地位も名誉も得ることができます。したがってヨーロッパでは大学に行く人が少ないのです。ちなみに世界のブランド品では圧倒的にヨーロッパが強い理由はここにあります。

日本人は「大学=幸福の源」と考えています。だから多くの人が大学に行き、大学の数も増えたのです。
日本は大学を出なければいいお給料はとれない、つまり「大学=幸福の源」という考えが圧倒的です。社会のシステムもそうなっています。ですから、とにかく大学に行こうとします。みんな大学に行きたいから大学の数も増えます。その結果ヨーロッパにくらべると10倍もの大学ができてしまったのです。
しかも、日本人はどこの国でも大学進学事情は日本と同じだと錯覚しがちですが、実際はアメリカを除いて、どこの国でも大学進学率はとても低いのです。日本もアメリカとは別な意味で特殊なのです。日本の大学と外国の大学を同じようにとらえてはいけません。また、アメリカの大学とヨーロッパの大学は違いますし、アメリカの大学と日本の大学も違うのです。


州立の大学はだれでも入れるようにつくられたのですから、大学を選ばなければだれでもどこかの大学に入れるのです。しかも合否はリベラルアーツ・カレッジと同じように書類審査で決められます。だから州立大学でも一斉の入試はありません。

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