留学事情:栄陽子留学研究所
■ 当世留学事情

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第84回 癒し・医療系留学の心構え  『教材新聞』平成14年3月18日号掲載 

癒し系や医療系に留学したいという人がけっこう多いのです。やはり時代のせいでしょうかねえ。

多くの人はボランティアと仕事を勘違いしています。カウンセラーになりたい人は、自分が辛い目に遭ったから、自分が精神不安定であったから、カウンセラーになって人の役に立ちたいという人が多いのです。

福祉を勉強したい人も、高校で老人ホームを訪れたりテレビでNGOの活躍を見たりして関心を持つのです。スポーツトレーナーになりたい人はスポーツが大好きで、場合によってはプロになりたいけれど、そこまでいけなくてプロ選手のお手伝いをする仕事をしてスポーツにかかわっていたいということが理由です。

フィジカルセラピーやカイロプラクティックも、スポーツを通して事故や体の故障に遭い、人を助ける仕事をしたいと考えるのです。また、何か技術を身につけていると仕事に困らないのではないかという気持ちもあるようです。

また、アメリカではこういった分野が日本以上に進んでいて、各々の仕事の地位もかなり高いと考えているようです。アメリカはたしかに日本のように、すべて医者が一番えらいわけではありません。医者やフィジカルセラピストやトレーナーがチームで治療にあたったりすることはごく普通で、医者がすべての命令を下すわけではなく、各々の分野を生かして仕事をします。つまり医者の下手間にはなりません。

また、カウンセラーも、学校で問題を抱えている子どものカウンセリングをして、問題がお母さんの仕事で夜帰りが遅いということにあるようだと思うと、その地区のソーシャルワーカーに連絡し、ソーシャルワーカーがお母さんと面接して具体的に仕事をかわる方法がないか相談したりします。新しい仕事によって収入が減るなら、何か補助できる福祉基金がないか探してくれたりもします。みんな横のつながりとネットワークがとてもよくできていて、こういう仕事が生きてくるのです。

ちなみに、日本では各学校にスクールカウンセラーが週に一度くらい派遣されるようになったばかりで、しかもすべてがうまくいっているとは限りません。「荒れている学校にカウンセラーがのこのこやって来てわかるわけがない」というのが学校側の本音で、カウンセラーは立ち往生してしまいます。しかし本当にしっかりしたカウンセラーなら、それこそ先生方や学校の情況を考え、いくつもの提案をしていけばよいのですが、なすすべもなく最後にはカウンセラーにカウンセリングが必要になったりします。病院などのソーシャルワーカーも、いざ仕事をしてみると患者の悲惨な話が多く、かといって横のつながりが少なく、患者を金銭的に具体的に助けるさまざまな方法もアメリカのようにはなく、話を聞くばかりで、それだけで頭がいっぱいになって、精神科医に注射を打ってもらわなければならなくなったりするのです。

いずれにしても医療系や癒し系はとても心身共にタフでなければなりません。不幸なイヤな話を聞いても、自分はさっさと帰りにワインを飲んでおいしいものを食べて気分でも切り換えないと、「自分は幸福で相手は不幸だ、一体何なんだろう」というような思いにとらわれていては、一見やさしそうでも、要は、ちゃんとした仕事ができないのです。

ところでアメリカではこのような分野は、なかなかむずかしくレベルも高く教育期間も長いものです。

カウンセリング関係はすべて大学院レベルからしかありませんので、大学で心理学の初歩をやっておいて、大学院から本格的に勉強します。

スクールカウンセラーになるのは修士課程でかまいませんが、臨床心理士になるのなら博士課程を終えなければならず、また、入学もとてもむずかしいのです。ソーシャルワーカーは大学レベルからありますが、ちょっとレベルの高い仕事をしようと思ったら、まず修士号が必要です。

カイロプラクティックもフィジカルセラピーも大学院レベルからしかありません。大学は何の専攻で卒業してもかまいません(解剖学や生物学などいくつか取っておくものがあります)が、いずれにせよまず大学を卒業して、それからになります。トレーナーは大学レベルにあるのですが、これもまたむずかしく、まず大学の体育学部に入学させてはくれるのですが一年くらい後に本人の成績やさまざまな才能を大学のトレーナーが見て、自分のもとで訓練する学生を選びます。希望者の三分の一くらいしか選ばれず、選ばれなかった人はもうトレーナーになることができず、体育学部を卒業するか、また別の専攻を考えるかということになって、なかなかむずかしいのです。

こういう話をしますと留学を希望する人はみんな考えてしまいます。時間もお金もとてもかかるし本当に自分にとっていい仕事かどうかわからなくなってくるのです。

みんな、自分が何をして生きていっていいのか悩んでいます。

ときどき大人がえらそうに、「高校や大学を卒業するころになってもまだ自分が何をしていいのかわからないなんて、今の若者はどうなっているんだ」なんて言いますが、冗談じゃない。自分が何に向いているかなんて永遠のテーマですよ。

では、癒し系の専攻分野にどんなものがあるか紹介しておきましょう。

  • Acupuncture/Oriental Medicine 鍼治療/東洋医学:大学院レベル
  • Art Therapy, Music Therapy, Dance Therapy 芸術療法、音楽療法、ダンス療法:大学レベル
  • Nursing 看護学:大学・大学院レベル
  • Occupational Therapy 作業療法:大学・大学院レベル
  • Physical Therapy 理学療法:大学院レベル
  • Public Health 公衆衛生:大学院レベル
  • Clinical Psychology 臨床心理学:大学院レベル
  • School Psychology 学校心理学:大学院レベル
  • Counselor Education カウンセラー教育学:大学院レベル
  • Counseling Psychology カウンセリング心理学:大学院レベル
  • Social Work ソーシャルワーク:大学・大学院レベル
  • Sports Medicine/Athletic Training スポーツ医学/アスレチックトレーニング:大学レベル
  • Chiropractic カイロプラクティック:大学院レベル
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