留学事情:栄陽子留学研究所
■ 当世留学事情

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第77回 お金と時間のムダ遣いコース 『教材新聞』平成13年8月27日号掲載 

あるお母さんがやってきて、今娘は、アメリカのコミュニティ・カレッジに在籍していて、ホームステイをしながら大学に通っているが、何となく、大学がしっくりこないし、ホームステイ先ともうまくいかない、また、自動車がないと通学できないということで車を買ったが、車通学のこともとても心配しているというお話なのです。

もっとよく聞いてみると、高校3年生のときに娘がどうしても留学したいと言い出したので、あるエージェントを訪ねて、スイスの学校に、2年間ということで留学させたそうです。何で高校3年生というややこしいときに留学なんかするんだい、と叫びたいところですが、まあ、娘の感情のままエージェントのすすめるままにということだと思います。

留学したところが小さな寮に日本人が固まっていて、ちっとも語学の勉強にならないので、いろいろ迷っているうちに、エージェントに、また紹介されて、次の夏に、ボストンの語学学校で英語の勉強をしたそうです。すでにスイスの高校で1年間を終わったんだから、さっさと、普通のアメリカの高校のサマースクールに行けよ、何でわざわざ英語学校なんだよ、と思いますが、これもまた、英語力不足という不安とエージェントのすすめるままであったそうです。

ボストンに滞在中に、やっぱり英語は本場アメリカがいいということになって、彼女は、ボストンからちょっと離れた所にある町の小さな宗教色の濃い私立学校に入学したそうです。

スイスの学校の単位を日本の高校に提出したら認めてくれて、日本の高校を同級生に遅れて、夏に卒業証書をもらったということで(これも、また、よくわからない話なんですが)、一応、高校の卒業証書はあったのに、また、アメリカの小さな高校に入学したわけです。そこで1年を終えて今年の六月に卒業したのですが、大学への進学について何の用意もしていなかったためと、まだあまり英語力がないため、とりあえず、コミュニティ・カレッジに入学したとのことで、娘さんは20歳になっていました。

こみ上げてくる怒りを抑えながら、まず、スイスには大学が国公立の10校(私立は大学院のみ)しかないこと、それに比べてアメリカは4000校もあること、したがってヨーロッパでは、みんなが大学に行くわけではないため、高校を終えても大学受験に必要な資格試験を別に受けなくてはならないこと(スイスではインターナショナルバカロレア)、なぜ、みんな大学に行かないかというと、職人さんの地位が高く仕事もたくさんあり、そんなに大学に行く必要もないこと、また、それゆえに世界のブランドはみんなヨーロッパが牛耳っていること、などなど。

そして、何でもかんでも大学に行くのは日本とアメリカで、とくにアメリカは極端に言うと、ついこの前刑務所から出てきた者でも、他国で戦争に追われて難民として移民してきたばかりの人でも、手を挙げればみんな大学に入れるというお国柄ゆえ、名前はCollege、Universityと付いていても、その内容は日本の商業高校や工業高校、専門学校から職業訓練所レベルに至るものまで含まれており、また、貧富にかかわりなく大学に行けるがゆえに、中産階級以上の人と以下の人が行く大学も何となくそれぞれに分かれており、昔から、カンボジアやベトナムから流れてきても、十年後には大統領の補佐官になれるという諺がある1方、安全と教育はカネで買え、というお国柄ゆえ、ハーバードの学生とコミュニティ・カレッジでは、頭の中身のみならず、育ちもあまりに違うという話をいたしました。

「エージェントはあまりにもヒドイ、何となく、たいへんなお金と時間をムダにしたのではないかと考えていたのですが……」というお母さんの推測どおりで(だから、当方に思い切って相談に来られたのでしょうが)、留学エージェントももう少し、まともなアドバイスができないものかと思いますが、まあ、こんな話は後を絶ちません。

全世界の人口に比べて、世界で大学に行っている人はたった1%と言われていますが、日本の人々は、世界の多くの人も、みんな大学を目指してしのぎを削っているように考えています。また、大学に行っていない熟練の職人さんの作ったヨーロッパのブランド品を、ちょっと考えられないくらいの高値で買い漁っています。ブランド品に十分太刀打ちできるものくらい作れる日本人はいっぱいいると思いますがね。どうして世界に売れるブランドを構築できなかったのでしょうかね。

深く考えずに大学に行くし、留学といえば要は英語がペラペラになりたいからだというのは、いくら情報が発達しても何も変わりません。

また、外国で勉強するのにその国の教育システムや、人々が何を目指して高等教育を受けるのか、ということを知ろうとすることはありません。

みんな、そんなことより、どうしたら留学できるのか、どうしたら早く英語がペラペラになれるのか、そのノウハウだけ知りたがるのです。

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